はじめに
本書は、Webサイト制作の基本から公開・運用までをわかりやすく解説するガイドです。企画、設計、デザイン、実装、公開、SEO、依頼時の注意点まで、初心者でも実践できる手順を順を追って説明します。
こんな方におすすめ
- これから自分でサイトを作りたい方
- 制作会社に依頼する前に流れを知りたい方
- 今のサイトを見直したい方
本書の構成(全10章)
- はじめに(本章)
- 全体像と基本ステップ
- 企画立案:目的・ゴール・ターゲット設定
- サイト設計:UX・コンテンツ・構造
- デザイン制作:コンセプトとビジュアル
- 実装・開発:コーディングとシステム
- サイト公開:サーバー・ドメイン・リリース
- SEO対策と集客のポイント
- 制作会社に依頼する際のポイント
- ノーコード・簡単作成サービス
使い方のコツ
まず全体をざっと読み、次に自分の目的に合う章を順に進めてください。各章の最後に実践できるチェックリストを用意しています。小さく試作して改善を重ねると失敗を減らせます。
最初に準備すること(簡単チェックリスト)
- 目的:何のためのサイトか明確にする
- ターゲット:誰に届けたいか具体的にする
- 参考サイト:好みのサイトを3つ選ぶ
- 素材:ロゴ、写真、テキストを集める
- 予算・スケジュール:現実的な計画を立てる
これらを準備すると、次の章からスムーズに進められます。
Webサイト制作の全体像と基本ステップ
全体像
Webサイト制作は「目的を決める」→「設計」→「デザイン」→「実装」→「テスト・公開」という流れで進みます。例えば、飲食店の予約サイトなら「来店数を増やす」が目的になり、各工程でその実現を目指します。
主要ステップと役割
- 企画立案:目的・ターゲット・必要な機能を決めます。例)メニュー表示、オンライン予約。
- サイト設計:ページ構成や導線を決めます。訪問者が迷わない流れを意識します。
- デザイン制作:色・写真・レイアウトでブランドを表現します。見やすさを優先します。
- 実装・開発:HTML/CSSや必要なシステムを組みます。スマホ対応は必須です。
- テスト・公開:表示や動作を確認して公開します。公開後も改善を続けます。
効率よく進めるコツ
小さく作って試す(プロトタイプ)ことが有効です。優先度の高い機能から着手し、段階的に改善してください。関係者との確認を短いサイクルで行うと手戻りが減ります。
企画立案:目的・ゴール・ターゲット設定
まずは「何のために作るか」を明確に
Webサイトは目的を決めることで設計が簡単になります。例:
– 商品を販売したい(ECサイト)
– 店舗の来店を増やしたい(地域集客)
– 情報を発信したい(ブログやコラム)
具体例を挙げると、手作り石鹸をネットで販売したいなら「注文数」を中心に考えます。地域のカフェなら「来店数」や「電話予約」が重要です。
ゴールは数値で決める
抽象的な目標ではなく、数値化しましょう。例:
– 月間問い合わせを10件に増やす
– 月間売上を20万円アップさせる
目標には期限も設定します。3ヶ月で達成するのか、1年で育てるのかで施策が変わります。
ターゲット(ペルソナ)を具体化する
年齢、性別、職業、趣味、課題などを想定します。たとえば:
– 30代女性、子育て中、自然派志向、週末にネットで買い物をする
このように描くと、文章の口調や写真、導線設計が決まりやすくなります。
競合調査・分析の進め方
同業他社のサイトを3〜5件見て、良い点と改善点を書き出します。料金表示、購入導線、FAQの有無、スマホ表示の見やすさをチェックしましょう。真似るだけでなく、差別化ポイント(価格以外の強み)を探します。
簡単なチェックリスト
- 目的を1行で書く
- ゴールを数値と期限で決める
- ペルソナを1人分作る
- 競合を3社調べてメモする
この章を終えると、次の設計作業がスムーズになります。
サイト設計:UX・コンテンツ・構造の最適化
概要
サイト設計は、ユーザーが迷わず目的を達成できるようにする作業です。ここでは、UX(使いやすさ)、見せるコンテンツ、ページの構造を具体化します。設計が良ければ制作や改善が楽になります。
UX(ユーザー体験)設計
- ユーザーフローを描く:最短で目的にたどり着く道筋を想定します。例:訪問→商品検索→詳細→購入。
- ペルソナ設定:代表的な利用者像を決め、その行動を基に設計します。
- モバイル優先:利用者の多くがスマホの場合、画面下部に主要操作を置くなど配慮します。
コンテンツ企画
- 必要なページ例:トップ、サービス(商品)、料金、会社情報、よくある質問、問い合わせ。
- 情報の優先順位:重要な情報を上位に配置し、CTA(問い合わせや購入)を目立たせます。
- 具体例:商品ページは写真・特徴・価格・行動誘導(購入ボタン)を明確にします。
サイト構造設計(サイトマップ)
- サイトマップを作成してページの関係を整理します。深すぎない階層にします。
