はじめに
目的
本記事は、AWSアーキテクチャ図を誰でも分かりやすく作れるよう、公式アイコンの使い方や入手方法、活用できるツール、図作成のコツやガイドラインを丁寧に解説します。視覚的に整理することで、構成の理解や共有がスムーズになります。
対象読者
クラウドやAWSの経験が浅い方、資料作成や設計図を任された方、運用ドキュメントを見やすくしたい方に向けています。専門用語は必要最低限にし、具体例を交えて説明します。
本記事で得られること
- 公式アイコンの役割と種類がわかる
- アイコンの入手方法と使い方が習得できる
- 見やすい図を作るためのルールやコツが身につく
- 図作成に適したツールの選び方がわかる
読み方のヒント
順に読むと理解が進みますが、すぐ図を作りたい場合は第3章(入手方法)と第5章(ツール)を先にご覧ください。各章は実践的に役立つよう構成します。
AWSアーキテクチャ図と公式アイコンとは
概要
AWSアーキテクチャ図は、クラウド上で動くシステムの全体像を視覚化した図です。どのサービスがどの役割を担い、どのようにデータが流れるかを一目で伝えます。
公式アイコンとは
AWSが提供する公式アイコンは、各サービスやリソースを表す統一された絵柄です。たとえば、EC2はサーバー、S3はストレージ、RDSはデータベース、Lambdaは関数実行を示すアイコンがあります。公式アイコンはSVGやPNGで提供され、色や形が統一されて見やすくなっています。
公式アイコンを使うメリット
- 視覚的一貫性:同じ図を見た人が同じ意味で理解できます。
- 可読性の向上:複雑な構成でも要点が分かりやすくなります。
- コミュニケーション効率:チーム内や対外的な説明がスムーズになります。
使いどころの例
- 設計書や提案資料で構成を説明する時
- チーム内の共有ドキュメントやオンボーディング資料
- 障害対応時に原因範囲を伝えるための図
公式アイコンを使うと、説明が簡潔になり誤解が減ります。次章では入手方法や種類について具体的に説明します。
公式アイコンの入手方法と種類
入手方法
AWS公式アイコンはAWSの「アーキテクチャアイコン」ページからダウンロードできます。ページでは最新版のアイコンセットが配布されており、用途に合わせてまとめて取得できます。組織で共有する場合は一度ダウンロードして共通フォルダに置くと便利です。
ファイル形式(用途ごとの特徴)
- PowerPoint(.pptx): そのままスライドに貼って説明資料を作るときに便利です。
- SVG: ベクター形式で拡大・縮小しても劣化しません。図面を細かく編集する場合におすすめです。
- PNG: 手早く使いたいときやツールがベクターに対応していないときに便利です。解像度に注意してください。
- Sketch: Macのデザインツールで編集する人向けです。
アイコンの種類
- サービスアイコン: S3、EC2、RDSなど、AWSの各サービスを示すシンボルです。システム全体を俯瞰するときに使います。
- リソースアイコン: サーバー、データベースインスタンス、ネットワーク構成など、個々のリソースやコンポーネントを示します。実装レベルの図で役立ちます。
選び方のポイント
- 図の粒度に合わせてサービスアイコン(高レベル)かリソースアイコン(詳細)を選んでください。
- サイズ変更が多いならSVGを選びます。資料作成中心ならpptxやPNGが手早いです。
- アイコンのスタイルを統一して見やすさを保ってください。
アイコンの使い方とガイドライン
アイコンの大きさと余白
公式アイコンは見やすさを優先して統一したサイズで使います。代表的には48×48や32×32などを基準にし、隣接するアイコンとは十分な余白(上下左右に少なくともアイコン幅の1/4程度)を確保します。余白があると図全体が読みやすくなります。
色とカラーテーマの選択
カラーテーマは2〜3色に絞ります。サービスの種類で色を分ける場合は、同じカテゴリは同一色にして視認性を高めます。背景は淡い色か白にして、アイコンが浮き上がるようにします。
リージョンやVPC単位のグループ化
リージョン、VPC、サブネットなどは境界ボックス(角を丸めた枠)でまとめ、見出しと簡単な説明を付けます。枠の色や線種(実線/破線)で環境(本番/開発)を区別すると分かりやすいです。
矢印と関係性の表現
矢印は通信の向きと種類を示します。同期/非同期の違いは矢印の形や点線で表現し、矢印の太さで重要度や帯域を示すと良いです。矢印には簡潔なラベル(例:HTTPS, SQS)を付けると意味が伝わります。
レイアウトと整列
左から右にデータフローを流すなど、一貫した読み方向を決めます。グリッドに合わせて整列し、同種の要素は同じ列や行に揃えます。整列で視線が自然に追える図になります。
番号付与と注釈
