はじめに
目的
この文書は、CMS(コンテンツ管理システム)について幅広く理解していただくための入門ガイドです。CMSの種類や特徴を整理し、SEOに強い仕組み、用途別のおすすめ、調査方法、選定のポイントまでを表形式で分かりやすく説明します。
誰に向いているか
・これからWebサイトを作る個人や中小企業の担当者
・既存サイトのCMSを見直したい方
・SEOや運用負荷を考えて最適なCMSを選びたい方
本書で学べること
・主要なCMSの違いが分かります(例:ブログ向けのWordPress、EC向けのShopifyなど)
・SEO対策で重要な機能が分かります(メタ情報管理、URL構造など)
・用途別の使い分けと導入時の注意点が分かります
読み方のヒント
章ごとに表やチェックリストを用意しています。まず第2章でCMSの全体像をつかみ、第3〜5章で比較と具体的な調査方法を確認してください。最後の第6章で自社に合うCMSを見つける手順を身につけてください。
CMSとは何か ― 種類と特徴の一覧
CMS(コンテンツ管理システム)は、Webページやブログ、商品情報などを専門知識がなくても作成・編集・公開できる仕組みです。ここでは主要な種類と特徴を具体例を交えて分かりやすく説明します。
オープンソースCMS
無料で使え、利用者が多く情報が豊富です。カスタマイズ性に優れます。例えばWordPressはプラグインで機能追加しやすく、Drupalは複雑な構造のサイト向けです。予算を抑えつつ柔軟に作りたい場合に向いています。
商用CMS
企業がライセンスで提供し、導入支援や保守が充実しています。Adobe Experience ManagerやSitecoreなどがあり、大規模サイトや運用体制を整えたい企業に適します。
カスタムCMS
自社の要件に合わせて一から開発します。独自機能や業務フローに完全対応できますが、開発・保守のコストがかかります。
モノリシックCMS
管理画面と公開機能が一体になったタイプです。インストールしてすぐ使えるため、導入が簡単です。WordPressやWixが代表例です。
ヘッドレスCMS
コンテンツをAPIで提供し、表示部分は別で開発します。スマホアプリや複数チャネルで同じ情報を使う場合に便利です。ContentfulやStrapiが例です。
デザイナー向けCMS
コードを書かずにデザイン重視のサイトを作れます。Webflowなどがあり、デザイン性を優先する小規模サイトに向きます。
選ぶ目安として、目的(情報発信かECか)、予算、開発体制、将来の拡張性を考えると決めやすくなります。
SEOに強いCMSの比較表と必須機能
はじめに
SEOに強いCMSを選ぶと検索結果での見え方と集客力が変わります。本章では、実際に確認すべき必須機能と主要CMSの特徴を分かりやすく比較します。
必須機能チェックリスト
- メタタグの柔軟設定(タイトル・ディスクリプションを個別設定)
- URLの最適化(カスタムパーマリンクや日本語URL対応)
- レスポンシブ対応(スマホ表示の自動最適化)
- XMLサイトマップ自動生成・送信
- パンくずリスト生成(内部リンクの可視化)
- SSL対応(https化が簡単にできること)
- 画像のalt属性管理(SEOとアクセシビリティ向上)
- ページ速度最適化機能(キャッシュ・遅延読み込みなど)
- SEOプラグインや拡張機能の有無(例:WordPressのYoast)
主要CMSの簡易比較
- WordPress:拡張性が高くSEOプラグインが充実。中小〜個人ブログに最適です。
- Drupal:細かい権限や構造化データに強く、大規模サイト向けです。
- Joomla:中規模向けで標準機能が多め、柔軟に使えます。
- Adobe Experience Manager:企業向けで統合的な最適化が可能ですが導入コストが高いです。
導入時の実務ポイント
導入前に上のチェックリストで評価項目を点検してください。CMSによってはプラグインで補える項目もありますが、基本機能が整っているかを優先すると後の手戻りが少なくなります。
主要CMSの機能・特徴・用途別一覧表
以下は用途別に分けた代表的CMSの簡潔な一覧です。導入のきっかけや拡張性をわかりやすくまとめました。
多目的CMS
- WordPress
- 特徴:導入が簡単でプラグイン豊富。ブログから企業サイトまで対応。
- 用途:中小〜大規模サイト、ブログ、企業サイト。
- 拡張性:テーマ・プラグインで自由に拡張可能。
- Joomla
- 特徴:柔軟な権限管理、複雑な構成に強い。
- 用途:会員制サイトやコミュニティ。
- 拡張性:拡張機能多数。中〜上級者向け。
- Drupal
- 特徴:高いカスタマイズ性とセキュリティ。
- 用途:大規模・複雑なサイト。
- 拡張性:開発者向けの柔軟性が高い。
ドラッグ&ドロップ型
- Wix / Squarespace / HubSpot
- 特徴:視覚的に作れる。初心者に優しい。