- 内部リンク設計:関連ページを自然につなぎ、回遊を促します。パンくずやカテゴリ分けが有効です。
ワイヤーフレーム制作
- レイアウトの骨組みを描きます。ヘッダー、メイン、サイド、フッターの配置を決めます。
- CTAや重要情報の視線誘導を確認します。紙スケッチでも問題ありません。
システム設計
- 必要な機能を洗い出します(予約、決済、会員機能、投稿管理など)。
- 利用する仕組みを選ぶ:CMS、外部サービス連携、データの保存先を決定します。
- 運用面を考慮:管理画面の操作性、バックアップ、権限設定を設計します。
実行チェックリスト
- ユーザーフローを1つ作成する
- サイトマップを完成させる
- ワイヤーフレーム(主要ページ)を作る
- 必要なシステム機能をリスト化する
- モバイル表示を確認する
デザイン制作:コンセプト設計とビジュアル作成
デザインコンセプト設計
デザインは「何を伝えたいか」「誰に向けるか」を見た目で表す作業です。まずブランドカラー、トーン&マナー(やわらかい・信頼感のある・元気など)、フォントの方向性を決めます。たとえば医療系なら落ち着いた青と読みやすいゴシック系、子ども向けなら明るい色と丸みのあるフォントが合います。
必要素材の準備
画像、ロゴ、イラストを整理します。写真は高解像度で用途別に分け、代替テキスト(画像説明)を用意します。ロゴはSVGや透過PNGで保存し、使うサイズごとにバリエーションを用意すると制作がスムーズです。自作が難しい場合はストック素材や外注も検討します。
デザインカンプ制作(ワイヤー→ビジュアル)
ワイヤーフレームで構造を確定後、FigmaやAdobe XDでビジュアルカンプを作ります。トップ、下層、スマホ表示それぞれの画面を作り、ボタンや見出しのスタイルをコンポーネント化します。コンポーネント化すると修正が早く反映されます。
アクセシビリティとレスポンシブ対応
文字のコントラストやフォントサイズ、クリック領域に注意します。スマホでの見え方を常に確認し、画像の切り替えやレイアウト崩れを防ぎます。
開発への引き渡し
カンプに使用フォント、カラーコード、余白、ボタン挙動を明記し、画像は必要サイズで書き出して渡します。Figmaのプロトタイプや簡単な操作動画を添えると認識のズレを減らせます。
デザイン制作は伝えたい価値を形にする工程です。細かい仕様を揃え、早めに関係者と確認を重ねることで、実装時の手戻りを減らせます。
実装・開発:コーディングからシステム構築
フロントエンド実装
デザインを元にHTML、CSS、JavaScriptでページを組み立てます。まず構造をHTMLで作り、スタイルはCSS(レスポンシブはメディアクエリやフレックス・グリッドで対応)で整えます。動的な挙動はJavaScriptで実装します。例:フォーム送信のバリデーションやモーダル表示。作業効率はコンポーネント化やビルドツール(npmやBundler)で高めます。
バックエンド構築
サーバー側はデータ保存や認証、API提供を担当します。軽めのサイトなら静的生成や簡易バックエンドで十分です。会員機能やデータ連携が必要ならフレームワーク(例:ExpressやLaravel)でルーティングとDB接続を用意します。データベースは用途に合わせて選びます(例:MySQL、SQLiteなど)。
CMS導入と外部連携
運用を楽にするならCMSを導入します。WordPressは編集しやすく、ヘッドレスCMSはフロントと分離して柔軟に使えます。外部APIや決済、SNS連携は仕様を整理してから実装します。
テストと品質管理
動作チェック、ブラウザ確認、レスポンシブ確認を必ず行います。バグは早めに修正し、必要なら自動テスト(ユニット・E2E)を導入します。Gitでバージョン管理し、プルリクでレビューを行うと品質が安定します。
セキュリティと運用準備
SSL設定、入力のサニタイズ、認証強化など基礎対策を実施します。ステージング環境で最終確認し、本番移行の手順を文書化しておくと運用がスムーズです。
サイト公開:サーバー・ドメイン設定とリリース
ドメイン取得(URLを決める)
使いやすく覚えやすい名前を選びます。末尾は目的に合わせて(.com、.jpなど)。レジストラで取得し、プライバシー保護を設定すると安心です。
レンタルサーバー契約
共有・VPS・クラウドなどから選びます。考慮点は容量、表示速度、バックアップ、費用です。小規模なら共有サーバーで十分なことが多いです。
DNS設定と反映
取得したドメインのネームサーバーをサーバー側に向け、AレコードやCNAMEを設定します。反映には数時間〜48時間かかることがあります。
SSL(HTTPS)設定
Let’s Encrypt等で無料発行できます。管理画面のワンクリック設定や自動更新を使うと手間が減ります。
CMSインストールと初期設定
