はじめに
目的
この記事は、Webサイトの表示速度を正しく測定し、改善につなげるための基本を分かりやすく示すことを目的としています。専門的な知識がなくても理解できるよう、具体例を交えて説明します。
誰に向けて
- サイト運営者やコンテンツ担当者
- Web制作の初心者やフロントエンド技術者
- SEOやユーザー体験の向上に関心がある方
本記事で学べること
- 表示速度がなぜ重要か(ユーザー体験や検索順位への影響)
- 代表的な測定ツールと特徴
- 実際の測定方法と結果の見方
- 測定結果をもとに改善する基本的な手順
読み方のヒント
まず第2章で重要性を理解し、第3〜6章でツールや計測方法を試してください。最後に第7章で結果の活用法を学び、第8章で改善の流れを確認すると実践しやすくなります。
表示速度測定の重要性
表示速度がなぜ重要か
Webサイトの表示速度は、訪問者がページを使い続けるか離脱するかに直結します。読み込みが遅いと待ちたくない人が離れてしまい、ページビューや滞在時間が短くなります。検索エンジンも速度を評価項目に使うため、見落とすと流入が減る可能性があります。
ユーザー体験への影響(具体例)
たとえばECサイトでは、商品ページの表示に1〜2秒余分にかかると購入率が下がることがあります。ブログや情報サイトでも、初回表示が遅いと回遊が減り広告収入や読者獲得に悪影響が出ます。
ビジネス指標との関係
表示速度はコンバージョン、直帰率、ページあたりの収益などに影響します。速度改善の投資は、売上や顧客満足度の向上につながることが多いです。
定期的な測定の必要性
サイトは更新や外部サービスの変更で変化します。したがって、定期的に測定して問題を早めに発見し、改善を続けることが大切です。
測定で見るべきポイント(簡単に)
主要な目安としては、「初回表示の速さ」「ページの主要部分が表示される速さ」「レイアウトの安定性」などを押さえておくと良いです。専門用語は後の章で丁寧に説明します。
測定時の注意点
実際のユーザー環境は端末や回線で異なります。ラボ測定と実測の両方を使い分け、モバイルを含む複数の条件でチェックしてください。
主な表示速度測定ツール
以下では代表的な測定ツールを用途別に分かりやすく説明します。初心者から開発者まで使えるものを中心にまとめました。
PageSpeed Insights
Google提供の診断ツールです。ラボデータ(Lighthouse)と実測データ(実ユーザー)を示し、改善案を具体的に提示します。画像最適化やキャッシュ設定の指摘が多く、まず使うべきツールです。
Googleアナリティクス(サイト速度)
実際の訪問者から集めた読み込み時間を確認できます。ページごとの平均や地域別の傾向を把握するのに便利です。サンプリングが入る点に注意してください。
TestMySite
モバイル向けの簡易診断ツールです。スマホ表示の体感速度や改善提案がわかりやすく表示され、非技術者でも使いやすいです。
GTmetrix
詳細なウォーターフォールやリクエストごとの時間が見られます。複雑な解析や比較をしたいときに向いており、開発者に人気です。
Chromeデベロッパーツール
ブラウザ内で実測に近い計測とデバッグができます。ネットワークやパフォーマンスの解析、タイムライン確認が可能で、問題箇所を直接確認できます。
Lighthouse
Chromeに内蔵される監査ツールで、スコアと改善点を自動で出します。アクセシビリティやベストプラクティスも評価し、自動化に組み込みやすいです。
Pingdom Website Speed Test
簡単に速度やページサイズを確認できます。複数の測定地点から比較でき、手早く現状把握したいときに便利です。
各ツールは得意分野が異なります。目的(実測の把握、開発での詳細解析、非技術者向けの提案など)に合わせて使い分けると効果的です。
PageSpeed Insightsの使い方と特徴
使い方(初心者向けの手順)
- 分析したいページのURLを入力します。
- 「分析」ボタンを押すだけで、PCとモバイルそれぞれの結果が出ます。
- スコア、主要指標、改善案が順に表示されます。簡単な操作で結果が得られるため、初心者でも使いやすいです。
表示される内容と見方
- スコア:0〜100の点数で、目安として高いほど良いです。
- 主要指標(Core Web Vitals):代表的なものはLCP(最大表示コンテンツ)とCLS(視覚の安定性)です。例えばLCPは大きな画像やテキストが表示される速さを示します。
- Opportunities(改善案):読み込み時間を短縮できる具体的な提案が表示されます。画像の圧縮、不要なスクリプトの除去などが挙がります。
- Diagnostics(診断):詳細な技術的指摘が並びますが、初心者向けには改善案を優先して見てください。
特徴と注意点
- 特徴:URLを入れるだけで、短時間に視覚的で分かりやすい診断が得られます。
- 注意点:実際の表示「秒数」は必ずしも示されません。ラボデータ(ツールが再現した環境)とフィールドデータ(実際のユーザー計測)が混在するため、結果を鵜呑みにせず、実測と合わせて確認することをおすすめします。
実践的な活用例
- 改善案から優先度の高い項目(画像最適化やキャッシュ設定)を一つずつ実施します。
- 改善後に再度測定して、スコアや主要指標の変化を確認します。
Chromeデベロッパーツールによる実測
準備
- Chromeを開き、対象ページで右クリック→「検証」またはF12でデベロッパーツールを表示します。
- 「Network」タブを選びます。計測を正確にするために「Disable cache(キャッシュを無効にする)」にチェックを入れてください。
実測の手順(基本)
