はじめに
この記事の目的
本記事は、AWSのEBSスナップショットの料金体系とコスト最適化について、分かりやすく解説することを目的としています。料金の仕組みや確認方法、実際の請求に影響するポイントを丁寧に説明します。
想定する読者
・クラウドのコストを管理する方
・EBSを使用している開発者や運用担当者
・これからスナップショット運用を始める方
専門用語は最小限にし、具体例を交えて説明しますので、初心者の方でも読み進めやすい内容にしています。
本記事の構成と読み方
全8章で構成します。第2章でスナップショットの基本、第3章以降で料金や転送、確認方法、最適化のコツ、注意点を順に扱います。まずは第2章以降を順に読むことをおすすめしますが、知りたい項目だけを参照しても問題ありません。
期待できる効果
料金の仕組みを理解することで無駄な支出を減らせます。実務にすぐ活かせる具体的な見直しポイントも紹介します。
AWS EBSスナップショットとは何か
概要
EBSスナップショットは、EC2のブロックストレージであるEBSボリュームの内容をバックアップする仕組みです。AWSの内部でS3互換のストレージに差分として保存され、運用中のディスクデータを手軽に保護できます。\
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仕組み(要点)
- ブロック単位での保存: ボリューム全体ではなく、変更があったブロックだけを保存する増分方式です。初回はフル、以降は差分のみなので効率的です。\
- スナップショットはEBSボリュームから独立したオブジェクトになります。復元時はそのスナップショットから新しいボリュームを作成します。\
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主な利用用途(具体例付き)
- 日次バックアップ: 毎晩スナップショットを取り、障害時に復元します。\
- テスト環境の作成: 本番ボリュームのスナップショットからクローンを作り、検証に使えます。\
- リージョン間コピーやイメージ作成: スナップショットをコピーして別リージョンへ移動したり、AMI作成の基にしたりします。\
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作成と復元の流れ(短く)
- スナップショット作成を実行(コンソールやAPI)
- 保存(初回は全ブロック、以降は差分)
- 必要時にスナップショットから新しいボリュームを作成してアタッチ
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注意点
- 一般的にスナップショットはポイントインタイムでのコピーですが、アプリケーション整合性を確保するには事前にI/Oを止めるか、ファイルシステムのフリーズが望ましいです。\
- スナップショット自体はS3を意識する必要はありません。管理はEBSの機能として行います。
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この章では、まずスナップショットの基本と使い方のイメージを掴むことを目的としています。詳しい料金や転送の話は次章で扱います。
スナップショットの料金体系
基本的な考え方
EBSスナップショットは「保存しているデータ量(GB)」と「保存期間(月単位)」で課金されます。一般的な目安は1GBあたり月額0.05USDです。請求は保存した合計GBに対して行われます。
初回と増分の扱い
初回スナップショットはフルバックアップ分として課金されます。2回目以降は、前回のスナップショットから変わったブロック(増分)だけが新たに課金対象になります。これにより、毎回全容量を払う必要はありません。
具体例(わかりやすい計算)
・ボリューム容量:100GB
・実データ量:20GB
・スナップショット頻度:1日1回(31日保存)
・仮定:初回は20GB、以後は1日あたり0.5GBだけデータが変わる
合計保存GB = 初回20GB + (30日×0.5GB) = 35GB
月額料金 = 35GB × 0.05USD/GB = 約1.75USD
補足のポイント
・リージョンやストレージタイプで単価は異なる場合があります。
・スナップショットを削除すれば保存GBが減り、料金も下がります。
・細かい変化が多いと増分が大きくなり、費用が増えます。
スナップショットのデータ転送とリストアの料金
概要
スナップショットの作成やスナップショットからのリストア(EBSボリュームの復元)自体に、追加の「作業料金」は原則発生しません。ただし、データをリージョン間で移す場合や、復元後に作成されたボリュームに対しては料金が発生します。
データ転送(リージョン間コピーなど)
スナップショットを別リージョンへコピーすると、データ転送の対象になります。AWSはリージョン間のデータ移動に対してGB単位で課金します。ポイントは、スナップショットが増分で管理されるため、コピー時に転送されるデータ量は実際の変更量に応じて変わる点です。
例:東京リージョンのスナップショットを別リージョンへコピーする場合、ソースから送られるデータ分に転送料金がかかります。
スナップショットからボリュームを作ったときの料金
スナップショットから新しいEBSボリュームを作成すると、そのボリューム分のストレージ料金が発生します。ボリュームが存在する限り、GB単位で課金されます。スナップショット自体の保存料金は別にかかります。
追加のオプションと注意点
・Fast Snapshot Restore(迅速復元)などの機能は別途料金が発生します。
・同一リージョン内でのリストアは通常、データ転送料金は発生しません。
・リージョン間コピーや頻繁な復元を行う場合は、転送量と復元後のストレージ双方のコストを見積もってください。
料金の確認方法
概要