WordPress等はワンクリックインストールやFTPアップロードで導入します。管理者アカウント、パーマリンク、バックアッププラグインは必ず設定します。
ファイルアップロード・デプロイ
FTP/SFTPやGitで公開フォルダ(例:public_html)へ配置します。画像最適化やキャッシュ設定も行います。
公開前チェックとリリース後の運用
リンク切れ、フォーム送信、スマホ表示、表示速度を確認します。問題発生時のロールバック手順と定期バックアップ、アクセス解析(例:Google Search Console)を導入して運用を始めます。
SEO対策と集客のポイント
まず考えること
公開後は見つけてもらう工夫が大切です。検索で何を求めているかを想像し、対策を進めます。
キーワード設計(検索ニーズ分析)
・検索ワードは具体的に。例:「美容 ホームケア」「渋谷 ランチ 子連れ」
・検索意図を分類(情報収集・比較・購入)し、ページの目的を合わせます。
タイトル・説明文の最適化
・主要キーワードを自然に含める。見出しやmeta descriptionに入れると分かりやすく伝わります。
・説明文には要点と行動の呼びかけ(CTA)を入れます。例:「詳しくはページへ」
コンテンツ充実
・訪問者が知りたい情報を丁寧に書く。FAQや手順、事例を入れると信頼を得ます。
・定期的に更新して新情報やお知らせを追記します。
テクニカルSEO(表示速度・モバイル対応・内部リンク)
・画像は圧縮、不要なスクリプトを減らして表示速度を上げます。
・スマホでの表示を必ず確認します。
・関連ページを内部リンクでつなぎ、回遊を促します。
外部対策(SNS連携・Googleビジネスプロフィール)
・SNSは投稿で導線を作り、定期的に更新します。具体例:記事リンクと写真を週1回投稿。
・ローカルビジネスはGoogleビジネスプロフィールに登録し、営業時間や写真、レビューに返信します。
これらを組み合わせて、継続的に改善してください。
制作会社に依頼する際のポイント
はじめに
自分での制作が難しいとき、制作会社への依頼は有力な選択肢です。ここでは、失敗を防ぐための具体的な確認項目と進め方を紹介します。
制作会社の選び方
- 実績:似た業種や目的のサイト実績を確認します。具体例として、店舗サイトやECの制作経験があるか見ます。
- 得意分野:デザイン重視、集客(SEO)重視、システム開発など得意分野を照らし合わせます。
- 予算・納期:見積り内訳とスケジュールを早めに確認します。
ヒアリングと見積もり
- 要望は箇条書きでまとめ、目的と優先度を伝えます。例:集客が最優先かブランディングか。
- 複数社から見積もりを取り、内訳(デザイン・実装・保守)を比較します。説明が曖昧な箇所は必ず質問します。
進行管理と納品確認
- 納品物を契約書に明記します(デザインデータ・ソース・マニュアル・アカウント情報など)。
- 中間確認(ワイヤー→デザイン→実装)を設定し、小さな差異を早めに修正します。
- 検収時は動作、表示崩れ、リンク、SEOの基本設定をチェックします。
トラブル回避のポイント
- コミュニケーションは書面(メール)で残します。納期や追加費用のルールを契約に明記すると安心です。
これらを押さえれば、スムーズに依頼を進めやすくなります。
ノーコードツールや簡単作成サービス
概要
近年、コーディング不要でWebサイトを作れるノーコードツールや、テンプレートを使った簡単作成サービスが増えています。代表例としてStudio、 とりあえずHPのほか、WixやSquarespaceなどがあります。初心者でも短時間で公開できる点が魅力です。
主な特徴と具体例
- テンプレート利用:業種別のテンプレートを選び、写真と文章を差し替えるだけで形になります。たとえば飲食店用テンプレートにメニュー写真を入れて公開できます。
- ドラッグ&ドロップ:要素を画面上で動かして配置します。コードを書かずに見たまま編集できます。
- フォーム・決済連携:お問い合わせフォームや簡単なネットショップ機能を追加できます。
利用のメリット
- スピード:数時間〜数日で公開できます。
- 低コスト:初期費用を抑えられます。無料プランも多いです。
- 管理のしやすさ:更新が簡単で、非技術者でも運用できます。
注意点と限界
- カスタマイズの限界:細かいデザインや特殊な動作は難しい場合があります。
- SEOや高速化の最適化に制約があるツールもあります。
- 長期的な拡張性を考えると、将来的にコードベースへ移行が必要になることがあります。
選び方と活用のコツ
- 目的を明確にする(名刺代わり、店舗紹介、商品販売など)。
- テンプレートと機能を比較する(予約、決済、SNS連携)。
- 初期はシンプルに作り、反応を見ながら改善する。
ノーコードは、まず形を作って検証したい場合に特に有効です。必要に応じて制作会社や開発者と連携すると、段階的に機能を増やせます。