複雑な処理は手順番号を振り、凡例や注釈で補足します。番号は目立つ色で小さく表示し、図の外に手順一覧を付けると読みやすさが上がります。
最後に
公式ガイドラインのルールを守りつつ、見る人にとって分かりやすい工夫を加えると効果的です。
おすすめ図作成ツールと使い方
draw.io(diagrams.net)
- 特長: 無料で使え、公式AWSアイコンを組み込めます。VSCode拡張もあり、コード作業の合間に図を作れます。
- 使い方: テンプレートを選び、サイドバーからAWSアイコンをドラッグ&ドロップ。接続線は自動調整されます。
PowerPoint
- 特長: 使い慣れた人が多く、pptx形式の公式アイコンをそのまま貼れます。
- 使い方: 公式のアイコンファイルを開き、必要な図形をコピーしてスライドに貼り付け、配置を整えます。
Miro
- 特長: 複数人で同時編集でき、ホワイトボード感覚で作業できます。テンプレートやアイコンライブラリが豊富です。
- 使い方: ボードを作成し、アイコンライブラリから配置。コメントでチームとやり取りします。
Figma
- 特長: デザイン寄りのツールで細かい調整が得意。コンポーネント化して再利用できます。
- 使い方: アイコンをコンポーネント化し、レイヤーで整列。エクスポートでPNGやSVG出力します。
EdrawMax
- 特長: 図形テンプレートが豊富で、初心者でもきれいな図を作れます。
- 使い方: テンプレートを選び、ドラッグで配置。自動配置やガイド線を活用します。
クラウドツールの活用術
- テンプレートとアイコンライブラリを活用して時間を短縮します。
- 共同作業時はバージョン管理やコメント機能を使い、変更履歴を残します。
使い分けの目安
- 手早く作る: draw.ioまたはPowerPoint
- チームで議論: Miro
- デザイン重視: Figma
- テンプレートで作成: EdrawMax
各ツールは特徴が異なるため、目的とチームの慣れに合わせて選んでください。
効率的にAWS構成図を作るコツ
1. 全体の枠を先に置く
まずリージョンやVPC、アカウント境界をキャンバスに大きく配置します。例:リージョンを枠、VPCを内側のボックスにすることで視覚的な階層が生まれます。これで後から要素を追加しても位置がぶれません。
2. アイコンとテキストのスタイルを統一
アイコンのサイズ、フォント、色をテンプレート化します。例:サービス名は14pt、説明は12pt、重要箇所はアクセントカラーにするだけで読みやすくなります。
3. 公式ガイドラインに沿った一貫性
公式アイコンの比率や表示ルールを守ります。例えば同じサービスは同じアイコン、同じラベル形式で統一します。これにより第三者が見ても意味が分かりやすくなります。
4. 設計フェーズと作業フェーズに分ける
設計は要件整理とデータフローの洗い出しに集中します。作業は実際の図作成、細部の注記、レイアウト調整に集中します。フェーズを分けるとやり直しが少なくなります。
5. テンプレートやショートカットを活用
よく使う構成はテンプレート化し、図形をコンポーネントとして保存します。ツールのショートカットやグリッド/スナップ機能を使うと整列が速くなります。
6. レビューとメンテナンスの仕組み
図は生き物です。バージョン管理、変更履歴、コメント欄で運用者と定期レビューを行います。重要な変更は差分を明示すると誤解が減ります。
7. 見やすさの小技
通信は矢印で方向を明示し、凡例を付けます。余白を十分に取り、重要要素は色や太字で強調します。これで図の理解が速くなります。
まとめ・活用シーン
要点の振り返り
AWSの公式アイコンとガイドラインを使うと、誰が見ても理解しやすい構成図を短時間で作れます。正しいアイコン、命名、配置ルールに従うことで誤解を減らし、設計や運用の議論がスムーズになります。
具体的な活用シーン(例)
- チームのオンボーディング:新メンバーにシステム全体を素早く伝えられます。図は口頭説明よりも誤解が少なくなります。
- アーキテクチャレビュー:設計意図や依存関係を可視化して、改善点を掴みやすくします。
- 運用・障害対応:運用マニュアルやランブックに図を入れると、対応時間を短縮できます。
- 提案資料や見積もり:顧客や関係者に技術構成を明確に示せます。PowerPointでの活用が特に有効です。
実践のポイント
- 公式アイコンを最新版で揃える。draw.ioやPowerPointのテンプレートを活用すると効率的です。
- レイヤーや色分けで役割を明確にする。ネットワーク、データ、処理の順で並べると見やすくなります。
- 注釈や凡例を必ず付ける。略語や非自明な構成要素は説明を加えてください。
最後に
図は作り続けるほど良くなります。まずはシンプルな図から始め、実際の会話やレビューで改善していくと、チームの共通理解とドキュメント品質が確実に向上します。












