はじめに
概要
本ドキュメントは、Webサイト制作におけるフォント選択の最新トレンドや推奨フォント、フォント指定の方法、ファイルサイズや読み込み速度への配慮までをわかりやすくまとめたガイドです。日本語と英語の両方に対応し、2025年版のおすすめも紹介します。
本書の目的
読みやすく美しい表示を保ちながら、パフォーマンスも確保するフォント選びをサポートします。デザイン性と実装の両面から現場で使える実践的な知識を提供します。
対象読者
・Webデザイナー・フロントエンドエンジニア・コンテンツ制作者
・フォントや表示速度に関心のあるサイト運営者
初心者にも分かるように具体例を交えて解説します。
フォントが与える影響
フォントは文章の読みやすさだけでなく、ブランドの印象やアクセシビリティに直結します。適切な指定で表示の崩れを防ぎ、読み込みの工夫でユーザー体験を改善できます。
本書の構成(全8章)
- はじめに(本章)
- Webフォントの現在のトレンド
- 日本語フォント専用ランキングの特徴
- Google Fontsの推奨フォント群
- 英語フォントの多様な選択肢
- セリフ体フォントの役割
- 2025年の最新おすすめフォント
- font-familyの最適な指定方法
この章では全体の目的と構成を示しました。次章から具体的なフォント例や実装のコツを順に解説します。
Webフォントの現在のトレンド
はじめに
2023年のSTUDIOユーザーのフォントランキングを見ると、Webサイト制作で求められるものがはっきりします。総合ランキングでNoto Sans JPが1位、前年1位だったA1ゴシックは5位に下がりました。Top10にはNoto Sans JP、Roboto、Noto Serif JP、Montserrat、Interなど、国際対応しやすいフォントが並びます。
なぜ国際対応フォントが選ばれるのか
多言語コンテンツが増えたため、和文・欧文の調和がとれるフォントが重宝されます。可読性が高く、画面サイズや解像度に左右されにくい点も評価されます。さらに、Google Fontsなどで手軽に使え、ファイル管理がしやすい点も理由です。
用途別の使い分けの例
- 本文: Noto Sans JP(読みやすく安定感があります)
- 見出し: Noto Serif JPやMontserrat(アクセントをつけたい時に有効です)
- UI/操作系: InterやRoboto(小さな文字でも読みやすい)
- 多言語サイト: 日本語はNoto系、英語はRoboto/Interの組合せが自然です
実務で気をつけたいポイント
フォントファイルサイズは表示速度に直結します。必要なウェイトだけ読み込む、サブセットを使う、font-displayを活用して文字の表示ブロックを避けるなどの対策が有効です。事前接続(preconnect)で読み込みを早めると体感速度が改善します。
トレンドは「読みやすさ」と「多言語対応」が軸です。デザインの見た目だけでなく、実際の使い勝手と表示速度を両立させる選択が支持を集めています。
日本語フォント専用ランキングの特徴
専用ランキングの意義
日本語だけを対象にしたランキングは、文字の複雑さや読みやすさという点で有益です。欧文と比べて画数や文字幅の差が大きいため、本文用・見出し用・UI用といった用途ごとの適正が分かりやすく示されます。実際の表示で確認しやすい点も利点です。
上位ランクの動き
TypeSquareの最新ランキングでリュウミンが1位に躍進しました。前年はランク外だったため注目に値します。リュウミンは金属活字の流れを汲む書体で、彫刻刀のような線の冴えと角のやわらかさを併せ持ちます。読みやすく親しみのある雰囲気を作り、主に本文や長文の印刷物・ウェブ記事で力を発揮します。
2位・3位の特徴
A1ゴシック(2位)は画面表示での視認性を重視したゴシック体です。線幅が均一で目に入りやすく、UIや見出し、小さめの文字でも使いやすいです。ヒラギノ角ゴ(3位)は長年の定番で、信頼性と複数ウェイトの揃いが強みです。ブランドや企業サイトなど、統一感を求める場面で安定して選ばれます。
選び方のポイント
用途(本文・見出し・UI)、雰囲気(やわらか・硬質)、サイズやウェイト、表示速度やライセンスを基準にしてください。ランキングは参考情報ですので、実際に自分の画面で試して最終判断することをおすすめします。
Google Fontsの推奨フォント群
概要
Google Fontsは手軽に使える無料のフォントを多数提供します。日本語と英語でよく使う推奨フォントを挙げ、用途別に選び方と実装のポイントを解説します。
主なフォントと特徴
- Noto Sans JP
- サンセリフ体で、ひらがな・カタカナ・漢字に対応します。6種類のウェイト(太さ)を備え、見出しから本文まで幅広く使えます。
- Noto Serif JP
- 明朝系の読みやすい書体です。7種類のウェイトがあり、本文や長文コンテンツに向きます。読みやすさを重視するサイトに適します。
- Open Sans
- 英語圏で親しまれる中立的なサンセリフ体で、ウェブやモバイルに最適化されています。英語の本文やUIに合いやすいです。
選び方の目安
- 見出しはNoto Sans JPなどの太めのウェイト、本文はNoto Serif JPやNoto Sans JPの細めのウェイトを使うとバランスが良くなります。
- 英語主体の部分にはOpen Sansを組み合わせると視認性が安定します。
実装のポイント
- 読み込みは必要なウェイトだけに絞ると表示速度が改善します。
- CSSではfont-display: swapを指定すると、フォント読み込み中でもテキストが見えるようになります。
- 日本語はファイルサイズが大きくなりやすいので、必要に応じて代替フォントやシステムフォントの指定も考えてください。
英語フォントの多様な選択肢
はじめに
英語フォントは用途に応じて選べます。まずは「Webセーフフォント」と呼ばれる標準搭載のものを知ると便利です。読みやすさと速度を重視する場面で強みを発揮します。
Webセーフフォントの例と特徴
- Arial / Helvetica:汎用性が高く本文やUI向けに適します。
