はじめに
バックアップがなぜ必要か
ホームページのバックアップは、データ消失や不具合など予期せぬトラブルから大事なWebサイトを守るために必須の作業です。サーバー障害、ウイルス感染、誤操作、ハッキングなどでデータが消失・破損した場合、バックアップがあれば迅速に復旧できます。特にビジネスサイトやECサイトでは、数時間のダウンが大きな損失につながるため、定期的なバックアップが不可欠です。
起こり得る具体的なトラブル例
- サーバーのハード故障でファイルが読み込めなくなる
- 更新作業中のミスでページや画像を上書きしてしまう
- プラグインやテーマの不具合で表示がおかしくなる
- 不正アクセスによりデータが改ざんされる
これらはバックアップがあれば元の状態に戻せるケースが多いです。
本連載の目的と読み方
この連載では、初心者にも分かりやすくホームページのバックアップ方法を段階的に解説します。第2章で方法の種類を説明し、第3章でサイトの種類別の実践方法を紹介します。第5章では実際の手順を図解で示しますので、初めての方でも順を追って作業できます。まずは「なぜバックアップが必要か」を理解して、定期的に備える習慣をつけましょう。
ホームページのバックアップ方法の種類
概要
ホームページのバックアップは大きく分けて「手動」「自動(定期)」「バックアップの種類」に分類できます。以下でそれぞれをやさしく説明します。
1. 手動バックアップ
- 内容:自分でサーバー上のファイルをFTPやファイルマネージャーでダウンロードし、データベースはphpMyAdminなどでエクスポートします。
- 例:FTPで/wp-contentをダウンロード、phpMyAdminでデータベースをSQL形式で保存。
- 長所:操作が分かれば細かく管理できます。不要なデータを省けます。
- 短所:手間がかかり、定期的に忘れやすい。初心者には操作が難しい場合があります。
2. 自動(定期)バックアップ
- 内容:プラグインやホスティングの機能、外部サービスを使って決まった時間に自動で保存します。
- 例:WordPressプラグイン、レンタルサーバーの自動バックアップ、クラウド連携(DropboxやS3)
- 長所:人手をかけずに定期取得でき、頻度を高められます。
- 短所:設定ミスや保存先がサーバー内のみだとリスクが残ります。設定は定期確認が必要です。
3. バックアップの種類(保存方式)
- フルバックアップ:サイト全体を丸ごと保存します。復元が簡単ですが容量が大きくなります。
- 増分バックアップ:最後のバックアップ以降に変わった部分だけを保存します。容量効率が良く、頻繁な取得に向きます。
- 差分バックアップ:最後のフルバックアップとの差分だけを保存します。フル+差分で復元できますが、差分が大きくなると容量が増えます。
4. 保存先と基本の注意点
- 保存先:ローカル(手元のPC)、外部クラウド、別サーバーの3つを併用すると安全です。
- 注意点:バックアップの世代管理(直近と過去数回を残す)、暗号化やアクセス制限、定期的な復元テストを行ってください。
サイトの種類別バックアップ方法
1. HTMLサイト(静的サイト)の場合
- 手順
- FTPソフト(例:FileZilla、Cyberduck)でサーバーに接続します。FTP情報はレンタルサーバーの管理画面で確認してください。
- サイト全体のファイル(HTML、CSS、画像、JavaScriptなど)をローカルにダウンロードします。
- ダウンロード時はフォルダ構造を壊さないようにそのまま保存してください。ディレクトリ構成が変わると復元時にリンク切れが起きます。
-
圧縮(ZIPなど)して外付けHDDやクラウド(例:Googleドライブ、Dropbox)へコピーすると安全です。
-
ポイント
- データベースを使っていない場合、ファイルだけでバックアップは完了します。
- 定期的にダウンロードしてバージョン管理(日付付きファイル名)を行ってください。
- 復元テストを1回は行い、表示やリンクに問題がないか確認します。
2. WordPressサイトの場合
- 手動バックアップ
- FTPでサイト全体をダウンロード(特に/wp-content/フォルダ)します。
- phpMyAdminなどでデータベースをエクスポートします。管理画面の「エクスポート」からSQLファイルを保存できます。
-
wp-config.phpや.htaccessなどの設定ファイルも忘れずに保存してください。
-
プラグインを使った自動バックアップ
- おすすめ例:UpdraftPlus、Jetpack Backups、All-in-One WP Migration、BlogVault、BackWPup。
-
これらはスケジュール保存やクラウド連携(Google Drive、Dropbox、S3など)をサポートします。設定で自動保存と自動復元用のファイルを用意できます。
-
ホスティングの自動バックアップ
- 使える場合はホスティング側のバックアップ機能も有効にしておくと安心です。手動やプラグイン保存と併用して多重化すると安全性が高まります。
バックアップの頻度と注意点
更新頻度に応じたバックアップ間隔
- サイトの更新頻度に合わせて間隔を決めます。例:
- 毎日更新(ブログ、ニュース)なら毎日または毎晩一回
- 週1回程度の更新(個人サイト)なら週に1回
- ほとんど更新しない静的サイトは月1回でも可能
- トランザクションが多いECサイトや会員情報を扱う場合は、日に数回またはリアルタイム同期を検討してください。
保存先と冗長性
- バックアップは必ず元のサーバーとは別の場所に保存します。例:外付けHDD、別サーバー、クラウドストレージ。
