はじめに
本資料の目的
この資料は、Webサーバー移行を計画している方に向けて、手順と注意点を分かりやすく伝えることを目的とします。専門的な用語は最小限にし、具体例を交えて解説します。
対象読者
中小規模のWebサイト運用者、社内システム担当者、これから移行を担当するエンジニアや担当者向けです。技術に詳しくない方でも理解できるよう配慮しています。
本資料で学べること
・移行の全体像と主要なステップ
・ステップごとの具体的作業の流れ
・移行時に起こりやすいリスクとその回避方法
・代表的なスケジュール例と実務でのコツ
進め方の大まかな流れ
一般的には、事前準備→バックアップ→新サーバー構築→データ移行→動作確認→DNS切替→最終確認→旧サーバー解約の順で進めます。各工程で確認項目を設け、段階的に進めるとトラブルを減らせます。
Webサーバー移行の全体像とステップ概要
全体の流れ
Webサイトのサーバー移行は、次の5段階で進みます。
- 事前準備
- データバックアップ
- 新サーバーへの移行
- 動作確認とDNS切り替え
- 最終確認と旧サーバーの解約
各段階は目的がはっきりしており、順を追って進めることでトラブルを減らせます。
各ステップの目的と主な作業
- 事前準備
- 目的: 現状把握と移行計画の作成
-
作業例: 使用中のソフト(CMSやメール)の確認、必要スペックの決定、移行日時の調整
-
データバックアップ
- 目的: データ保全
-
作業例: ファイルのコピー、データベースのエクスポート、設定ファイルの保存(例: wp-configや.htaccess)
-
新サーバーへの移行
- 目的: 実際のデータ移送と環境構築
-
作業例: ファイル転送(FTP/SFTP)、データベースインポート、PHPやモジュールの設定、SSL証明書の設定
-
動作確認とDNS切り替え
- 目的: 正しく動作することを確認して公開先を切り替える
-
作業例: テスト用ドメインやhostsで確認、問題なければDNSのTTLを考慮して切替え
-
最終確認と旧サーバーの解約
- 目的: 移行の完了と不要資源の整理
- 作業例: ログ確認、メールの送受信確認、旧サーバーのデータ削除と解約手続き
スムーズに進めるためのポイント
- 移行前に必須タスクのチェックリストを作る
- 夜間やアクセスが少ない時間帯を選ぶ
- バックアップは複数形式で残す(例: ファイル+DB)
- テスト環境で事前に動作確認を行う
以上を押さえておくと、移行作業を落ち着いて進められます。
ステップごとの具体的な作業内容
以下は移行作業を順に行うための具体手順です。各項目でチェックリストを作り、作業担当者と時間を明確にしてください。
1. 事前準備
- 新サーバーの選定:サイトの必要なPHP・DBバージョン、ディスク容量、転送量を確認します。例:WordPressならPHPの対応バージョンを確認。
- 情報の控え:旧・新サーバー両方のFTP/SFTP、データベース接続情報、管理画面URLをメモします。
- ドメイン情報:ドメイン管理会社のログイン情報とネームサーバー変更画面を確認。
- スケジュール設定:アクセスが少ない時間帯に作業を予定します。事前にTTLを短くしておくと切り替えが早くなります。
- ツール準備:FTPクライアント(例:FileZilla)、DBツール(例:phpMyAdmin)をインストールして動作確認します。
2. データのバックアップ
- ファイル全体:HTML/CSS/画像/プログラムなどを丸ごとバックアップします。
- データベース:SQLダンプを取得します。複数世代で保存し、クラウドにも置くと安心です。
3. 新サーバーへのデータ移行
- ファイル転送:FTP/SFTPや管理画面でバックアップをアップロードします。
- 設定調整:パーミッション、パス、DB接続情報を新サーバーに合わせて修正します。
- SSL・メール:必要なら証明書を再発行・インストールし、メール設定も確認します。
4. 動作確認とDNS切り替え
- 事前確認:hostsファイルを使って、DNS切り替え前に新サーバーで正しく表示されるか確認します。
- 実動作確認:リンク、フォーム、ログインなど主要機能をチェックします。
- DNS切替え:問題なければドメイン管理画面でネームサーバーを変更します。DNS浸透に数時間〜72時間かかる点に注意してください。
5. 最終確認と旧サーバーの解約
- 切替え後再チェック:新サーバーでしばらく安定しているか確認します。メールやSSLも再確認します。
- 解約手続き:問題がなければ旧サーバーを解約します。念のため一定期間はバックアップを保管してください。
サーバー移行時の注意点・リスク
概要
