第1章: はじめに
本書の目的
本書はWebサイトの直帰率について、基礎から実践までを分かりやすくまとめたガイドです。直帰率の定義や計算方法、直帰率と離脱率の違い、業種別の目安、原因と改善策、GA4での扱い方などを網羅します。初心者から運用担当者まで、日々の改善に役立つ知識を提供します。
読者対象
- サイト運営者やマーケター
- 分析を始めたい担当者
- 制作側と運用側の橋渡しをする方
専門用語は最小限にし、具体例で補足しますので、分析が初めての方も安心して読み進めてください。
本書の構成と使い方
各章は独立して読める構成です。まず第2章で直帰率の定義と計算方法を押さえ、その後に原因分析や改善策、GA4での扱い方を順に学んでください。実務で使えるチェックリストや見方も紹介します。
直帰率とは?定義と計算方法
定義
直帰率とは、ユーザーがWebサイトを訪れて最初の1ページだけを見て離脱したセッションの割合を示す指標です。訪問後に他のページへ移動せずにサイトを離れたかどうかを表します。
計算式と具体例
直帰率(%) = 直帰セッション数 ÷ 総セッション数 × 100
例えば、ある期間に200セッションあり、そのうち50セッションが直帰だった場合、直帰率は50 ÷ 200 × 100 = 25%になります。
個別ページの直帰率
個別ページの直帰率は、そのページを入口(最初に表示されたページ)としたセッションのうち、他のページへ遷移せずに離脱した割合です。入口ページがユーザーの最初の接点である場合、そのページの評価に直結します。
計測上の注意点
通常はページビューだけで終わるセッションが直帰に該当します。ページ上でのボタン押下やスクロールなどのイベントを「滞在」として計測する仕組みがあると、直帰扱いにならないことがあります。計測ツールの設定によって値が変わるため、解釈時は計測方法を確認してください。
直帰率と離脱率の違い
定義
- 直帰率(bounce rate): ユーザーがサイトに来て最初のページだけを見て離脱した割合を示します。訪問が1ページだけで終わる場合にカウントされます。
- 離脱率(exit rate): ある特定のページを見たユーザーのうち、そのページでサイトを離れた割合を示します。そのページがセッションの最後になった割合です。
違いをわかりやすく
- 入口ページでの離脱か、特定ページでの離脱かの違いです。直帰率は「入り口」に限定され、離脱率は「どのページでも最後になった割合」を表します。
簡単な図(イメージ)
- ユーザーA: ページA(入口)→ 離脱 = 直帰
- ユーザーB: ページA(入口)→ ページB → ページC(離脱)= ページCの離脱
具体例
- ブログ記事に訪れてすぐ戻る人が多ければ、その記事の直帰率が高くなります。
- ショッピングサイトで決済ページで離脱が多ければ、その決済ページの離脱率が高いです。
解析での使い分け
- 直帰率は入り口ページの魅力や導線の問題を見つけやすい指標です。
- 離脱率はサイト内のどのページで課題が起きているかを把握できます。両方を合わせて見ると改善点が明確になります。
直帰率の平均値・目安(業種別・流入経路別)
業種別の目安
- ECサイト:20~45%(商品一覧や購入ページは遷移が多く直帰が少ない傾向です)
- コンテンツサイト:35~60%(読むだけで満足する訪問が多く、ページ数が増えるほど直帰が上がりやすいです)
- LP・ポータル:60~90%(1ページ完結の誘導が目的のため直帰が高くなりやすいです)
- ブログ・ニュース:40~60%(記事単体で読まれると直帰が高くなりますが、関連記事表示で改善できます)
流入経路別の目安
- バナー広告:56.5%(広告クリック後の期待と実際の内容差で直帰が高くなりがちです)
- SNS:54%(SNSは興味喚起が主体のため即離脱も多いです)
- 直接流入:49.9%(リピーターやブックマーク流入が混ざります)
- リスティング広告:44.1%(検索意図が明確なため比較的低めです)
- オーガニック検索:43.6%(検索目的と一致すれば滞在が長くなります)
- リファラル(参照元):37.5%(関連性の高い紹介流入は直帰が低い傾向です)
