AWS Direct Connect Gatewayで実現する最適なグローバル接続方法

目次

はじめに

目的

本書はAWS Direct Connect Gateway(以下DXGW)の理解と活用を支援するために作成しました。DXGWの基本、設計上の注意点、他サービスとの連携、運用課題や導入手順までを分かりやすくまとめます。

対象読者

クラウド利用を検討するネットワーク担当者、クラウド設計者、運用担当者を想定しています。基礎的なネットワークの知識があれば読み進められます。

DXGWを一言で説明すると

DXGWはオンプレミスとAWS間の専用回線接続を柔軟に管理するための仕組みです。例えば、1本の物理回線を通じて複数のAWSアカウントや複数リージョンに接続するような構成を簡潔に実現できます。

本書で扱う範囲

  • 機能と仕組みの解説(第2章)
  • 他のAWSサービスと組み合わせた設計例(第3章)
  • 運用上の注意点や最新の方向性(第4章)
  • 実際の導入フローと関連技術(第5章)

読み方の注意

DXGWは便利な反面、ルート数の上限など技術的制約があります。設計時に具体的な要件(接続先の数や冗長性、ルーティング方針)を確認してから読み進めると理解が深まります。

AWS Direct Connect Gatewayの基本とグローバル接続の仕組み

概要

AWS Direct Connect Gateway(DXGW)はグローバルなリソースで、あるリージョンに作成すると全リージョンで利用可能になります。オンプレミスとAWSを専用線のように接続し、複数リージョンや複数アカウントのVPCに到達できる点が特徴です。

主な構成要素

  • 仮想インターフェイス(VIF):物理回線上に作る論理回線です。Private VIFやTransit VIFで用途が異なります。例:オンプレミス→VPCはPrivate VIF。
  • Virtual Private Gateway(VGW)やTransit Gateway(TGW):VPC側の接続点です。DXGWはこれらと組み合わせて利用します。

グローバル接続の仕組み

DXGWは作成するとグローバルに存在し、オンプレミス側のVIFを1つのDXGWに接続します。DXGWにアタッチされたVGW/TGWを通じて、別リージョンや別アカウントのVPCへ経路を広げます。経路交換にはBGPを用います。

利点と制限

利点はAWSの公共ネットワークを経由して直接接続できるため遅延や帯域が安定する点です。制限としてDXGW単体ではVPC間の透過的な通信は行えません。また、ルートテーブルのエントリ数に制限(100ルート問題)があり、大規模環境では工夫が必要です。

設計上のポイント

  • ルート数が多い場合はルート集約やTGWの利用を検討します。TGWを介せばVPC間接続の設計が簡潔になります。
  • BGPのASNやプレフィックス設計を整理し、運用負荷を下げます。
  • 冗長回線と監視(CloudWatchなど)で可用性を高めます。

この章ではDXGWの基本と、実際の設計で注意すべき点をやさしく説明しました。

AWS Direct Connect Gatewayと他サービス連携によるネットワーク設計の最適化

概要

AWS Direct Connect Gateway(DXGW)は、Transit GatewayやCloud WANと組み合わせることで、オンプレミスとクラウドを一元的に設計できます。具体例として、東京リージョンのVPCと海外リージョンのVPC、さらに複数拠点のオンプレミスを一つのDXGWでつなぐ構成が挙げられます。

典型的な連携パターン

  • Transit Gateway連携:複数VPCとオンプレミスの経路をTransit Gatewayで集約します。Transit Gateway Connectを使うと、SD‑WANやサードパーティ製ルータを簡単に統合できます(例:各拠点のSD‑WANアプライアンスをConnectで接続)。
  • Cloud WAN連携:Cloud WANと直接結ぶと、リージョン横断のルーティングポリシーを単純化できます。ルート管理を集中化して運用負担を減らせます。

設計のポイント(実践的注意)

  • ルーティング設計:BGPのプレフィックス制限やルートフィルタリングで不要な経路を流さないようにします。プレフィックスの重複に注意してください。
  • セグメンテーション:業務別にTransit GatewayのルートテーブルやVPCのサブネットで分離します。必要ならアプリ単位で専用ルートを用意します。
  • 冗長性と帯域:複数のDX接続や異なるロケーションを用意し、フェイルオーバーを確保します。帯域要件はピーク時を想定して計画してください。

運用と監視

CloudWatchやVPC Flow Logsで接続状況を監視し、BGPの変化やスループットを早期に検知します。ルートの意図しない広がりはアラートで通知すると運用が楽になります。

セキュリティとコスト配慮

通信経路は必要最小限に限定し、アクセス制御を行います。コスト面ではデータ転送量とDXの課金単位を見て設計変更を検討してください。

AWS Direct Connect Gateway運用時の課題と最新の技術動向

課題:100ルート制限とその影響

AWS Direct Connect Gateway(DXGW)は1接続あたり最大100ルートという制限があり、大規模環境ではこれが通信障害のリスクになります。例えば複数拠点の個別プレフィックスをそのまま広告すると、ルート数が簡単に上限を超えます。

緩和手法(具体例を含む)

  • Transit Gateway Connectの活用:DXGWの前段でトラフィックを集約し、ルーティングを分散します。これにより各経路の負荷を低減できます。
  • BGP属性のカスタマイズ:ASパスやローカルプレファレンス、MEDを調整して経路選択を制御します。例えば特定経路の優先度を上げると、不要な経路広告を抑えられます。
  • ルートアグリゲーション:可能な範囲で細かいプレフィックスを広いプレフィックスにまとめます。例えば複数の/24を集約して扱える場合、ルート数を大幅に減らせます。

運用自動化とAIの応用

IaC(Terraform等)で設定をコード化し、ルートの変更を自動化します。監視ツールで突発的なルート増加を検知し、アラートを出す運用が有効です。AIは異常検知や最適化提案に役立ちますが、完全自動化は避け、人による確認を残すことが重要です。

ベストプラクティス

  • 事前にルート数を見積もり、集約方針を策定する
  • ステージング環境でルーティングの影響を検証する
  • 大規模環境ではTransit GatewayやCloud WANと連携してルーティングを分散する
  • 定期的な監査と運用手順のドキュメント化を行う

実際の導入フローと関連技術

導入前の確認事項

Direct Connectロケーションの選定、オンプレ側設備(ルーターや配線)、接続帯域や冗長構成を確認します。VIFは仮想インターフェイスで、プライベートVIFはVPC接続用、パブリックVIFはAWSのパブリックサービス接続用です。期待する可用性と費用を明確にします。

導入ステップ(現場での流れ)

  1. ロケーションと帯域を発注する。
  2. オンプレ側で回線終端とルーター設定を用意する。
  3. Direct Connect接続を作成し、VIFを申請する。
  4. BGPでピアリングを確立しルートを確認する。
  5. 回線冗長やフェイルオーバーを試験する。

VIF設定のポイント

プライベートVIFはVPCのルートを広告し、セキュリティグループやNATの設計に注意します。パブリックVIFはAWSのパブリックIP帯域へ経路を流すため、フィルタリングやアクセス制御を行います。

テストと運用引継ぎ

スループット、遅延、冗長切替を試験し、運用手順書と連絡フローを整備します。監視はCloudWatchやオンプレ側の監視を組み合わせます。

関連技術と選び方の目安

VPNはコストを抑えたい場合の代替、Transit GatewayやDirect Connect Gatewayは複数VPCやリージョンを接続する際に有効です。要件に合わせて簡単な比較で選定します。

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