cdnとddos対策の基礎知識と最新応用策を詳しく解説

目次

はじめに

本稿の狙い

本稿は、CDN(コンテンツデリバリネットワーク)を使ったDDoS(分散型サービス拒否)攻撃対策について、やさしく丁寧に解説します。専門的な説明は最小限にし、具体例を交えて分かりやすく伝えます。ウェブサイト運営者やシステム管理者が実務で役立てられる情報を目指します。

なぜ重要か

例えばネットショップがセールで急にアクセス集中すると、正しいユーザーまでつながらなくなることがあります。DDoS攻撃は同じ現象を悪意で引き起こすものです。CDNはその影響を和らげ、通常の利用を守る手段になります。

対象読者

・中小規模のウェブ運営者
・インフラ担当者や初心者のシステム管理者
・CDN導入を検討中の担当者

本稿の流れ

続く章で、CDNとDDoSの基礎、CDNが具体的にどう守るか、実際の機能や注意点、導入事例まで順に説明します。まずは全体像をつかんでください。

CDNとDDoS攻撃の基礎知識

CDNとは

CDN(コンテンツ配信ネットワーク)は、世界中に分散したサーバーを使ってウェブのデータを届ける仕組みです。画像や動画、スタイルシートなどを近くのサーバーに保管しておき、利用者に一番近い場所から配信します。これによって表示が速くなり、元のサーバー(オリジン)の負担を軽くします。たとえば、日本の利用者は日本のサーバーから、海外の利用者はその国のサーバーから受け取れます。

DDoS攻撃とは

DDoS攻撃は、多数のコンピューターや機器が同時に大量のアクセスを送り、狙ったサーバーやサービスを使えなくする攻撃です。種類は大きく分けて、回線や帯域を圧迫する攻撃(大量のデータを流すタイプ)と、正規の操作に見せかけて処理を疲弊させる攻撃(アプリケーション層の攻撃)があります。実際の影響は、表示遅延や接続不能、取引停止などです。

なぜCDNがDDoS対策になるのか

CDNは配信を分散するため、攻撃トラフィックも分散されます。つまり単一のサーバーへ集中するのを防げます。また、CDNにはトラフィックを遮断したり、アクセスを制限したりする機能が備わっています。さらに、CDNがオリジンのIPアドレスを隠すことで直接攻撃を受けにくくします。簡単な例として、攻撃が来ても多くの配信サーバーで吸収され、元のサイトには負担が回りにくくなります。

CDNによるDDoS攻撃対策の仕組み

分散による負荷分散とキャッシュ

CDNは世界各地にあるエッジサーバーでコンテンツを配信します。静的ファイル(画像やCSS、JavaScript、HTMLなど)をエッジでキャッシュすることで、オリジンサーバーへの直接リクエストを大幅に減らします。攻撃が来てもリクエストは多数のエッジに分散され、単一のサーバーに負荷が集中しません。例えば画像配信サイトでは、画像がエッジから返るためオリジンはほとんど影響を受けません。

リアルタイム監視と異常検知

CDNはトラフィックをリアルタイムで監視し、通常と異なる急増やパターンを検出します。異常を見つけたら自動で対策ルールを適用します。たとえば短時間に同一IPや同一リクエストが大量発生した場合、即座にレートリミットをかけるなどしてサービスを守ります。

フィルタリングとアクセス制御

IPブロック、ジオブロッキング、レート制限、チャレンジ(CAPTCHAやJavaScript検証)などの機能で悪意あるトラフィックを弾きます。IP評判情報やシグネチャを使い既知の攻撃元を遮断できます。管理者はルールを細かく設定し、正当な利用者への影響を最小限にできます。

地理的冗長性と復旧

CDNは複数地域に冗長性を持ち、特定地域が攻撃されても他の地域から配信を継続します。さらにオリジンサーバーへのフェイルオーバーやトラフィックのリルーティングでダウンタイムを抑えます。これによりサービスの可用性を高めます。

CDNで補強されるDDoS対策の具体的な機能

エッジでのSSL/TLS暗号化

CDNは利用者の近くにあるエッジでTLSを終端します。これによりオリジンサーバーの処理負荷を下げ、暗号化に伴うハンドシェイク攻撃を分散して受け流せます。例えば大量のTLS接続要求が来ても、複数のPOPで吸収できます。

アクセス制御・認証

IPの許可リストやジオフェンス、APIキーやOAuth連携で正当な利用者だけを通します。管理画面で一時的に国別アクセスを止めるなど、現場で迅速に対処できます。CAPTCHAやリチャレンジでボットを弾く機能も一般的です。

レートリミット・IPブロック

IPごと、URLごと、APIごとにリクエスト閾値を設定できます。閾値を超えたIPを自動でブロックしたり、一定時間帯だけ制限したりして攻撃トラフィックを抑えます。閾値はサービス特性に合わせて柔軟に設定します。

WAF連携(Webアプリケーションファイアウォール)

CDNはWAFと連携してレイヤ7攻撃を検知・遮断します。シグネチャやルールで既知の攻撃をブロックし、カスタムルールで特定の攻撃パターンに対応できます。

AI・機械学習による脅威検知

正常なトラフィックを学習して異常を早期に検知します。パターン変化を検出したら自動でチャレンジを挟むなどの対策を実行して、攻撃を速やかに軽減します。

キャッシュと分散による吸収力向上

静的コンテンツをエッジにキャッシュすることで、オリジンへのリクエストを減らし、帯域攻撃の影響を限定します。多地点に分散することで単一障害点を避け、サービス継続性を高めます。