- Eメール:35.2%(的を絞った配信は行動につながりやすいです)
デバイス別平均
- モバイル:51%、デスクトップ:50%、タブレット:46%(モバイルは操作性で離脱が増えることがあります)
目安の使い方と注意点
目安は比較のための指標です。同業他社や流入経路別で比較し、目標を決めてください。ページの目的(購入、情報提供、申し込み)によって適正な直帰率は変わります。測定ツールや定義で数値が変わることに注意し、まずは自分の過去データと比較して改善の方向を決めるとよいです。具体的には、直帰率が高い流入経路やページを絞り、導線・コンテンツ・表示速度を優先的に改善してください。
直帰率が高くなる原因
導入
直帰率が高いときは、ユーザーが「期待と違った」「操作が難しい」と感じてすぐに離れていることが多いです。主な原因を具体例とともに分かりやすく説明します。
1. コンテンツが期待に合っていない
検索結果や広告で示した内容と中身が違うと離脱が増えます。例:商品ページを探して来たのに情報がブログ記事だけだった。
2. ファーストビューが魅力的でない・分かりにくい
ページを開いて最初に表示される部分で目的が分からなければ去られます。例:見出しが抽象的で導線がない。
3. 表示速度が遅い
読み込みに時間がかかると我慢できず離脱します。画像や広告が重い場合に起きやすいです。
4. 欲しい情報がすぐ見つからない
ナビゲーションが分かりにくい、見出しが弱いと探す手間が増えます。例:製品仕様がスクロールの下に埋もれている。
5. スマホでの使い勝手が悪い
ボタンが小さい、レイアウト崩れ、タップしにくいとスマホユーザーは離れます。
6. 流入元のユーザーの関心が低い
広告やSNSで広く出した場合、興味の薄い人も来るため直帰が増えます。
7. 広告やポップアップが邪魔になる
画面を覆うポップアップや重い動画広告で離脱が進みます。
8. 技術的な問題や計測のずれ
リンク切れやエラー表示は即離脱につながります。計測設定が不適切だと数値が実態と合わないこともあります。
以上が直帰率が高くなる主な原因です。次章で改善策を丁寧に解説します。
直帰率の改善方法
1. 検索意図に合ったコンテンツ作成
訪問者が何を求めているかを想像して書きます。具体例:商品比較を求める人には価格やスペック表、使い方を求める人には手順や写真を最初に載せます。見出しで要点を伝え、冒頭で結論を示すと離脱を防げます。
2. ファーストビューの改善(デザイン・見出し・CTA)
最初に目に入る部分で信頼感を与えます。大きく分かりやすい見出し、短い導入文、行動を促すボタン(申込・詳しくはこちら)を配置します。CTAは色を変え、具体的な文言にします(例:「無料で試す」「料金を確認」)。
3. ページ表示速度の高速化
画像は圧縮やWebP形式を使い、必要なサイズだけ読み込みます。不要な外部スクリプトは削除または遅延読み込みにします。表示が速くなると離脱が減ります。
4. 内部リンクで回遊を促進
関連記事や関連商品へのリンクを本文中や記事下に置きます。アンカーテキストは内容が分かる言葉にして、次に読む理由を示します(例:「初心者向け設定ガイドへ」)。
5. モバイル最適化
ボタンは指で押しやすく、文字は読みやすい大きさにします。画像やレイアウトが崩れないか実機で確認します。モバイル表示が快適だと直帰が減ります。
6. ユーザー体験の向上と計測
滞在時間やスクロール深度を計測し、短いページは内容を増やします。動画や図を使い理解を助け、FAQやレビューで不安を解消します。A/Bテストで見出しやCTAを比較し、効果の高い案を採用します。
Googleアナリティクス4(GA4)での直帰率
定義
GA4の直帰率は「エンゲージメントのなかったセッションの割合」です。GA4はセッションが次のいずれかを満たすと“エンゲージメントあり”とみなします:
– ページ滞在が10秒以上
– コンバージョンイベントの発生
– 2ページ以上(または2画面以上)の閲覧
これらが起きなかったセッションが直帰に数えられます。
UAとの違い
従来のUAは「ページビューが1回だけのセッション」を基準にしていました。GA4は滞在時間やイベントも含めるため、同じサイトでも直帰率の値が変わります。単純に比較すると誤解を招きます。
