はじめに
AWS管理コンソールの「セッション時間」は、ログインした状態がどれだけ続くかを決める重要な設定です。本記事はその基本から実務での設定方法、外部の認証連携時の挙動、関連サービスごとの違い、そしてセキュリティ面での注意点までを分かりやすく解説します。
この記事の目的
- AWSコンソールのセッション時間を正しく理解し、適切に設定できるようになること。
- 運用上の使い勝手と安全性をバランスよく保つ方法を示すこと。
対象読者
- AWSを運用・管理するエンジニアや管理者
- 権限やログイン挙動を整備したいチームリーダー
読み方のポイント
- 専門用語は最小限にし、具体例を交えて説明します。設定手順は画面操作に即した流れで示します。
以降の章で、IAM Identity Centerや許可セット、外部IdP連携、Session Managerなど個別の項目を順に取り上げます。実務で参考にしやすい内容にしていますので、必要な章を順番にご覧ください。
AWSコンソールのセッション時間とは
説明
AWSコンソールのセッション時間とは、利用者がブラウザなどで管理コンソールにログインしてから、そのログイン状態が維持される期間を指します。期間が過ぎると自動的にログアウトされ、再認証が必要になります。
なぜ重要か
セキュリティと利便性の両方に関わります。短くすると不正利用のリスクを減らせます。長くすると作業の中断が減り効率が上がります。環境や利用者に応じて最適な長さを選びます。
影響する要素
- 認証方式(パスワード、フェデレーション、Identity Centerなど)
- ロールや許可設定に紐づくトークンの有効期間
- ブラウザのクッキーやセッションストレージの扱い
具体例
- 共有端末や公開端末では短め(数十分)に設定
- 開発や日常業務では数時間に設定
確認方法
ブラウザでのログイン後、一定時間操作をせずに自動ログアウトされるかを試すか、管理者コンソールの認証設定を確認します。
注意点
コンソールのセッション時間とAPI/CLI用の一時トークンは別管理です。API操作には別の有効期限が設定されることが多い点にご注意ください。
セッション時間の変更方法(IAM Identity Centerの場合)
概要
IAM Identity Center(旧 AWS SSO)では、AWSコンソールやSSO経由の認証に対するセッション時間を中央で設定できます。ここでは管理コンソール上での一般的な操作手順と注意点をわかりやすく説明します。
設定手順(コンソール)
- AWSマネジメントコンソールで「IAM Identity Center」を開きます。
- 左メニューの「設定(Settings)」を選び、「認証(Authentication)」タブを開きます。
- 「セッション設定(Session duration)」を選びます。プリセット(例:4時間、8時間)かカスタムを選べます。
- カスタムを選んだ場合は分単位で時間を入力し、保存ボタンをクリックします。
設定可能な範囲
- 最小:15分
- 最大:90日
注意点
- 設定を変更しても既存のアクティブセッションは自動で切れません。新しい設定を即時適用したい場合は、アクティブセッション一覧から個別または一括でサインアウト(強制終了)してください。
- コンソールはブラウザのクッキーで管理され、CLIやプログラムからの認証は一時的な資格情報に依存します。SSOを通したCLI利用者には再認証が必要になることがあります。
実用例
- 開発者用:8時間(通常の勤務時間に合わせる)
- 運用管理者:1日〜7日(長時間の作業を想定)
これらを参考に、組織の運用方針とリスク許容度に合わせて設定してください。
許可セットごとのセッション時間の制御
概要
IAM Identity Centerでは、AWSアカウントに割り当てた「許可セット」ごとにセッション時間を設定できます。許可セットごとに異なる時間を持たせることで、管理者や一般ユーザーで使い勝手と安全性を分けられます。
具体例
例として、管理者向けのAWSAdministratorAccess許可セットは4時間、読み取り専用の許可セットは1時間に設定できます。こうすることで管理者の作業効率を保ちつつ、リスクを抑えます。
設定手順(簡易)
- AWSコンソールでIAM Identity Centerに移動します。
- 「許可セット」一覧から対象の許可セットを選びます。
- 編集画面で「セッションの有効期間(Session duration)」を設定し保存します。
注意点と運用のコツ
- セッション時間はIdentity Center発行の認証情報や一部の一時的なAWS STSトークンの有効期限に影響します。
- 長すぎると侵害時のリスクが増えます。短すぎると頻繁な再認証で業務に支障が出ます。
- 重要権限には短め、日常作業用はやや長めといった方針が現実的です。
推奨
具体的な数値は組織のリスク許容度に依存しますが、管理者は2〜4時間、一般利用は1〜2時間を目安に検討してください。必要に応じてMFA運用やアクセスログと組み合わせて運用を見直してください。
外部IdP連携時のセッション時間挙動
概要
外部IdP(例:SAML連携やGoogle Workspaceなど)とIAM Identity Centerを統合している場合は、双方で設定されたセッション有効期間のうち短い方が実際に適用されます。ユーザー認証の際にIdP側の制約が優先されるため、Identity Centerで長めに設定していても効果が無いことがあります。
仕組み(SAMLの例)
SAML連携では、IdPが発行するアサーション内のSessionNotOnOrAfter属性でセッションの有効期限を指定できます。AWSはこの属性を確認し、Identity Center側で設定した上限と比較して短い方を使います。たとえば、Identity Centerが8時間、IdPが1時間なら最終的な有効期間は1時間になります。