CDNによるDDoS対策のメリット

概要

CDNを使うと、サーバーに届く負荷を広く分散できます。これによりサーバーダウンのリスクが下がり、サービスが止まりにくくなります。複数の利点を分かりやすく説明します。

可用性の向上

CDNは世界中の拠点でアクセスを受け止めます。たとえば販売サイトで大量のアクセスが来ても、配信網が応答を分散するので本体サーバーが過負荷になりにくくなります。結果としてダウンタイムが減ります。

セキュリティ強化

CDNは悪意あるトラフィックの監視やフィルタリングを行います。ウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)と連携すれば、不正なリクエストをブロックして被害を小さくできます。

運用コストとスケーラビリティ

突発的なアクセス増にも柔軟に対応するため、急なサーバ増強を頻繁に行う必要が減ります。短期間の負荷集中にも経済的に耐えられます。

ユーザー体験の改善

負荷分散とキャッシュにより応答が速くなり、ページ表示や動画再生がスムーズになります。顧客満足度や購買完了率の向上につながります。

具体例

・セール時の通販サイトで注文処理が止まらない
・ゲームのマッチングが遅延しにくい
・動画配信で視聴が途切れにくい

これらのメリットにより、CDNはDDoS対策の有力な選択肢になります。

CDN利用時の注意点

コストに関する注意

CDNの従量課金型プランでは、送信したデータ量やリクエスト数がそのまま請求に反映します。攻撃トラフィック(大量のリクエストや大きなファイルの連続要求)も課金対象です。高額請求のリスクがあるため、帯域やリクエスト数の上限設定、請求アラートを必ず有効にしてください。

キャッシュできないコンテンツの扱い

ユーザー固有の動的ページやAPIはキャッシュ対象になりにくく、CDNだけで防御しきれない場合があります。APIキーやトークン認証、レート制限、IP制限を併用し、可能な部分は部分的キャッシュやレスポンス圧縮で負荷を下げてください。

他対策との併用

CDN単独では完全な防御は難しいです。WAF(Webアプリケーションファイアウォール)、IPS、レートリミッター、DDoSスクラビングサービスなどと組み合わせて多層防御を構築してください。重要なバックエンドはプライベートネットワークに置き、オリジンサーバー保護を設定します。

運用と監視のポイント

ログとメトリクスを常時監視し、異常を早期に検知する仕組みを整えます。負荷テストで設定を検証し、誤検知による正常トラフィックの遮断に注意してください。契約のSLAやサポート体制を確認し、緊急時の連絡経路を定めておくことも重要です。

導入事例・応用分野

CDNはトラフィックが多く攻撃の標的になりやすい分野で広く使われています。ここでは代表的な導入事例と、それぞれの活用ポイントを分かりやすく説明します。

ゲーム業界

MMOや新作タイトルのローンチ時に同時接続が急増します。CDNはパッチ配布や静的資産の配信を分散し、サーバーの負荷を下げます。リアルタイム通信は別経路で処理しつつ、攻撃トラフィックはエッジで吸収できます。

大規模ウェブサービス

SNSやニュースサイトでアクセスが集中する場面が多いです。キャッシュでオリジンサーバーへのリクエストを減らし、突発的な増加や攻撃に耐えます。

ECサイト

セールやイベント時のアクセス急増と、決済周りの安全性が重要です。画像や商品ページをCDNで配信しつつ、WAFやレート制限で不正アクセスを防げます。

メディア・動画配信

ライブ配信やVODで遅延を抑えつつ大量配信します。ストリーミング用の最適化と同時に、DDoSをエッジで分散して動画視聴を安定させます。

金融・オンラインバンキング

可用性とログの追跡が求められます。CDNとWAFを組み合わせて不正通信を遮断しつつ、詳細なログで調査に備えます。

IoT・産業用途

多数の端末が定期的に通信する環境で、エッジ側でフィルタリングすると攻撃の影響範囲を狭められます。

導入時のポイント

  • トラフィックパターンを把握して適切なキャッシュ方針を決める
  • WAFやレート制限の設定を合わせて行う
  • 複数リージョンと冗長化で可用性を高める
  • ログとアラートで異常を早期に検知する
  • 段階的に切り替えて本番での影響を確認する

これらの事例を参考に、用途に応じた機能を選ぶと効果的です。

まとめ

ここまでで、CDNがDDoS攻撃対策に果たす役割と具体的な機能、導入時の注意点を説明しました。最後に、要点を分かりやすく整理します。

  • 分散による吸収力
    CDNは世界中のエッジでトラフィックを受け止め、多くの攻撃トラフィックをキャッシュやエッジで処理します。これによりオリジンサーバーの負荷を大幅に抑えます。

  • 多層的な防御
    キャッシュ、負荷分散、レート制限、トラフィック監視、フィルタリングやWAFなどを組み合わせて、攻撃を早期に検知・遮断します。単一の対策よりも耐性が高まります。

  • 注意点と限界
    トラフィック量に応じた課金、キャッシュ対象外への攻撃、設定ミスや誤検知はリスクです。ログの監視、定期的な設定見直し、負荷試験を実施してください。

  • 運用のポイント
    SLAを確認し、導入前に要件を整理して試験導入を行いましょう。インシデント対応手順を用意し、WAFやIDSなどと併用する運用体制を整えることをお勧めします。

総じて、CDNはDDoS対策の中核となる有力な手段です。とはいえ単独では万能ではないため、他のセキュリティ技術と組み合わせ、継続的に運用・改善していくことが重要です。

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