はじめに
この記事の目的
本記事はAWSのEC2インスタンス(インターネット上の仮想サーバー)について、初心者にも分かりやすく解説します。専門用語は最小限にし、具体例を交えて説明しますので、初めてクラウドを扱う方でも安心して読めます。
なぜEC2を知るとよいか
EC2は「必要なときにサーバーを借りる」仕組みです。たとえば、個人のブログや小規模なWebサービスを公開する際、自宅のパソコンよりも安定して運用できます。柔軟に性能を変えられ、使った分だけ支払うためコスト管理もしやすい点が特長です。
本記事の構成と読み方
全7章で基本から運用のコツまで順に解説します。まずは第2章でEC2の基本を理解し、その後で用途に合わせた選び方や運用方法を学ぶと実践に役立ちます。専門用語は都度具体例で補足しますので、気軽に読み進めてください。
AWSインスタンス(EC2インスタンス)とは
概要
AWSインスタンスは、Amazonが提供するEC2という仕組み上で動く仮想サーバーです。簡単に言うと、物理的なサーバーを買わずに、インターネット経由で必要なコンピューティング資源を借りて動かすことができます。数分で作成でき、使った分だけ支払う方式が一般的です。
何に使うか(具体例)
- ウェブサイトを公開するサーバー
- テスト用の開発環境
- バックグラウンドで動くデータ処理
これらは、自分のパソコンと同じようにソフトウェアを入れて動かせます。例えばブログの公開や社内向けツールの運用ができます。
主な構成要素(分かりやすく)
- CPU・メモリ・ストレージ:人で言えば頭(処理能力)と作業机(メモリ)、引き出し(保存場所)に当たります。
- OS(例:LinuxやWindows):パソコンに入っている基本ソフトです。
- IPアドレスや鍵(Key Pair):ネットワークで接続するための住所や鍵です。
- セキュリティグループ:入退室を管理する門のようなものです。
利点の簡単な説明
物理サーバーを購入・設置する手間が不要で、必要なときにスケールできます。また、設定やコピーが簡単なので開発効率が上がります。
AWSインスタンスの主な特徴とメリット
概要
AWSインスタンスは必要なときにすぐ作成でき、不要になれば削除できます。台数やスペックを柔軟に変えられる点が特徴です。
柔軟性と拡張性
数分でサーバーを起動し、負荷が増えれば台数を増やすか性能の高いタイプに切り替えます。オートスケーリングを使えば自動で増減できます。例えば、通販サイトのアクセス急増時に自動でサーバーを増やせます。
コスト効率
従量課金制なので使った分だけ支払います。初期投資や長期のハード買替えが不要で、短期間の実験や季節的なサービスに向いています。
管理の簡易化
OSやネットワーク設定はテンプレートや自動化ツールで素早く適用できます。ハードウェア障害対応はAWS側が担い、利用者は設定や運用に集中できます。
セキュリティと耐障害性
AWSの基盤でネットワークや物理面の対策が施されます。アクセス制御やファイアウォール設定は自分で行い、複数の配置先を使うことで障害に強くできます。
バックアップと復旧
スナップショットやイメージを定期保存して迅速に復旧できます。重要データは自動バックアップで保護できます。
代表的な利用例
Webサーバー、バッチ処理、検証環境など、短期間や可変負荷のある用途に適しています。
インスタンスタイプとファミリーの違いと選び方
インスタンスタイプとは
インスタンスタイプは、EC2インスタンスのCPU、メモリ、ストレージ、ネットワーク性能の組み合わせを表します。用途に応じて最適なスペックを選べます。
主要なファミリーと特徴(簡潔な例付き)
- 汎用(Mファミリー): バランス型で多用途に向きます。小規模なWebアプリやテスト環境に適します。
- コンピューティング最適化(Cファミリー): CPU性能重視。高負荷の計算やバッチ処理、ゲームサーバーに向きます。
- メモリ最適化(Rファミリー): メモリを多く使うデータベースやキャッシュに有効です。
- ストレージ最適化(Iファミリー): 高速なローカルストレージが必要なワークロード向け(ログ処理、分析など)。
- バースト可能(Tファミリー): 平常時は低コストで、負荷が時々高くなる用途に適します(小規模なAPIや開発環境)。
選び方の手順
- 目的を明確にする(Web、DB、バッチなど)。
