はじめに
本資料の目的
本資料は、2025年版のECサイト向けCMS（コンテンツ・マネジメント・システム）について、基本から選び方までをわかりやすく整理したガイドです。これからECサイトを作る方、既存サイトの見直しを考えている方が、落ち着いて判断できるように作成しました。
読者想定
・自社でECサイトを立ち上げる責任者・企画者
・EC運営の現場担当者や制作パートナーを探している方
・技術的な専門知識が少ないが、仕組みを理解したい方
本資料で得られること
・EC向けCMSの種類と特徴がつかめます
・導入のメリット・注意点が整理できます
・主要サービスの比較や選定のポイントを具体的に学べます
読み方のポイント
章立てに沿って、まずは第2章でCMSの基本を把握してください。次に、自社の要件と照らし合わせることで、実務で使える知識が身につきます。図や具体例を交えて説明しますので、実務へすぐ活用できます。
ECサイト向けCMSとは何か
定義
ECサイト向けCMSとは、商品販売に必要な機能をあらかじめ備えたコンテンツ管理システムです。通常のホームページ作成機能に加え、ショッピングカート、決済連携、在庫管理、顧客管理といったEC特有の仕組みを標準で持ちます。
主な機能（具体例で説明）
- ショッピングカート：商品をまとめて購入できる仕組みです。購入手続きの流れを管理します。
- 決済連携：クレジットカードやコンビニ決済などとつなげる機能です。決済代行サービスと接続します。
- 在庫管理：売れた数を自動で引き、在庫切れを防ぎます。
- 顧客管理：購入履歴や会員情報を整理して、メール配信や分析に使えます。
型の違い（簡潔に）
- SaaS型：運営会社がサーバーも機能も用意します。導入が早く、保守を任せられます。設定だけで始めやすいのが特徴です。
- オープンソース型：ソフト自体は無償で、自由に改造できます。細かな独自仕様を実現したい場合に向きますが、技術力や保守の手間が必要です。
どんな事業者に向くか
小規模〜中規模で手早く始めたい場合はSaaS型、大規模や独自機能が多い場合はオープンソース型を検討します。具体例を念頭に、必要な機能と運用体制を照らして選ぶと良いです。
ECサイト向けCMSのメリットと選定ポイント
メリット
- 必要な機能が一式そろう：商品登録、在庫管理、価格設定、決済連携、クーポンやポイント管理、注文処理、分析機能など、EC運営に必要な作業をCMSでまとめて行えます。たとえば、新商品を一度登録すればカートや検索、メール配信に反映されます。
- 複数人での管理がしやすい：管理者やスタッフごとに権限を分けて作業できます。商品担当、受注担当、マーケ担当といった役割分担がしやすくなります。
- カスタマイズ性が高いサービスが多い：テンプレートやプラグイン、APIで外部システムと連携できます。ブランドに合わせたデザインや独自の機能追加が可能です。
- SaaS型なら運用負担が軽減される：サーバー管理やセキュリティ対応、定期的なアップデートを提供側が行うため、内製運用の負担が下がります。
選定ポイント
- サイト規模と成長性：商品点数や会員数に耐えられるか、将来の増加を見越して選びます。
- 業種適合性：BtoB、BtoC、会員制など業態に合う機能があるか確認します。
- カスタマイズ性：テンプレやコード編集、APIの有無。独自機能を入れたい場合は重要です。
- 提供機能の充実度：決済手段、送料ルール、キャンペーン管理、解析機能など、必要機能が揃っているか見ます。
- サポート体制：導入時の支援、障害対応、問い合わせ窓口の充実度を確認してください。
- 運用コスト：初期費用、月額費用、カスタマイズや保守の費用を総合的に比較します。
- 他システム連携・拡張性：会計ソフト、倉庫管理、マーケツールとの連携が可能かをチェックします。
選び方の実務的なコツ
- 要件をリスト化して、優先度を付ける。まずは必須機能だけを明確にします。
- 試用版やデモで操作感を確かめる。実際に登録や受注処理を試すと分かりやすいです。
- 将来の改修コストも見積もる。初期は安くても長期で高くつくことがあります。
主要なECサイト向けCMSサービスの特徴比較
ここでは主要なCMSを用途と強みで簡潔に比較します。導入規模や運用体制を想定して選ぶ際の参考にしてください。
EC-CUBE（オープンソース／クラウド）
- 対象: 中小〜大規模
- 強み: カスタマイズ性が高く国内の拡張が豊富。初期費用を抑えやすい。
- 留意点: 開発リソースが必要です。
ecbeing（パッケージ）
- 対象: 大規模
- 強み: 豊富な標準機能と運用支援。高トラフィックに強い。
- 留意点: 導入・維持のコストが高めです。
EC-ORANGE（パッケージ）
- 対象: BtoB／BtoC混在企業
- 強み: 受注管理や取引先対応が得意。業務流程に合わせやすい。
コマース21（パッケージ）
- 対象: セキュリティ重視の中〜大規模
- 強み: 高セキュリティと決済連携。規制業界にも向く。
commerce creator（SaaS）
- 対象: 中小〜中規模
- 強み: SaaSで導入が早い。運用負担が少ない。
- 留意点: 大幅なカスタマイズは難しい場合があります。
Shopify（SaaS）
- 対象: 小〜大（越境も）
- 強み: 世界的なエコシステム、豊富なアプリで機能拡張可能。多言語・多通貨対応がしやすい。
makeshop（SaaS）
- 対象: 国内向け中小
- 強み: 国内決済・販促連携が充実。初心者でも使いやすい。