サーバー移行は準備不足だとサービス停止やデータ欠損、検索順位低下につながります。ここでは典型的な注意点と回避方法をやさしく説明します。
並行運用のすすめ
新旧サーバーを1か月程度並行契約すると安心です。万が一トラブルが出ても旧サーバーに切り戻せます。例:メール送受信や注文データは並行期間中に定期的に同期してください。
DNS切り替え後のアクセス混在
DNSの浸透中は訪問者が新旧どちらかに当たります。移行直後の更新作業は避け、データの二重書き込みを防ぐ仕組み(メンテナンスモードや書き込み停止)を用意してください。
SSL証明書の再設定
SSLを使う場合は新サーバーで証明書を再発行・インストールします。Let’s Encryptの自動更新設定や、商用証明書の秘密鍵移行を忘れないでください。
WordPressサイト固有の注意点
テーマやプラグインのバージョン差、パス変更、wp-config.phpのDB接続情報、シリアライズされたURLの置換に注意します。.htaccessやパーミッションも確認してください。
SEOと検索順位への影響
URL構造やmeta情報は可能な限り維持します。URLを変える場合は301リダイレクトを正しく設定し、robots.txtやサイトマップの更新も忘れないでください。
テストと監視
移行前後で機能テスト、負荷テスト、ログ確認を行います。監視ツールでレスポンスやエラーを早期検出しましょう。
トラブル時の切り戻し手順
事前にバックアップを取り、切り戻し手順を文書化します。DNSのTTLを短くしておくと切り戻しが速くなります。
代表的なサーバー移行スケジュール例
概要
0日目から8日目以降までの、典型的な移行手順と日ごとの注意点を示します。担当者・時間帯・確認項目を明記し、万一のロールバックも想定します。
日別スケジュール
- 0日目(準備): 新サーバー選定・契約、移行計画の最終確定、DNS TTLの短縮(例:86400→300)
- 1日目(バックアップ): 旧サーバーの全ファイルとDBを取得、検証コピーを別環境で復元して整合性確認
- 2日目(デプロイ): 新サーバーへデータアップロード、設定(PHP/ミドルウェア、SSL)を適用、権限調整
- 3日目(テスト): 新環境で機能・表示・パフォーマンステスト、ステージングと同等のチェックを実施
- 4日目(切替): 夜間の閑散時間にDNS切り替え、必要ならメンテナンスページを表示
- 5〜7日目(確認): DNS浸透とログ監視、ユーザーからの報告対応、データ差分確認
- 8日目以降(整理): 問題なければ旧サーバー解約。保持期間を定めバックアップを保管
各日共通の注意点
- 役割分担を明確にする(担当者/連絡手段)
- ロールバック手順を事前に書面化
- データ更新は停止ウィンドウを設定(例:切替の前後30分)
ロールバック時の簡易手順
- DNSを旧サーバーに戻す(TTL短縮が効く)
- 新サーバーの接続を遮断
- 旧サーバーで差分を適用し動作確認
DNSのポイント
- 事前にTTLを短くすることで切替の影響を小さくできます
- 切替後はキャッシュによる表示差を想定して監視する
上記例を基に、サイト規模や業務時間に合わせて調整してください。
サーバー移行を成功させるためのコツ
準備は詳細に、担当と期限を明確に
移行前に手順書と移行計画書を作成し、担当者・作業時間・完了予定日を明記します。たとえば「DNS設定:Aさん(翌日12:00まで)」のように役割を分けると混乱が減ります。チェックリストを用意して進捗を可視化します。
バックアップとすぐ復元できる体制を整える
移行前にフルバックアップを取得し、テスト復元を行います。スナップショットや別ストレージへの保管も有効です。復元手順も手順書に含め、誰でも実行できるようにします。
テスト環境で繰り返し検証する
新旧両方でテスト環境を用意し、ログイン・フォーム・メール送受信・SSLや外部連携などの主要機能を実際に確認します。テスト項目をリスト化し、合格基準を決めます。
実行時は段階的に、影響を最小化する
アクセスの少ない時間帯に作業し、作業中は編集停止を周知します。DNSのTTLを事前に短く設定して切替を速やかに行えるようにします。作業中はログと監視を注視します。
トラブル時の備えとサポート活用
ロールバック手順と時間制限を決めておきます。技術的に不安があればホスティング会社や専門業者に早めに連絡します。問題は早めに相談するほど解決が早くなります。
移行後のチェック項目を忘れない
移行後はGoogle Search Consoleや解析ツールの再認証、SSL・メール・外部サービスの再設定を確認します。移行後72時間はアクセス・エラーログを重点的に監視して問題を速やかに修正します。