Active Directoryをアイデンティティソースにした場合の注意
Active Directoryを直接アイデンティティソースにすると、セッション管理(SessionNotOnOrAfterのような制御)はサポートされません。AD環境では別途認証フローやグループポリシーでの制御が必要です。
実務的な確認ポイント
- IdPのセッション設定(有効期限)を確認する。Google Workspaceや社内IdPの管理画面で確認できます。
- SAMLアサーションをキャプチャしてSessionNotOnOrAfterを確認する。ブラウザ開発者ツールやSAMLトレースツールが便利です。
- 両者の設定を合わせるか、短い側に合わせた運用ルールを作る。
運用のコツ
- ユーザーにセッション切れのタイミングを周知して混乱を減らす。
- テスト用アカウントで設定変更後に必ず動作確認する。
- セキュリティ要件が高ければIdP側を短めに設定し、Identity Centerでは上限を維持する運用が分かりやすいです。
AWS Systems Manager「Session Manager」等、他サービスのセッション時間
Session Manager の主要パラメータ
AWS Systems Manager の Session Manager では主に2つの時間設定を扱います。
– idleSessionTimeout:操作がない(アイドル)状態で切断するまでの時間(1〜60分)
– maxSessionDuration:セッションの最大継続時間(1〜1440分=最大24時間)
idleSessionTimeoutは“放置”に対する短時間の自動切断、maxSessionDurationは一回の接続が続けられる上限を意味します。
セッションドキュメントでの個別設定
これらはセッションドキュメント(Session Manager の設定ファイル)ごとに指定できます。例えば長時間のデバッグ用セッションはmaxSessionDurationを長く、短いメンテ作業はidleSessionTimeoutを短くする、といった柔軟な制御が可能です。
実例と設定の目安
- 短い運用作業:idleSessionTimeout = 5分、maxSessionDuration = 60分
- 長時間デバッグやバッチ確認:idleSessionTimeout = 30分、maxSessionDuration = 480分(8時間)
用途に応じて使い分けると安全性と利便性のバランスが取りやすいです。
aws-vault 利用時の注意点
aws-vaultでロールをスイッチするときは、要求するセッション時間がロール側の max session duration を超えないようにしてください。aws-vault 側で指定しても、IAM ロールの上限により短く制限されます。実務ではロールの最大値を確認してから aws-vault のパラメータを設定すると安心です。
セッション時間とセキュリティ
概要
セッション時間は利便性と安全性のバランスで決めます。長すぎると不正利用の窓口が広がり、短すぎると業務効率が落ちます。業務要件とリスクを照らして設定してください。
なぜ重要か
長時間のセッションは、端末放置や盗難、漏えいした一時資格情報の悪用を招きやすくなります。特に管理者権限では被害が大きくなります。
設定の考え方
業務で必要な最短時間を基準にします。読み取りのみのユーザーと管理者で差をつけます。例:管理者は短め(数時間以内)、定型作業ユーザーは中程度(数時間〜1日)など。
アイドルタイムアウト
一定時間操作がなければ自動ログアウトする設定を推奨します。例として15〜30分程度を目安にすると、不正利用のリスクを下げられます。
補助的対策
多要素認証(MFA)、最小権限、ログの監査とアラート、セッションの短縮や定期的な見直しを併用してください。
運用上の注意
ポリシーは定期的に見直し、インシデント時の対応手順を整えます。ユーザー教育も大切です。
まとめ
以下は本書で扱った要点のまとめです。
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セッション時間の管理場所:IAM Identity Center(旧SSO)、許可セット、外部IdP連携、AWS Systems ManagerのSession Managerなど、複数の場所で設定や影響を受けます。
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設定可能な範囲:用途に応じ最短15分から最長90日まで調整可能です。サービスや連携先によって上限・下限が異なります。
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外部IdPとの関係:外部IdPと連携する場合は、双方の設定のうち短い方が優先されることが多いです。注意して確認してください。
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セキュリティ上の考え方:必要最小限のセッション時間を採用し、MFAやログ監査を併用します。重要な操作には再認証を求める運用が望ましいです。
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運用のポイント:組織の規程やリスクに合わせて試験的に短縮・延長を行い、ログやアラートで影響を確認してください。設定変更はドキュメント化して周知します。
結論として、適切なセッション時間の設定は利便性と安全性のバランスを取る作業です。企業や組織の要件とAWS公式ドキュメントを参照しつつ、慎重に設定してください。












