はじめに
この記事の目的
本記事はWebサイトにおける「サイト回遊率」について、初心者にも分かりやすく解説することを目的としています。回遊率の定義や計算方法、業界別の目安、改善のメリット、具体施策、分析時の注意点まで一通り扱います。
サイト回遊率が大切な理由
サイト回遊率はユーザーが複数ページを閲覧する割合を示します。ユーザーがサイト内をよく回るほど、導線設計やコンテンツの魅力が高まります。結果として滞在時間やコンバージョン(問い合わせや購入)にも良い影響を与える指標です。
本記事の構成と読み方
第2章で基本概念を説明し、第3章で計算方法と注意点を扱います。第4章は業界別の平均、第5章は回遊率向上のメリット、第6章は具体的施策、第7章は分析時の注意点と事例です。自サイトの課題に合わせて読み進めてください。
誰に向けているか
サイト運営者、マーケター、コンテンツ担当者、Web制作に関わる方に向けています。専門用語は最小限にして、実務で使える視点を重視して解説します。
サイト回遊率とは――基本概念と重要性
定義と見方
サイト回遊率とは、ユーザーが1回の訪問(セッション)で何ページ見たかを表す指標です。一般には「回遊率=ページビュー数(PV)÷セッション数」で計算します。数値が大きいほど、ユーザーがサイト内を多く閲覧したことを示します。
計算の簡単な例
たとえば1日のPVが320でセッションが100なら、回遊率は3.2です。平均して1人が3ページ以上見ていると分かります。具体的にはトップページ→カテゴリ→商品ページと進むような行動です。
回遊率が重要な理由
回遊率は導線の良さやコンテンツの魅力を測る手がかりになります。多くのページを見てもらえれば、商品やサービスの理解が深まり購入やお問い合わせといった成果(コンバージョン)に繋がりやすくなります。また、滞在時間の増加やページ間の移動が多いと、広告やレコメンドの効果も高まります。
高い回遊率・低い回遊率の意味
回遊率が高い場合は、サイト構成や導線が機能している可能性が高いです。一方で、必要な情報を探しにくくて無駄にページを移動しているケースもあり得ます。低い場合は目的のページにすぐ辿り着く設計か、逆に興味を失って離脱しているかのどちらかです。
注意点(指標の扱い方)
回遊率はあくまで平均値です。コンテンツの目的やページ構成によって良し悪しが変わります。ECサイトと情報サイトでは理想の回遊率が違いますから、目的に合わせて評価してください。
回遊率の計算方法と注意点
計算式と用語の意味
基本の計算式は次の通りです。
回遊率 = PV数 ÷ セッション数
- PV(ページビュー)数:サイト内で閲覧されたページの総数です。例えばユーザーが3ページ見ればPVは3増えます。
- セッション数:ユーザーがサイトに訪れた回数です。同じユーザーが短時間に複数ページを見れば1セッションと数えます。
具体例
ある日、PVが600、セッションが200なら回遊率は600 ÷ 200 = 3。平均して1セッションあたり3ページ見られていることを意味します。
別の計算式や関連指標
「回遊率」は実際は平均閲覧ページ数を表すため、表記はさまざまです。たとえば「ページ/訪問(Pages per Visit)」や「平均ページ/セッション」と同義で使います。分析ツールや目的によっては、直帰を除く計算やイベントを含める場合もあります。
解釈上の注意点
- 回遊率が高くても滞在時間が短ければ、ユーザーが必要な情報を探し回っている可能性があります。数字だけで判断せず、滞在時間や直帰率、コンバージョンも確認してください。
- ボットやスパムのアクセスでPVが増えると実態と乖離します。フィルタ設定を行いましょう。
- シングルページアプリ(SPA)ではページ遷移の計測方法が異なるため、正確なPV計測が必要です。
実務で確認するポイント
- 対象期間とサンプルサイズを明確にする
- フィルタや除外設定(内部流入やクローラー)を行う
- 回遊率はほかの指標と組み合わせて判断する(平均滞在時間、直帰率、コンバージョン)
これらを踏まえ、数値の意味を丁寧に読み解くことが重要です。
業界別の回遊率平均・目安
概要
回遊率の平均はサイトの目的や構造で大きく変わります。参考目安はECサイト:およそ9.00、ブログ:1.00〜1.45、企業コーポレート:5.00前後です。数値だけで判断せず、自サイトの目的やユーザー行動に合わせて目安を決めましょう。
主な業界の目安(例)
- ECサイト:7〜12
ユーザーは商品を探して複数ページを閲覧します。カテゴリー→商品詳細→カートの流れで回遊が増えます。 - ブログ・メディア:1.0〜1.6
記事を1本だけ読む訪問が多く、内部リンクや関連記事で回遊を促します。 - 企業コーポレート:3〜7
会社情報・サービス紹介・お問い合わせの順で遷移するため中程度です。 - ランディングページ(LP):1以下〜1.5
単一のコンバージョンに特化するため回遊は低めです。 - SaaS・B2B:4〜8
機能紹介や料金ページを比較するため複数ページを見ます。
数値の見方と注意点