- Verdana:文字間が広く小さいサイズでも読みやすいです。
- Segoe UI:Windows系のUIで見慣れた印象を与えます。
- Trebuchet MS:やや個性があり、見出しやボタンに合います。
これらは多くの端末に標準搭載されるため、読み込みが速く安定します。
個性的なデザインにはWebフォントサービスを活用
より個性的な見た目が欲しい場合は、Google FontsやAdobe Fontsなどのサービスを使います。幅広い選択肢から好みの書体を選べますが、外部から読み込むため若干の遅延が生じます。したがって表示速度とデザインのバランスを考えます。
実用的な指定とフォールバック
font-familyではまず好みの英語フォントを指定し、最後に汎用ファミリー(serif, sans-serif)を置きます。例:font-family: ‘Helvetica’, ‘Arial’, sans-serif。狙ったデザインが使えない環境でも代替が効くようにします。
組み合わせのヒント
- 見出し:個性的なWebフォント、本文:Webセーフフォント
- 見出し:太めのサンセリフ、本文:読みやすいサンセリフ
用途と表示速度を意識して選ぶと、見た目と実用性を両立できます。
セリフ体フォントの役割
本文での利点
セリフ体は文字の端に小さな飾り(セリフ)があり、行の連続で視線を導くため本文の読みやすさが高まります。印刷物で長文を読む感覚がそのまま画面上にも伝わり、格式感や信頼感を与えます。
適した用途
ニュースサイト、企業のコーポレートページ、学術的なコラムや長文記事に向きます。見出しや短いメニューよりも、段落や注釈など本文領域で力を発揮します。
代表的なフォントと特徴
- Times New Roman:多くの環境で互換性が高く安定した選択です。
- Garamond:柔らかい線でエレガントな印象を与えます。
- Bodoni MT:モダンで高いコントラストがあり、格式感を強めます。
実装時のポイント
- フォントスタックを複数指定してフォールバックを用意します(例:’Garamond’, ‘Times New Roman’, Times, serif)。
- 行間(line-height)は1.4〜1.6を目安にして可読性を確保します。
- 小さいサイズ(特にスマホのUI)ではセリフが潰れて読みにくくなるため、サンセリフ体を併用すると効果的です。
注意点
商用利用時はライセンスを確認してください。Webフォントを読み込む場合はパフォーマンスに配慮し、必要なウェイトだけを用意してください。
2025年の最新おすすめフォント
概要
2025年に現役デザイナーが推奨する注目フォントは、Zen Old Mincho(明朝)とZen Kaku Gothic New(ゴシック)です。どちらもGoogle Fontsで入手でき、毛筆らしい表情や豊富なウェイトを備えます。やわらかい雰囲気のMoboや個性的なデラゴシックも用途に応じておすすめです。
各フォントの特徴と用途
-
Zen Old Mincho(明朝)
毛筆のような筆致があり、高級感ある見出しやブランディングに向きます。大きめサイズでの表示が美しく、掲示物や記事の主見出しに適します。 -
Zen Kaku Gothic New(ゴシック)
クセが少なく読みやすいゴシック体です。本文、UI、カード内テキストなど幅広く使えます。複数ウェイトが揃うため、階層付けがしやすいです。 -
Mobo(モボ)
丸みや柔らかさが強く、ファッションやライフスタイル系の見出しやキャプションに合います。 -
デラゴシック
個性的でアクセントに向きます。ロゴや短いキャッチコピーに使うと効果的です。
ペアリングの例
- 見出し:Zen Old Mincho / 本文:Zen Kaku Gothic New
- 見出し:Mobo(太) / 本文:Zen Kaku Gothic New(中)
- ロゴや強調:デラゴシックをワンポイントで使用
実装時のポイント
- 見出しは太め、本文は中くらいのウェイトを選ぶと視認性が上がります。
- 日本語フォントはファイルサイズが大きくなりやすいので、必要なウェイトだけ読み込みましょう。
- デザインで試しながら、文字サイズや行間(例:本文16pxで行間1.5)を調整してください。
最後に、気になる組み合わせは実際に試して印象を確かめると良いです。用途に合わせて柔軟に選んでください。
font-familyの最適な指定方法
以下では、実務ですぐ使えるfont-family指定のコツを、やさしく丁寧に説明します。
基本の考え方
font-familyは複数のフォントを順に並べることで、ユーザー環境に応じた表示を実現します。最後には必ず汎用のgeneric family(例:sans-serif、serif)を置いてください。スペースや特殊文字を含むフォント名は””で囲みます。
具体的な例と解説
例:
font-family: "Helvetica Neue", Arial, "Hiragino Kaku Gothic ProN", "Hiragino Sans", Meiryo, sans-serif;
上から順に適用され、最初に環境にあるフォントが使われます。英字中心のデザインでは”Helvetica Neue”やArialを上位に置き、日本語表示を重視する場合はHiraginoやMeiryoを前にします。こうすることで可読性とデザイン性を両立できます。
実務でのポイント
- 優先順は用途で決める(ブランド → システムフォント → 汎用)。
- フォント名は正確に書く。誤字があると次のフォントにフォールバックします。
- ウェブフォントを読み込む場合、読み込み失敗時のためにローカルの候補を先に置くことも検討してください。
よくある注意点
- 日本語と英語でフォントの印象が異なるため、見出しと本文で別スタックを用意すると調整しやすくなります。
- サイズや行間を調整して、フォントごとの見た目の差を補正してください。
以上を基に、用途に合わせたフォントスタックを作ると、どの環境でも安定した表示が得られます。












