はじめに
この記事の目的
本記事は、CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)とリバースプロキシの違いや役割をやさしく解説します。専門用語は最小限にし、具体例を交えて説明しますので、技術に詳しくない方でも理解しやすい構成にしています。
なぜ知っておくとよいか
Webサイトの表示速度や安定性、セキュリティはユーザー体験に直結します。CDNやリバースプロキシを適切に使うと、訪問者が快適にサイトを利用できるようになります。本記事を読めば、どちらを導入するべきか判断しやすくなります。
対象読者
- 自社サイトの速度や安全性を改善したい方
- サーバ管理は外注しているが仕組みは知りたい方
- サービス選定や設計に関わる初心者〜中級者
読み方のポイント
各章で目的と仕組み、導入時の注意点を順に説明します。まずは全体像をつかみ、必要な章を深く読んでください。
CDNとリバースプロキシの基本的な違い
概要
CDN(コンテンツ配信ネットワーク)は、世界中に分散したエッジサーバーを使って、ユーザーに近い場所から静的コンテンツや動画を配信します。リバースプロキシは、Webサーバーの代理として受け取ったリクエストをオリジンサーバーに渡し、応答を返す役目です。CDNはリバースプロキシの考え方を拡張したものと考えると分かりやすいです。
主な違い
- 配信範囲:リバースプロキシは通常データセンター内や企業の境界で稼働します。CDNは世界中に点在するエッジで配信します。
- キャッシュの目的:リバースプロキシは負荷分散やセキュリティのために使われますが、CDNは高速配信とキャッシュの最適化に特化します。
- スケール感:CDNは大量の同時アクセスや地理的に分散したユーザーに強いです。
共通する利点
両者ともキャッシュによる高速化、オリジンサーバーの負荷軽減、DDoS対策やアクセス制御といったメリットを提供します。たとえば、静的画像をCDNで配り、動的処理はリバースプロキシ経由でオリジンに送る使い方がよくあります。
どちらを選ぶかの目安(具体例)
- グローバルに動画や画像を高速配信したい:CDN
- 社内システムの負荷分散やセキュリティ強化:リバースプロキシ
用途に応じて併用することもよくあります。
CDNとリバースプロキシの仕組みと役割
リバースプロキシの仕組み
リバースプロキシはクライアントとWebサーバーの間に立ち、受け取ったリクエストを内部のサーバーに中継します。例えば、画像やページの一部をキャッシュして高速に返したり、複数のアプリサーバーへ負荷分散したりします。TLS終端を行って暗号処理を代行したり、WAFで攻撃を遮断したり、実際のサーバーIPを隠す用途でも使います。
CDNの仕組み
CDNは世界中のエッジサーバーにコンテンツを配備し、ユーザーに近い場所から配信します。通常は静的ファイル(画像、CSS、JS)をキャッシュし、オリジンサーバーへのアクセスを減らします。DNSやAnycastで最適なエッジに誘導し、キャッシュの更新(無効化)やTTLで管理します。
役割の違いと具体例
CDNはグローバルな高速化と負荷分散に強みがあります。遠方のユーザーにも速く届けたい静的資産に向きます。一方、リバースプロキシは細かなリクエスト制御や動的処理、認証・ルーティングの制御に適します。実例として、画像や配布用ファイルはCDNで配信し、APIや認証処理は社内のリバースプロキシで制御すると効果的です。
CDN・リバースプロキシの使い分けと併用例
使い分けの簡単な目安
CDNは画像・CSS・JavaScriptなど変更頻度の低い静的ファイルを世界中のエッジに置いて高速化します。リバースプロキシは、アクセス制御や認証、負荷分散、動的処理の前処理に適しています。まずは「頻繁に変わるか」「ユーザー固有か」で判断してください。
併用するメリット
CDNで静的部分を素早く配信し、リバースプロキシで動的処理やセキュリティを担います。結果として応答速度が上がり、オリジンサーバーの負荷が下がります。例として、画像はCDN、ログインやカート処理はリバースプロキシ経由でアプリに渡す運用が一般的です。