GA4での確認方法
レポートの「ライフサイクル」→「エンゲージメント」→「概要」や「イベント別」などで、「エンゲージメント率」「直帰率」「平均エンゲージメント時間」などを確認できます。探索(Exploration)で指標を組み合わせると細かく分析できます。
注意点と解釈のコツ
直帰率は単独で判断しないでください。滞在時間やコンバージョン率、ページ/セッションと合わせて見ます。例えば動画を置いたページは滞在10秒越えで直帰になりにくくなります。ボットや計測漏れで数字が歪む場合もあります。
具体例と改善の着眼点
- 直帰率が高く、平均エンゲージメント時間が短い:導線(CTA)やコンテンツの魅力を見直す
- 直帰率は高いがエンゲージメント時間が長い:ユーザーは読んでいるが動線が弱い可能性あり
ページ速度改善、見出しの整理、明確な次のアクション設置などで改善を目指してください。
直帰率分析時に見るべき指標
概要
直帰率だけで判断せず、複数の指標を併せて見ることが重要です。以下の指標と読み方、改善のヒントを分かりやすくまとめます。
主な指標と見方
- コンバージョン率
- 目標達成(購入・申し込みなど)が高ければ直帰率が高くても問題ない場合があります。まずは最終成果を優先してください。
- 平均ページ滞在時間
- 極端に短い(例:10秒未満)場合は内容が伝わっていない可能性があります。文章の導入や読みやすさを改善します。
- イベント発火率(クリック・フォーム送信など)
- ボタンや動画の再生が正しく計測できているか確認します。イベントが多ければ利用者の関与度が高いです。
- スクロール深度
- ユーザーがどこまで読んでいるか分かります。下まで届かない場合は導線や見出しを見直します。
- ランディングページ別・流入チャネル別の直帰率
- 広告やSNSから来たユーザーと自然検索の挙動は異なります。流入ごとに改善策を変えます。
- ページ読み込み速度
- 遅ければ離脱が増えます。画像圧縮やキャッシュ設定を見直してください。
- デバイス・ブラウザ別の挙動
- スマホで直帰が多ければ表示崩れやレイアウト問題を疑います。
分析のコツ
指標は単独で判断せず、組み合わせて見てください。例えば直帰は高いがコンバージョンも高ければ、導線は問題ない可能性があります。一方で滞在時間が極端に短い場合はコンテンツやデザインを点検しましょう。
まとめ:直帰率は改善の第一歩
直帰率は単に「悪い数値」ではなく、サイトやページの課題を見つけるための重要なヒントです。ここでは本書で触れたポイントを振り返り、実践しやすい次の一手をまとめます。
- 要点の振り返り
- 直帰率とはランディング後に他ページへ移動せず離脱した割合です。離脱率とは異なる視点で見る必要があります。
- 業種や流入経路で目安が変わります。ベンチマークは参考に留め、文脈を重視してください。
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高い直帰率の原因は、期待とコンテンツのズレ、読み込み遅延、モバイル非対応、導線不足などが多いです。
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実践的な改善ステップ
- 目的を決める(KPIを設定)
- 主要ランディングページを優先して改善する(上位5ページなど)
- ファーストビューとタイトル・メタを見直す
- ページ速度とモバイル表示を改善する
- 内部リンクや明確なCTAを追加する
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GA4でエンゲージメント指標やイベントを計測し、効果を確認する
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分析のポイント
- 流入経路・デバイス・ランディングページごとにセグメントして見る
- 滞在時間、イベント数、コンバージョン率も併せて確認する
まずは少しずつ仮説を立て、改善と検証を繰り返してください。直帰率の改善は、より良いユーザー体験と成果につながる第一歩です。