AWSマネジメントコンソールの「請求およびコスト管理」からスナップショットの利用料金を確認できます。ここでは、コンソール画面の使い方と注意点を分かりやすく説明します。
請求画面での基本手順
- AWSコンソールにサインインし、[請求およびコスト管理(Billing)]を開きます。
- 左メニューの[請求書(Bills)]を選択します。月ごとの請求明細が表示されます。
- サービス別の一覧から「Amazon Elastic Block Store」や「EBS snapshots」に該当する項目を探します。ここでスナップショットに関するストレージ使用量と料金を確認できます。
Cost Explorerで詳細分析
- [Cost Explorer]を使うと、期間やサービス、リージョンで絞り込めます。グラフや期間比較で増減を見やすくできます。
- 「サービスでグループ化」し、EBS関連の使用タイプ(Snapshot Storage など)で絞ると詳細が分かります。
レポートとCSV出力
- 請求画面やCost ExplorerからCSVでダウンロードできます。社内で加工して傾向分析や分配計算に使えます。
請求アラートの設定
- [Budgets]で予算とアラートを設定すると、利用額が閾値に近づいたときに通知を受け取れます。突発的な増加を早期に発見できます。
確認時のチェックポイント
- スナップショットは増分保存でも合算課金されることがあるため、月別の合計を確認してください。
- クロスリージョンや共有による追加料金が発生していないかも確認します。
以上の手順で、スナップショットに関する料金を正確に把握できます。
コスト削減・最適化のポイント
不要なスナップショットは早めに削除
不要なスナップショットは保管料金が発生し続けます。利用しない古い世代やテスト用のスナップショットは定期的に見直して削除してください。タグで用途や作成日を付けると探しやすくなります。
世代管理(リテンションポリシー)の例
自動化でコストを抑えます。例:
– 日次スナップショット:直近7世代を保持
– 週次スナップショット:直近4世代を保持
– 月次スナップショット:直近12世代を保持
このように重要度に応じて世代数を減らすと無駄な蓄積を防げます。
ボリューム自体を削除して必要時に復元
常時稼働が不要なボリュームは一度削除して、必要になったらスナップショットから復元するとコストを抑えられます。復元には時間と復元処理の手間がかかる点は考慮してください。
長期保存はアーカイブを検討
長期間保管するデータはアーカイブ機能(料金が安い代わりに復元に時間や追加料金が発生)を使うと費用を削減できます。
自動化と監視
ライフサイクル管理ルールやスクリプトで削除・移動を自動化しましょう。定期的に請求レポートやタグ別コストを確認すると無駄を早く見つけられます。
小さな工夫で差が出ます
スナップショットの頻度を見直す、テスト環境はまとめて削除する、復元頻度の低い世代だけを残すなど具体的な運用ルールを決めるとコストを大きく下げられます。
課金にまつわる注意点・補足
AMIとスナップショットの関係
AMI自体にストレージ料金は発生しません。ですが、AMIが利用するEBSスナップショット分のストレージは請求されます。たとえば、インスタンスからAMIを作成すると自動でスナップショットが作られ、その分は保存している限り課金されます。
スナップショットの公開・共有
スナップショットを「パブリック」にすると誰でも参照できますが、元の所有者のストレージ料金は残ります。他人がコピーするとその人にコピー分の料金が発生します。公開は便利ですが、不要な公開は避け、共有は最小限にしてください。
暗号化とKMS(鍵管理)費用
スナップショットを暗号化すると安全性が上がります。暗号鍵にAWS KMSを使うと、KMSのAPI利用やキー管理に別途料金がかかる場合があります。特に大量に復元やコピーを行う運用ではKMS費用を確認してください。
リージョン間コピーとデータ転送料金
スナップショットを別のリージョンへコピーすると、コピー先のストレージ代金が発生します。リージョン間の転送で別途転送料がかかる場合もあるため、コピー頻度は必要最小限にすると良いです。
削除と請求のタイミング
スナップショットを削除すると以降のストレージ課金は止まります。初回スナップショットはフルコピーになるため容量が大きくなりがちです。定期的に不要なスナップショットを整理し、ライフサイクルポリシーを設定してください。
運用上のおすすめ
- タグ付けで誰のデータか分かるようにする
- ライフサイクルルールで自動削除する
- 公開設定は慎重に行う
- KMS使用時の追加費用を見積もる
これらを踏まえ、請求を定期的に確認し無駄な保存を減らすことでコスト管理がしやすくなります。
まとめ:AWSスナップショット料金の把握と管理
要点のまとめ
- EBSスナップショットの料金は保存データ量と保存期間で決まります。目安は1GBあたり月額約0.05USDです。
- スナップショットは増分保存ですが、長期間残すと総容量が増えコストが上がります。
コスト管理の基本対策
- 世代管理を行い、古いスナップショットを定期的に削除します。例:直近7日を日次、過去3か月を週次、半年を月次など。
- 自動化を活用します(AWS Data Lifecycle Managerなど)。手作業を減らせばミスを防げます。
- 不要なボリュームやスナップショットは早めに削除します。試験環境で放置すると無駄になります。
クロスリージョンコピーと転送料金
- 他リージョンへのコピーは追加の転送コストが発生します。DRやバックアップ設計時に費用を明確にしておきます。
運用チェックリスト(短縮版)
- 定期的に請求を確認する(Billing/Cost Explorer)。
- ライフサイクルポリシーを設定する。
- コピー先や保持期間を見直す。
日々の運用で小さな改善を積み重ねると、スナップショット費用は大きく節約できます。