Adobe Commerce（オープンソース／パッケージ）
- 対象: 大規模・グローバル
- 強み: 高度な拡張性とスケーラビリティ。複雑な要件に対応可能。
- 留意点: 導入・運用コストが高いです。
Wix、STORES（SaaS）
- 対象: 小規模・個人
- 強み: デザインテンプレートが豊富で簡単に始められる。コストも低め。
- 留意点: 高度なEC機能や大規模運用には不向きです。
選定時は規模・予算・カスタマイズ性・運用体制の4点を優先して比較してください。
各CMSの詳細・特徴
EC-CUBE
オープンソースで無料から使え、機能を自由に追加できます。コードを直接編集してデザインや注文処理を変えられるため、独自仕様のショップに向きます。例えば、複雑な送料体系や会員ランクでの割引を組み込みたい場合に適しています。導入は自社での技術対応が必要な場面が多いです。
ecbeing
大規模サイト向けの実績が豊富で、24時間サポートやマーケティング支援が充実します。トラフィックや受注が急増する店舗でも安定稼働しやすく、専任のサポート窓口を利用できます。予算に余裕があり、安全運用を重視する場合におすすめです。
EC-ORANGE
BtoBとBtoCの両方に対応し、ECと実店舗のPOSを連携できる点が大きな特徴です。卸売りや法人向け価格・掛け売りと、消費者向け販売を同じプラットフォームで運用したい事業者に向きます。業務フローを一本化したい場合に有効です。
commerce creator
SaaS型で導入と運用が簡単です。管理画面の操作が分かりやすく、UIカスタマイズ性も高めです。初期設定やバージョン管理をサービス側が行うため、社内に専門人材が少ない場合でも安心して運用できます。
Shopify
多言語・多通貨に対応し、越境ECに強みがあります。アプリやテンプレートが豊富で、必要な機能を追加しやすいです。小規模から大規模まで幅広く使われ、短期間でショップを立ち上げたい場合に適しています。
CMS選定時の注意点と最新トレンド
1) 事業モデルと成長フェーズを最優先に
CMSは機能よりも自社の売り方に合うかを優先してください。小規模で運用工数を抑えたい場合はSaaS型が合います。多店舗展開や独自機能が多い場合はオープンソースやパッケージ型が有利です。例えば、短期間で出店したい場合は設定だけで済むSaaSを選ぶと立ち上がりが早くなります。
2) カスタマイズ性と運用コストのバランス
自由度が高いほど開発・保守コストが増えます。必要な拡張だけに投資する目線で検討しましょう。テンプレートで対応できる部分は外部開発を減らす工夫が有効です。
3) セキュリティ・サポート・可用性
定期的なバックアップ、ログ管理、障害時の連絡体制は必須です。ベンダーのSLAやサポート窓口を確認してください。
4) データ移行とロックイン回避
将来の乗り換えを見据え、商品・注文・顧客データがエクスポートできるか確認します。ベンダー独自フォーマットだと移行コストが高くなります。
5) 技術リソースと運用体制
社内に開発者がいるか、外注で運用するかで適するCMSは変わります。運用マニュアルや管理画面の分かりやすさも判断材料です。
6) 統合要件と拡張性
決済・物流・CRM・マーケティングツールとの連携が必要です。APIやプラグインで簡単につなげられるかを確認してください。
7) 最新トレンド
- ヘッドレスコマース：フロント表示と管理を分け、表示の自由度が上がります。例えばスマホアプリと同時運用しやすくなります。
- ノーコード／ローコード：非エンジニアでもページ作成やキャンペーン展開が可能です。
- AI活用：レコメンドや画像タグ付けで運用効率が上がります。
- PWA・モバイル最適化：高速でアプリのような体験を提供します。
- APIファースト／コンポーザブル：必要な機能を組み合わせて柔軟に拡張できます。
選定は短期の要件だけでなく、将来の成長や運用負荷を見越して判断すると失敗が少なくなります。
まとめ・今後の選び方のポイント
ECサイト向けCMSを選ぶ際は、機能の充実度、カスタマイズ性、運用コスト、サポート体制、将来的な拡張性を総合的に見ることが大切です。以下の観点を順に確認すると判断しやすくなります。
-
機能の優先順位を明確にする
必須機能（商品管理、決済連携、在庫連携など）と将来必要になりそうな機能に分け、優先度を付けます。 -
カスタマイズ性と使いやすさ
デザインやフローをどこまで自社で変えられるかを確認します。テンプレートのみで運用するか、細かく改修するかで選び方が変わります。 -
コストの見積もり
導入費用だけでなくライセンス・運用・保守・人件費などの合計を比較してください。 -
サポートと導入実績
ベンダーの導入事例やサポート体制（導入支援、障害対応、ドキュメント）を確認します。第三者の評価も参考にしましょう。 -
将来の拡張性
トラフィック増加や多チャネル展開、外部システム連携がスムーズかを見ます。APIやプラグインの有無をチェックしてください。
実務での進め方（簡易フロー）
1. 要件定義（優先順位を決める）
2. 候補の絞り込みと見積取得
3. PoCやトライアルで操作性を確認
4. 最終比較と契約、移行計画の策定
チェックリスト（短縮版）
– 必須機能が満たされるか
– カスタマイズに無理がないか
– 総コストは許容範囲か
– ベンダーの信頼性は高いか
– 将来の拡張に対応できるか
事業成長を見据え、小さく始めて段階的に拡張する視点を持つと、導入後の負担を抑えつつ効果的に運用できます。導入前に実際の操作を試すことが成功の近道です。