具体的な併用例
- Webサイト全体: /assets/ をCDNで配信、/api/ はリバースプロキシで受けて認証とルーティングを行う。
- ECサイト: 商品一覧ページはCDNでキャッシュ、カート・決済はリバースプロキシでキャッシュを無効にして直接処理する。
設定のポイント
- キャッシュ制御: Cache-ControlやCookieの有無で分けると運用が楽です。
- カスタムヘッダー: X-Forwarded-ForやX-Cacheなどで経路やキャッシュ状況を記録します。特に動的処理でユーザー判定が必要な場合、ヘッダーで情報を渡すと柔軟です。
- SSLと圧縮: TLS終端をCDNかリバースプロキシどちらで行うかを決め、GzipやBrotliはエッジで有効にすると転送量が減ります。
注意点
キャッシュ誤設定で古い情報を配るリスクがあります。まずはステージング環境でルールを試し、ログを確認してから本番に反映してください。
導入時の注意点・制限事項
はじめに
CDNやリバースプロキシ導入時は、小さな設定ミスが表示や動作不具合につながります。ここでは実務でよく起きる注意点を具体例つきで説明します。
パス転送と相対パスの扱い
- 問題例:サイトでCSSが「../css/style.css」のような相対パスを使うと、プロキシ経由で誤った場所を参照することがあります。ルート相対パス(/css/style.css)で運用するか、プロキシ側で完全なパスを転送する設定を推奨します。
カスタムドメインと証明書
- カスタムドメインを使う場合は、DNS設定とTLS証明書の紐付けを事前に確認してください。誤設定でブラウザがブロックするケースが多いです。
キャッシュと更新の注意
- キャッシュのTTLやバージョニングを設計してください。静的ファイルが古いまま配信されるトラブルを避けるには、ファイル名にハッシュを付ける等の運用が有効です。
セキュリティとヘッダー管理
- CORS、認証ヘッダー、Cookieの扱いを明確にしてください。プロキシがヘッダーを削除・書き換えると、ログインやAPI通信が失敗します。
動的コンテンツと接続方式
- WebSocketや長いポーリングはプロキシで特別対応が必要です。セッション維持やストリーミング動作を事前検証してください。
テスト項目(実務チェックリスト)
- ルート相対/相対パスでの表示確認
- カスタムドメインでのTLSとCORS検証
- キャッシュ無効化後の更新確認
- 認証・Cookieの送受信チェック
- WebSocketやAPIの疎通確認
運用前に上記をリスト化してテストを実施すれば、導入リスクを大幅に下げられます。
まとめ:CDNとリバースプロキシの選び方
概要
グローバル配信や静的ファイルの高速化にはCDNが向きます。一方、細かなリクエスト制御や動的コンテンツ処理、セキュリティ強化にはリバースプロキシが有効です。両者を組み合わせるとパフォーマンスと安全性を両立できます。
選び方チェックリスト
- 配信範囲:世界中のユーザーが多ければCDNを優先。
- コンテンツ種類:画像や動画、JS/CSSはCDNで効果が高い。APIやセッション管理はリバースプロキシ向き。
- セキュリティ要件:WAFや細かいアクセス制御が必要ならリバースプロキシを導入。
- 運用体制:キャッシュ運用や証明書管理に対応できるか確認。
典型的な構成例
- 小規模ブログ:CDNのみで高速化とコスト削減。
- 動的Webアプリ:リバースプロキシを起点に、CDNで静的を配信。
- 大規模サービス:CDNをエッジに置き、リバースプロキシで認証・ルーティング・監視を実行。
導入の実務ポイント
- キャッシュルールは段階的にテストして設定してください。
- キャッシュ無効化(パージ)の運用を整備してください。
- SSL設定やログ収集、監視を自動化すると運用が楽になります。
最終的には、サイトの規模と目的、運用体制を基に組み合わせを決めてください。丁寧に検討すれば、性能・拡張性・安全性を高められます。