はじめに
はじめに
AWS(Amazon Web Services)の従来の無料利用枠が2025年7月に終了し、新しい無料プランが導入されました。変更は多くの利用者に影響します。本記事は、その新制度をわかりやすく整理し、実務や学習に役立つ情報を提供することを目的としています。
目的
本ドキュメントは、新しい無料プランの概要、特徴、注意点、旧制度との違い、使い方、今後の対応策を一つずつ解説します。AWSを日常的に利用する方やこれから始める方に向けて、混乱を減らし適切に移行できるよう支援します。
対象読者
- クラウド初心者や学生
- 個人でサービスを運営している方
- スタートアップや小規模チーム
- 既存のAWS利用者で無料枠の影響を受ける方
本記事の読み方
各章は独立して読めますが、全体を通して読むと制度の全体像と実践的な対応がつかめます。まずは第2章で変更点の全体像を把握してください。
2025年7月、AWS無料枠の大幅刷新
概要
2025年7月15日以降、AWSは従来の「12ヶ月間無料枠」制度を終了し、新規アカウント向けに新しい無料プラン(クレジット制)を導入しました。これまではサービスごとに一定量が無料でしたが、新制度ではアカウント単位で使えるクレジットを付与し、プランを選んで利用します。最大で6ヶ月間、合計200ドル分のクレジットが提供されます。
変更のポイント(わかりやすく)
- 期間と上限:最大6ヶ月、最大200ドル分のクレジットでサービス利用が可能です。
- 方式の違い:従来は個々のサービスに「常時無料枠」がありましたが、新制度は“クレジットを消費する”形になります。
- プラン選択:利用者は提供されるプランから選んで開始します。プランによりクレジットの配分や期間に差が出ます。
誰に向くか
- 幅広いサービスを短期間で試したい方に向きます。少額の実験や学習に便利です。
- 一方で、長期間にわたり一定サービスだけを継続して使いたい場合は、注意が必要です。
簡単な対応策
- クレジット残高と使用状況を頻繁に確認してください。
- 実験は優先順位を決めて、クレジットを効率よく使うと安心です。
新しいAWS無料プランの特徴
概要
2025年7月から、従来の「サービスごとの個別無料枠」から「アカウント単位のクレジット制」へと変更されました。基本枠は200ドル分のクレジットを任意のサービスに使える方式です(一部サービスは対象外や制限があります)。
クレジット制の仕組み
- アカウントに付与されたクレジットをプールとして使います。個別の無料枠がなくなり、必要なサービスに自由に配分できます。例:EC2で大きめのサーバーを試したり、RDSでデータベースを動かしたりできます。
- 一部の高度なサービスやマーケットプレイスの製品はクレジット対象外となる場合があります。請求画面で対象か確認してください。
利用期間と自動閉鎖
- クレジットは最長6ヶ月間有効です。クレジットを使い切るか6ヶ月経過で無料プランは終了し、条件によりアカウントが自動で閉鎖されます。重要なデータは必ずバックアップしてください。
追加クレジットの獲得
- 公式のチュートリアル(5つのアクティビティ)を完了すると、最大100ドル分の追加クレジットが得られます。これにより合計で最大300ドル相当の利用が可能になるケースもあります。
常時無料枠の継続
- LambdaやS3など30以上のサービスは『常時無料枠』が残ります。期間制限はありませんが、月間の利用量や回数に上限があります。小規模な学習や静的サイトの運用なら問題なく使えることが多いです。
利用イメージ
- 学習やプロトタイプ:クレジットで短期間に集中して試せます。
- 事前準備:自動閉鎖に備えてデータのエクスポートや予算アラートを設定すると安心です。
新制度の注意点と制限
アカウント自動閉鎖と復元
無料プランのクレジットを使い切るか、開始から6ヶ月経過するとアカウントが自動で閉鎖されます。閉鎖後は90日間の猶予期間があり、その間に有料プランへアップグレードすればデータやリソースを復元できます。猶予期間を過ぎるとすべてのデータが削除され、復元不可になる点に注意してください。例:テスト用のVMやデータベースを放置すると復元できなくなります。
AWS Organizations参加時の注意
無料アカウントをOrganizationsに参加させると、自動的に有料プランに移行する場合があります。親アカウントの請求ポリシーによって従量課金が発生することがあるため、学習や検証目的で使う場合は事前に確認してください。対策としては、Organizationsに参加させないか、参加前に請求設定を明確にすることをおすすめします。
利用できないサービスの例
無料プランではAWS Marketplaceの有料製品、Reserved Instance(リザーブドインスタンス)など、一部のサービスやオプションが利用できません。これらを誤って契約すると課金が発生するため、サービスの説明をよく確認してください。
無料枠終了後の課金リスクと対策
無料枠が終了してもリソースをそのままにしておくと自動的に課金が始まることがあります。定期的に利用状況を確認し、不要なインスタンスは停止・削除してください。アラート設定や請求アラートを有効化すると、予期せぬ課金を早期に検知できます。
新しい無料プランの使い方
1) サインアップ時にプラン選択
