はじめに
目的
この文書は、2025年にフィリピンの公務員に適用されるSalary Standardization Law VI(SSL VI)第2段階の給与改定の内容を分かりやすく説明します。昇給率や給与テーブルの例、手当・福利厚生、法的根拠、実施スケジュール、過去の昇給との比較、今後の見通しを扱います。
対象と範囲
対象は国家・地方の公務員を含む一般的な給与改定で、職位や等級ごとの具体例も示します。個別の職務評価や一時的な特例については本章では扱いません。
本書の読み方
章ごとにポイントを絞り、専門用語は最小限にして具体例で補足します。給与表の例は理解を助けるためのサンプルであり、実際の支給額は関連法令や通達を参照してください。
注意点
ここで示す情報は2025年のSSL VI第2段階に限定します。実際の運用や詳細な手続きは後の章で丁寧に解説します。
2025年フィリピン公務員給与改定の核心
昇給の対象と実施時期
2025年1月に約170万人の公務員がSalary Standardization Law VI(SSL VI)第2段階の昇給を受けます。対象は中央・地方を問わない一般の公務員です。施策は段階的に適用され、最初の改定がこの時期に行われます。
昇給率と具体例
平均の昇給率は4.2%~4.67%のレンジです。具体例を挙げると、教員(Teacher I、SG-11)は月給が28,512ペソから30,024ペソへ増え、約5.3%の上昇になります。看護師(Nurse I、SG-15)は月給が40,208ペソとなります。
手当の追加
年間で最大7,000ペソの医療手当が支給されます。ほかに制服手当なども含まれ、給与以外の補助が充実します。
目的と期待される効果
目的は民間セクターとの賃金差是正とインフレ対策です。昇給により生活の安定を図り、職員の士気向上や人材確保につながる見込みです。
注意点
昇給率は等級や職種で差が出ます。支給開始日や最終的な額は実施細則で確定するため、所属機関からの案内を確認してください。
法的根拠と実施体制
法的根拠
2025年の昇給はExecutive Order No. 64, s. 2024を根拠とします。実施細則はNational Budget Circular No. 597(中央省庁向け)とLocal Budget Circular No. 165(地方自治体向け)で示され、いずれも2025年1月1日施行、第二段階の月給表に従うと明記されています。具体的には適用開始日と新給与表の階級・等級が法律文書で確定しています。
実施主体と役割分担
中央政府では人事機関と財務当局が連携して適用基準と予算配分を決定します。National Budget Circular No. 597は中央省庁の手続きや報告方法を規定します。地方自治体についてはLocal Budget Circular No. 165が、地域ごとの予算措置や支給スケジュールを示します。各機関の人事部門は職員の等級確認と新給与の適用、財務部門は支払準備と会計処理を行います。
実施の流れ(概略)
1) 事前準備:職員の等級・勤務記録を確定します。例:等級誤りがないか確認します。
2) 予算措置:各機関が必要額を算出し予算に組み入れます。
3) 給与反映:給与システムに新表を登録し、翌月の給与から反映します。2025年1月1日付で適用開始です。
4) 報告・監査:各機関は所定の様式で報告し、監査で適正を確認します。
留意点と異議申し立て
支給漏れや等級の誤認があれば、まず所属機関の人事・財務に申し出てください。解決が難しい場合は上位主管部門に報告し、指示を仰ぎます。資金不足が予想される場合は、早めに予算調整を行う必要があります。
過去の昇給との違い
設計上の違い
SSL Vでは低等級(下位ランク)の職員に対して15%以上の大幅な基本給引き上げがあり、基本給そのものを引き上げることで格差是正を図りました。今回のSSL VIは、全体として基本給は小幅な改定にとどめ、手当(各種補助や職務手当に相当する支給)を拡充する方針です。一言で言えば、SSL Vは「基本給重視」、SSL VIは「手当を組み合わせた総合的な待遇改善」です。
対象別の影響
低等級の職員はSSL Vで大きな恩恵を受けましたが、SSL VIでは基本給の上昇幅が小さくなります。高等級の職員も同様に小幅な改定となりますが、手当の拡充で補える場合があります。たとえば、職務手当が増えれば月々の手取りや日常の生活費改善につながり、職務内容に応じた支援が強化されます。
実質的な待遇改善の仕組み
手当の拡充は、特定の業務に対する評価や生活支援を直接反映しやすい点が特徴です。基本給が抑えられても、通勤手当や専門手当などの充実で受け取る総額は改善する可能性があります。ただし、基本給と手当の構成比で待遇の持続性や年金・昇格時の計算に影響が出る点は留意が必要です。
実施スケジュール(段階的実施)
昇給は4年間で段階的に行われます。年ごとに上乗せを行い、急激な財政負担を避けつつ職員の収入を徐々に改善します。給与の変化は毎年の支給明細で確認でき、手当の種別や額も順次反映されます。
今後の展望
概要
今回の昇給は政府職員のモチベーション向上と人材確保を目的としています。今後も段階的な昇給が続く見通しで、賃金水準の底上げを通じて採用や定着率の改善を目指します。
重点となる課題
- 民間との賃金格差の是正:特に若年層や専門職で差が大きい点を重点的に改善します。たとえば、採用直後の初任給や技能手当の見直しが想定されます。
- インフレ対応:物価上昇に合わせた実質賃金の確保を重視します。物価変動を反映する仕組みの導入が検討されます。
段階的昇給の進め方
昇給は一度に大幅に行うのではなく、複数年に分けて段階的に実施する方式が想定されます。こうすることで財政負担を平準化しつつ、職員の期待に応えやすくなります。
期待される効果と留意点
期待される効果は採用競争力の向上と離職率の低下です。一方で、自治体や部門ごとの財政状況による実施差が出る可能性があります。各職員は自分の部署の方針やスケジュールを確認するとよいでしょう。
個人としてできる準備
- 給与以外の待遇やキャリアパスも含めて情報を集める
- スキルアップや資格取得で市場価値を高める
- 部署内の説明会や人事窓口を活用する
段階的な昇給は長期的な改善を目指す施策です。職員一人ひとりが情報を得て対応することが重要です。