- 用途:コーポレート、ランディングページ、小規模EC。
- 拡張性:テンプレ中心。カスタムは制限あり。
EC向けCMS
- Shopify / Adobe Commerce(旧Magento) / BigCommerce
- 特徴:決済や在庫管理が標準。EC構築に最適。
- 用途:オンラインショップ全般。
- 拡張性:アプリや拡張モジュールで機能追加可能。
ブログ特化
- Ghost
- 特徴:記事執筆に特化、表示速度が速い。
- 用途:個人ブログ、ニュースサイト。
- 拡張性:シンプルで必要最小限の機能。
ヘッドレスCMS
- Contentful / Prismic / Strapi / Sanity
- 特徴:コンテンツをAPIで配信。フロントは自由。
- 用途:マルチチャネル、SPA、モバイルアプリ。
- 拡張性:開発で自由度高。フロント実装が必要。
デザイナー向け
- Webflow / Craft CMS
- 特徴:デザイン重視、細かな見た目調整が可能。
- 用途:ブランディングサイト、ポートフォリオ。
- 拡張性:デザインは自由だが開発はやや必要。
その他・企業向け
- TYPO3 / Kentico / Concrete5
- 特徴:企業向けの多機能CMSやワークフロー機能。
- 用途:大企業のイントラ・公開サイト。
- 拡張性:企業要件に合わせて構築可能。
各CMSは目的や運用体制で選ぶと失敗が少ないです。導入前に運用者のスキルや将来の拡張計画を確認してください。
Webサイトで利用されているCMSの調査方法とキーワード一覧表
調査方法の概要
他社サイトのCMSを調べる方法は主に2つです。1) HTMLソースから手作業で特定する方法、2) ツール(ブラウザ拡張やオンラインサービス)で自動判別する方法です。どちらも自社サイトのCMS選定や競合分析に役立ちます。
1. ソースコードから特定する手順
- ブラウザで対象サイトを開き、右クリック→「ページのソースを表示」またはCtrl+UでHTMLを表示します。
- Ctrl+Fでキーワードを検索します。例えばWordPressなら「wp-content」「wp-admin」、Drupalなら「/sites/」などです。
- 発見できればCMSの特定につながります。見つからない場合はCDNやカスタム構成で隠れていることもあります。
2. ツールで自動判別する方法
- WappalyzerやBuiltWithなどのブラウザ拡張をインストールし、対象サイトを開いてアイコンをクリックします。
- OnlineのBuiltWithにURLを入れるだけでも技術スタックが表示されます。
注意点
- テーマやプラグイン名で誤判定することがあります。
- サイトが静的化やプロキシを使うと特定できない場合があります。
よく使われるCMSと検索キーワード例
- WordPress: wp-content, wp-admin, wp-includes
- Joomla: /components/, /templates/, JRoute
- Drupal: /sites/, /modules/, Drupal.settings
- Shopify: myshopify.com, /collections/, /products/
- EC-CUBE: eccube
- Magento: skin/frontend, js/mage
- Ghost: /ghost/, content/images
これらを組み合わせて調査すると効率よくCMSを特定できます。
CMS選定のポイントと失敗しない選び方
まず目的を定める
サイトの目的(情報発信、EC、会員サービスなど)と規模を明確にします。目的に合わないCMSを選ぶと運用が難しくなります。
必要機能をリスト化する
例:SEO設定、編集のしやすさ、メディア管理、マルチ言語、権限管理、バックアップ。優先度を高・中・低で分類してください。
運用担当者のスキルを考慮する
ノーコードで運用したいなら使いやすさ重視、カスタマイズを多く行うなら開発が必要なCMSを選びます。社内の技術力で判断してください。
コストとサポート
初期費用・ライセンス料・保守費用を見積もります。商用CMSはサポートが手厚い反面コストが高い傾向です。比較表で総費用を把握しましょう。
セキュリティとアップデート頻度
定期的に更新されるCMSを選びます。脆弱性対応が早いものは安心して運用できます。
デザイン自由度と拡張性
テンプレートだけで足りるか、独自設計が必要かを判断します。将来の機能追加を見越して拡張性を重視してください。
選定の手順(チェックリスト)
1) 目的・要件を確定 2) 候補を3〜5つに絞る 3) 機能・費用・導入事例を比較 4) 試用環境で操作性を確認 5) 最終評価と導入決定
失敗を避けるコツ
小さく始めて段階的に拡張することをおすすめします。導入前に必ず実際の運用者が試し、ベンダーの対応実績を確認してください。