- 可能なら複数箇所に保存し、コピーを分散させておくと安全です。
- 保存時はファイル名に日付やバージョンを付けて管理すると探しやすくなります。
復元手順の確認
- バックアップを取るだけでなく、実際に復元できるか定期的にテストしてください。手順をドキュメント化しておくと迅速に対応できます。
- 復元テストは本番に影響しない環境で行い、問題があれば手順を修正します。
バックアップの管理・整理
- 古いバックアップは無制限に残さず、保存期間や件数のルールを決めて削除します(例:直近30日分、最後の12回分など)。
- 自動化ツールを使うと定期削除や世代管理が簡単になります。
- セキュリティも忘れずに。特に個人情報を含む場合は保存先で暗号化やアクセス制御を設定してください。
初心者でも簡単にできるバックアップ手順
準備
はじめにログイン情報(サーバー、FTP、WordPress管理画面)を手元に用意します。FTPソフトはFileZillaなど無料のものが使いやすいです。バックアップ先として、パソコン・外付けHDD・クラウド(Google Drive、Dropboxなど)を決めます。
手順1:サイトデータをダウンロード(FTP/サーバー管理画面)
- FTPソフトでサーバーへ接続し、public_htmlやwwwなどサイトのフォルダを丸ごとダウンロードします。
- サーバー管理画面(cPanel等)では「ファイルマネージャー」や「バックアップ」機能から圧縮してダウンロードできます。
手順2:WordPressはプラグインで自動化
UpdraftPlusやAll-in-One WP Migrationをインストールし、スケジュールを設定します。保存先にクラウドを指定すれば自動で送信されます。初回は手動で完全バックアップを取り、動作を確認してください。
手順3:複数箇所に保存
必ずローカル(PC)・外部(クラウドや外付け)と2〜3箇所に保存します。ファイル名に日付を入れると管理しやすいです。
手順4:定期的な復元テスト
実際に復元してみてファイルやデータベースが正しく戻るか確認します。問題があれば設定を見直し、頻度や保存先を更新してください。
ちょっとした注意点
・データベースは別途ダンプ(.sql)を取ること。プラグインは最新版に保ち、バックアップは暗号化やパスワード保護を検討します。
まとめ:おすすめのバックアップツール・サービス
以下では、サイト種別ごとにおすすめのツールと使い方のポイントをやさしく説明します。
HTMLサイト(静的サイト)
- 推奨ツール:FileZilla、Cyberduck(FTPソフト)
- 特徴:無料で全ファイルを取得できます。サーバー上のフォルダを丸ごとローカルへダウンロードするだけで完了します。
- ポイント:定期的に手動でダウンロードし、ローカルや外付けHDD、クラウドに保存してください。ファイル名や日付でフォルダを分けると管理しやすいです。
WordPressサイト
- 推奨ツール:UpdraftPlus、Jetpack Backups、All-in-One WP Migration
- 特徴:自動で定期保存でき、クラウド(Google Drive、Dropbox等)へ送る設定が可能です。
- ポイント:プラグインで自動化し、データベースとアップロードファイルの両方をバックアップする設定にしてください。復元テストを一度行うと安心です。
すべてのサイト(初心者向け)
- 推奨:レンタルサーバーのバックアップ機能
- 特徴:ワンクリックで簡単にバックアップと復元ができます。設定不要で安心です。
- ポイント:提供容量や保管期間を確認し、必要なら別途クラウドへも二重保存しましょう。
選び方の目安:手間を減らしたければサーバー機能や自動プラグイン、細かく管理したければFTPでの手動保存を選んでください。予算が限られる場合は無料ソフト+自身のクラウドで始めると良いです。
バックアップを実践する際のQ&A
Q1: バックアップはどこに保存するのが安全ですか?
サーバー以外の外部媒体やクラウドストレージに保存するのが安全です。例えば外付けHDDやNAS、Google Drive/Dropbox、Amazon S3などを併用すると安心です。重要なポイントは「オフサイト保管」と「暗号化」。サーバー障害や不正アクセスに備え、バックアップは別の場所に置き、必要ならパスワードや暗号で保護してください。
Q2: プラグインと手動、どちらがおすすめですか?
定期的な自動バックアップにはプラグインが便利です(例:UpdraftPlus)。一方で大きな更新や移転前は手動でバックアップを取り、別媒体に保存する「ダブルバックアップ」をおすすめします。自動と手動を組み合わせると安全性が高まります。
Q3: バックアップの頻度はどれくらいにすればよいですか?
更新が多いサイトは毎日、更新が少ないサイトは週1回程度が目安です。重要な変更前後やテーマ・プラグイン更新時は必ず直前にバックアップを取ってください。
Q4: 復元時の注意点は?
復元手順を事前に確認し、テスト復元を行う習慣をつけましょう。データベースとファイルは別々に保管すると復元が楽になります。
Q5: 容量やコストを抑えるコツは?
差分(増分)バックアップを使う、キャッシュやログを除外する、古い世代を短期間で削除することで容量と費用を抑えられます。
Q6: セキュリティ面で気をつけることは?
バックアップファイル自体を暗号化し、保存先のアクセス権を最小限にしてください。定期的にパスワードや鍵の管理状況を見直すことも大切です。
ご不明点があれば、使っているCMSや環境(レンタルサーバー名など)を教えてください。より具体的な回答を差し上げます。