- 同業他社との比較を基本にします。単独の数値は意味が薄いです。
- 流入経路で大きく変わるため、チャネル別に見ることを推奨します。
- モバイルは回遊が低い傾向があるため、デバイス別に目標を設定してください。
目標設定のコツ
- 現状の数値を把握し、業界平均と比較する。
- セグメントごと(新規/再訪、チャネル、デバイス)に目標を立てる。
- 小さな改善を積み重ね、数ヶ月単位で評価する。
回遊率向上のメリット
ユーザーエクスペリエンスの向上
回遊率が高いと、訪問者がサイト内の複数ページを自然に閲覧します。例えば、記事ページに関連コンテンツを置くと、読者が別の記事で疑問を解決し満足度が上がります。満足したユーザーは離脱しにくく、ブランドへの信頼も深まります。
コンバージョン率と収益の改善
回遊が増えると、購入や問い合わせにつながる接点が増えます。商品ページで関連商品やレビューを見せることで、購入数が増える例が多くあります。無料の資料ダウンロードや会員登録の案内を複数のページで見せると成約率が上がります。
検索順位(SEO)への好影響
検索エンジンは訪問者の行動を評価材料にします。サイト内で長く滞在し多くのページを回るサイトは「有益な情報がある」と判断されやすく、結果として検索順位が上がる可能性があります。内部リンクの整理もクロール効率を高めます。
リピート率と顧客生涯価値(LTV)の向上
回遊が習慣化すると、再訪問や定期利用につながります。役立つ記事や使い方ガイドを揃えれば、購入後のフォローもスムーズになり、長期的な収益につながります。
運用コストの削減と分析の精度向上
回遊率が高いと、どのコンテンツが効果的か見えやすくなります。効率の良いページに注力することで、広告費やコンテンツ制作費の無駄を減らせます。具体的には、人気導線を増やして広告流入の最適化ができます。
これらのメリットは互いに連動します。回遊率を高める施策は短期的な効果だけでなく、中長期での成果に繋がりやすい点が魅力です。
サイト回遊率を高める具体的施策
内部リンクの最適化
関連する記事やカテゴリへ自然につながるリンクを増やします。リンク文は具体的にして、読者が何を読むか分かるようにします(例:「初心者向けSEO対策」)。パンくずやサイドナビも設置すると回遊の導線が明確になります。
魅力的なコンテンツ作成
読者の疑問を解決する見出しと導入で引きつけます。箇条書きや図解で読みやすくし、最後に「関連記事へ誘導する導線」を入れます。定期的に更新して新鮮さを保つと回遊が続きます。
おすすめ記事・ランキング表示
サイドバーや記事下に「人気記事」「あなたにおすすめ」を表示します。短い説明文とサムネイルを付けるとクリック率が上がります。閲覧履歴やカテゴリに基づく表示で関連性を高めます。
UI/UXの改善
モバイル対応、読みやすいフォント、十分なボタンサイズ、余白の確保が大切です。ファーストビューで主要コンテンツや導線が見えると次の行動に移りやすくなります。
サイト内検索の充実
検索窓を目立つ位置に置き、サジェストや絞り込み機能を提供します。検索結果に関連記事やカテゴリリンクを表示すると回遊を促せます。
ページ読み込み速度の向上
画像の圧縮、遅延読み込み、不要なスクリプト削減、キャッシュ設定で速度を改善します。表示が速いと離脱が減り、複数ページの閲覧が増えます。
計測と改善サイクル
どの施策が効いているかは計測して確かめます。回遊に関する指標(ページ/セッション、直帰率、遷移経路)を定期的に確認し、A/Bテストで導線や文言を改善します。小さな改善を積み重ねることが成果につながります。
回遊率分析時の注意点と改善事例
回遊率だけで判断すると誤った改善を招く恐れがあります。ここでは注意点と、実践しやすい分析手順、短い改善事例を紹介します。
注意点
- 回遊が多くても滞在時間が短ければ迷走の可能性があります。必ず滞在時間や離脱率、コンバージョンと合わせて見ること。
- ユーザーの目的は異なります。問い合わせ目的の訪問と情報収集目的の訪問で回遊の意味が変わります。
- 流入元やデバイスで行動が変わります。セグメントごとに評価してください。
- 計測漏れやボットの影響で数値が歪む場合があります。タグやフィルタを点検しましょう。
分析の進め方(手順)
- 目標を定める(業種・ページ役割に合わせる)。
- 回遊率、滞在時間、直帰率、コンバージョンを組み合わせて評価する。
- セグメント(新規/既存、流入元、端末)で比較する。
- ヒートマップやユーザーテストで行動の質を確認する。
- 仮説を立てA/Bテストで効果を検証する。
改善事例(短例)
- ECサイト: 回遊は多いが購入率が低い→カテゴリ導線を整理し、関連商品のCTAを明確にして購入率が改善。
- メディア: 滞在が短いが複数ページ閲覧→記事冒頭に要点を置き、関連記事の配置を見直して滞在時間が伸びた。
- B2B: 問い合わせに至らない→CTAをページ上部に固定、フォームを簡素化し問い合わせ数が増加。
ただし、改善は仮説検証を必ず行い、数値とユーザーの声を両方確認してください。