- 必要なリソース量を見積もる(CPU、メモリ、I/O)。
- コストと拡張性を比べる。まず小さめで運用し、負荷に応じてサイズ変更する方法が安全です。
- テストして監視する。実運用前に負荷試験を行い、CloudWatchなどで実際の利用状況を確認します。
選択に迷ったら、まず汎用(M)から始めて、実績を元に最適化するとよいです。インスタンスは後から変更できますので、柔軟に試してみてください。
インスタンスの利用・運用方法
作成と起動
AWSマネジメントコンソールやCLIでインスタンスを作成します。インスタンスタイプ、台数、OS、ネットワーク(VPC・サブネット)、ストレージ、キーペア、セキュリティグループを指定します。例えばテスト環境なら小さめのタイプ、本番なら余裕のあるタイプを選びます。
スケーリング(増減管理)
負荷に応じて台数を自動で増減するオートスケーリングを設定できます。ロードバランサーと組み合わせ、CPUやリクエスト数のしきい値でスケールアウト/インします。これにより性能を保ちながら無駄なコストを減らします。
停止・終了とコスト管理
使わないインスタンスは停止または終了してコストを抑えます。停止中でもEBSの料金は発生するため、不要ならスナップショットを保存して終了する運用が有効です。定期的に未使用リソースを確認しましょう。
監視とログ
CloudWatchでCPU、メモリ(カスタム)、ディスク、ネットワークを監視します。アラームを設定して異常を早期検知します。ログはCloudWatch Logsや外部ログ集約サービスに送って分析します。
バックアップと復旧
重要なデータはEBSスナップショットやAMIで定期バックアップします。自動化スケジュールを組み、復旧手順を事前に検証しておくと安心です。
セキュリティとパッチ管理
セキュリティグループやIAMロールでアクセスを最小限にします。OSやソフトの更新は定期的に行い、AWS Systems Managerなどでパッチ適用を自動化すると効率的です。暗号化はKMSを使って保護します。
AWSインスタンス活用のポイント
適切なインスタンスタイプの選定
利用目的に合わせて選びます。例えば、軽いWebサイトなら汎用の小さめインスタンス(例:t系)でコストを抑えます。CPU負荷が高いバッチ処理なら計算最適化型(例:c系)を選びます。負荷の傾向を確認してから変更すると失敗が少ないです。
コスト最適化
まず必要な性能を測り、過剰なリソースを避けます。定常的に使うサーバーはリザーブドやSavings Plansで割引を受けます。短時間の処理はスポットインスタンスを使うと大幅に安くなります。
監視と自動化
CloudWatchなどでCPU・メモリ・ディスクの利用率を監視します。閾値を決めてアラートを出し、自動スケーリングで台数を増減させると無駄が減ります。
セキュリティとバックアップ
セキュリティグループでアクセスを制限し、IAMで権限を最小化します。定期的にOSやアプリを更新し、重要データはスナップショットやAMIでバックアップします。
運用の習慣
タグ管理で用途を明確にし、定期的にリソースの利用状況を見直します。テスト環境で変更を検証してから本番へ反映すると安全です。
第7章: まとめ
以下に、本書で扱ったポイントを分かりやすくまとめます。
要点の振り返り
- AWSインスタンス(EC2)はクラウド上の仮想サーバーで、手軽に起動・停止・削除できます。初期投資が不要で、必要に応じて拡張や縮小が可能です。
- インスタンスタイプは用途に応じて選びます。例えば、軽いWebサイトやテスト環境なら小さめのタイプ、データベースや解析ならメモリやCPUを重視するタイプが適します。
運用で大切なこと
- コストは利用状況に合わせて見直します。スポットやリザーブドなどの料金体系を理解すると節約できます。
- セキュリティ(アクセス管理や鍵の管理)、バックアップ(スナップショットや定期保存)、監視(ログやメトリクス)の三点は必ず整えます。
実践アドバイス
- 小さく始めて、使いながら調整してください。負荷が増えたら拡張、不要なら縮小してコスト最適化します。
- 自動化(起動・停止やスケーリング)と命名やタグ付けを活用すると運用が楽になります。
AWSインスタンスは柔軟で便利な技術です。基本を押さえ、少しずつ改善していけば、確実に役立てられます。