新規でAWSアカウントを作成するとき、登録画面で「無料プラン」と「有料プラン」を選べます。無料プランを選ぶと、該当するサービスの利用が制限内で無料になります。たとえば試験的にウェブサイトを立ち上げたい場合は無料プランを選んで始めると良いです。
2) クレジット獲得の手順
AWSマネジメントコンソールの「AWSクレジットを獲得」メニューから、簡単なチュートリアルやクイズを実施します。手順は通常3〜5ステップで完了し、成功するとアカウントに追加クレジットが付与されます。例:チュートリアルで静的サイトをデプロイして報酬として数十ドル分のクレジットを受け取ることがあります。
3) 利用サービスの確認と管理
無料枠の対象サービスは公式ページで随時確認してください。使わないリソースは必ず停止・削除しましょう。具体例:
– EC2(仮想サーバー)はコンソールで「停止」または「終了(削除)」します。
– S3(ファイル保存)は不要なバケットを削除します。
– RDS(データベース)はスナップショットを保存後に削除できます。
不要なリソースを放置すると課金が発生する可能性があるため、定期的にコンソールで残高と稼働中リソースを確認することをおすすめします。
旧無料枠(12ヶ月間無料)との違い
概要
旧無料枠はサービスごとに決められたリソースを12ヶ月間無料で使えました。新無料プランは複数サービスを合算して、最大6ヶ月で総額200ドル分が目安です。
主な違いと日常での影響
- 無料期間
- 旧:12ヶ月間、対象サービスごとに無料枠あり。
- 新:最大6ヶ月。短期間で使い切る可能性があります。
- 上限
- 旧:サービスごとに上限が独立。
- 新:総額200ドルの共通枠。複数サービスを同時に使うと早く消費します。例えば仮想サーバーとデータベースを両方動かすと、短期間で上限に達します。
- プラン選択
- 旧:申請不要で自動で適用される場合が多かった。
- 新:無料プランを明示的に選ぶ必要があります。誤って有料プランを選ぶと費用が発生します。
- 終了後の対応
- 旧:自動的に有料プランへ移行するケースが一般的でした。
- 新:アカウントは一定の猶予期間後に自動閉鎖されます(90日間の猶予あり)。データの退避や請求設定の確認が必要です。
- 追加クレジット
- 旧:基本的になし。
- 新:チュートリアル達成などで追加クレジットが得られる仕組みがあります。
実務上の注意点
- 利用開始前にプランを必ず確認してください。無料枠がどのように消費されるかを把握すると安心です。
- データやスナップショットの自動削除に備え、定期的にバックアップを取ってください。
- 複数サービスを並行利用する場合は、総額200ドルの消費ペースを意識してください。
以上が旧無料枠との主な違いです。ご自身の利用パターンに合わせて準備を進めることをおすすめします。
今後のAWS利用へのアドバイス
ここでは、無料プラン刷新を踏まえて今後のAWS利用で気を付ける実践的なアドバイスをまとめます。短期検証・学習は無料プランで、長期・本番は有料プランの導入を基本にしてください。無料はコストを抑えられますが、継続的な負荷や可用性を求める場合は有料が安全です。
短期検証と本番の選択
– 検証や学習は別アカウント(サンドボックス)で行い、不要になったらリソースを削除します。短時間のみ稼働するスケジュールを設定すると無駄を防げます。
コスト管理の具体策
– 予算(Budgets)とアラームを設定し、費用の増加に即時対応します。リソースにタグを付けて誰が何を使っているか可視化してください。
Organizationsとクレジットの注意点
– 組織(Organizations)に参加すると請求の扱いが変わる場合があります。クレジット残高や課金アカウントを定期的に確認してください。
常時無料枠の活用と上限超過の注意
– S3やLambdaなど常時無料の枠は引き続き使えますが、使用量の上限を超えると課金されます。利用状況はダッシュボードでこまめに確認しましょう。
運用の基本ルール
– 未使用インスタンスの停止・削除、IAMの最小権限、定期的な見直しを習慣にしてください。月次で料金レポートを見て、必要ならインスタンスタイプ変更やSavings Planを検討します。
見直し頻度の目安
– 日次:重要なアラート確認、週次:利用傾向チェック、月次:コスト最適化と契約見直し。
これらを組み合わせることで、無料枠の恩恵を受けつつ予期せぬ課金を防げます。
参考:AWS無料枠の代表的サービス(常時無料)
AWS Lambda
短いプログラム(関数)をクラウド上で実行できます。例えば、フォーム送信時に画像を処理したり、APIのバックエンドとして使えます。無料枠は小規模なテストや学習に十分な範囲です。
Amazon S3
ファイルの保存に使います。静的なウェブサイトのホスティングや、ログ・バックアップ保存に便利です。アクセス頻度の低いファイルが中心なら無料枠でコストを抑えられます。
Amazon DynamoDB(25GBまで)
高性能なキー・バリュー型データベースです。ユーザー情報やセッション保存に向きます。無料枠は25GBまで利用できますので、小〜中規模アプリの試作に便利です。
Amazon CloudWatch
ログやメトリクスの収集・監視に使います。システム状態の確認やアラーム設定に役立ちます。無料枠で基本的な監視は行えます。
他の代表例
軽量なメール通知やメッセージ連携に使うSNS、API公開に使うAPI Gatewayなども無料枠対象サービスに含まれます。用途に合わせて組み合わせて使うと効率的です。