- ネットワーク速度を設定します。上部の「Online」などをクリックして「Fast 3G/Slow 3G」などのスロットルを選びます。
- ページをリロード(Ctrl+R/Cmd+R)します。Networkタブに読み込み中のファイル一覧とウォーターフォールが表示されます。
- 右上に表示される合計時間(秒)や各リソースの開始・終了タイミングを確認します。
重要な指標の見方
- Total/Finish(合計時間):ページ全体が読み込まれるまでの実測秒数です。
- TTFB(最初のバイト):サーバー応答の速さを示します。遅ければサーバー改善が必要です。
- DOMContentLoaded/Load:ページのインタラクティブ化や完全読み込みのタイミングです。
- ウォーターフォール:どのリソースがブロッキングしているか、実行順序や遅延を直感的に把握できます。
繰り返し測定のコツ
- プライベートウィンドウで測るとキャッシュの影響を減らせます。複数回リロードして平均を取ってください。
- CPUスロットリングで低速端末を模擬すると、実ユーザーの体感に近い結果が得られます。
HARファイル保存と共有
- 右クリック→「Save all as HAR with content」で保存できます。問題共有や詳細解析に便利です。
よく見つかるボトルネックと初歩的対策
- 大きな画像:サイズを圧縮・適切なフォーマットに変換。
- 同期スクリプト:async/deferを使う。
- 多数のリクエスト:まとめる、遅延読み込み(lazy load)を導入する。
この章では、デベロッパーツールでの実測に焦点を当てました。実際に手を動かして、どのリソースが遅いかを確認してください。
その他の測定ツール・ポイント
TestMySite(モバイル速度と業界比較)
TestMySiteはスマホでの速度に特化しています。結果はモバイルでの表示時間や業界別の平均と比べられるため、スマホユーザーが多いサイトの現状把握に向いています。具体例:ECサイトなら同業他社と比べて画像や遷移が遅くないかを確認できます。
GTmetrix・Pingdom(グローバル展開向け)
GTmetrixやPingdomは複数の計測地点やネットワーク条件を選べます。海外ユーザーが多い場合はテスト地点を現地に設定して測定してください。スコアだけでなく、読み込み順序やリクエスト数の確認が実務的に役立ちます。
Lighthouse・Chrome DevTools(技術的な深掘り)
LighthouseやDevToolsは詳細な技術分析に適します。例えば、初回表示までの遅延やレンダリングブロック要素を特定できます。開発者と改善策を共有するときに便利です。
測定時の実務ポイント
- 同じ条件で複数回測定する(回線・端末・キャッシュ)
- モバイル/デスクトップを意識して分ける
- 計測地点やネットワーク速度を実ユーザーに近づける
これらを使い分けると、現状把握から具体的な改善案作成まで効率よく進められます。
測定結果の見方と活用方法
測定結果で表示される主な項目
ツールは主に「スコア」「読み込み時間(例:LCPなど)」「改善推奨リスト」を出します。スコアは総合評価の目安で、読み込み時間は実際の体感に近い指標です。改善リストは優先度順になっていることが多く、具体的な対応策が書かれます。
スコアと時間の読み方(目安)
- スコア90以上:良好。微調整でさらに改善できます。
- スコア50〜89:改善の余地あり。画像やスクリプト周りを見直します。
- スコア50未満:優先的に対策が必要です。
LCP(大きなコンテンツの表示)は2.5秒以内が理想、4秒以上は遅いと判断します。
改善の優先順位の付け方
- ユーザー体感に直結する項目(LCPや初回表示)を先に対応します。
- 容量が大きい画像や不要な外部スクリプトを削減します。
- キャッシュやCDNの導入で安定した高速化を図ります。
よくある具体的対策(例)
- 画像は適切な形式で圧縮し、必要なら遅延読み込みを使います。
- JavaScriptは遅延実行(defer/async)や不要コードの削除で負荷を下げます。
- キャッシュ設定を強化し、CDNで配信を分散します。
再測定と運用での活用
変更を加えたら必ず再測定します。改善の効果を数値で比較し、優先度を見直してください。重要なページ(トップや商品ページ)を定期的にチェックして、施策を継続的に回すことが効果的です。
まとめ:測定から改善までのステップ
1)まず全体像を把握する
- PageSpeed InsightsやTestmysiteでサイトのスコアと主要な改善点を確認します。具体例:画像が重い、初回表示が遅い、レンダリングを阻むCSS/JS。
2)詳細を掘り下げる
- Chrome DevToolsやGtmetrixで実測データを取り、どのリソースが時間を取っているか特定します。例としてネットワークタブで大きな画像や長いリクエストを見つけます。
3)優先順位を決める
- 効果が大きく、実施が容易なものから着手します。典型例:画像圧縮→遅延読み込み→キャッシュ設定→不要なスクリプト削除。数値(改善予想)を基に判断します。
4)改善を実施して検証する
- 変更を行ったら必ず同じツールで再測定します。改善前後でのスコアや実測時間を比較し、効果を確認します。問題が出たらロールバックや段階的導入を行います。
5)定期的に測定・運用する
- 一度の改善で終わらせず、定期的にチェックします。更新や新機能の追加で速度に影響が出るため、運用基準とチェックリストを用意すると良いです。
実務では「測定→改善→検証→運用」を繰り返すことで、SEOとユーザー体験を着実に高められます。簡単な施策から着手し、継続的に改善してください。












