はじめに
「AWS Health Dashboardって何?」と疑問をお持ちではありませんか?
この記事では、AWS Health Dashboardの概要をわかりやすく解説します。サービスの稼働状況や障害情報をリアルタイムで確認でき、通知やAPI連携で自動化できる点を中心に説明します。
想定読者
- AWSの運用担当者やシステム管理者
- 障害検知の自動化を検討している開発者
- AWSの監視について基礎を知りたい方
この記事を読むとできるようになること
- AWS Health Dashboardが何に役立つか理解できます
- 通知設定や基本機能のイメージをつかめます
- 次の章で具体的な設定手順や料金、活用例に進めます
まずは全体像をつかみ、必要な章から読み進めてください。
AWS Health Dashboardとは
概要
AWS Health Dashboardは、AWSのサービス全体と自分のアカウントに関する稼働状況や障害、メンテナンス情報を一元で確認できるダッシュボードです。2020年12月に公開され、従来のService Health Dashboard(全体向け)とPersonal Health Dashboard(個別アカウント向け)が統合された形で提供されています。
なぜ必要か
クラウドで稼働するサービスは、時に障害や計画メンテナンスが発生します。AWS Health Dashboardを使うと、問題の影響範囲や発生時刻、推定復旧時間などを早く把握できます。これにより、復旧作業や影響範囲の連絡を迅速に行えます。
従来サービスとの違い
- Service Health Dashboard:全リージョン・全サービスの公開情報を表示します(他社や全ユーザー向けのステータス)。
- Personal Health Dashboard:自分のアカウントや利用中のリソースに直接関連するイベントを通知します。
統合により、全体の状況と自分の影響を切り替えて確認できます。
主な見方(簡単な例)
- 全体ビュー:特定リージョンで障害が起きているかを確認します。
- 自分のアカウントビュー:自分が使っているサービスだけの影響を表示します。
例えばEC2が使えない場合、全体で障害が出ているのか自分の設定の問題かを早く判断できます。
誰に向くか
運用担当者、開発者、事業責任者など、障害の影響を素早く把握して対応したい人に向きます。
主な機能
概要
AWS Health Dashboardは、AWSのサービスやリージョンで発生する問題や予定された変更を一元的に見られるサービスです。障害の有無や影響範囲を素早く把握できます。
リアルタイムでの障害確認
地域(リージョン)やサービスごとに発生中のイベントをリアルタイムで表示します。たとえば東京リージョンのEC2で影響が出ているかどうかをすぐ確認できます。
リソース別の影響表示
利用中のアカウントや個別のリソース(例:特定のインスタンスやRDS)に影響するイベントを絞って表示します。重要なリソースだけを監視できます。
イベントの種類
- オープンイシュー:現在進行中の問題
- スケジュールされた変更:メンテナンスや予定作業
- その他通知:セキュリティ情報やアカウントに関する通知
APIと自動連携
AWS Health APIでイベント情報を取得し、自動処理や外部ツールと連携できます。CloudWatch Events(EventBridge)やLambdaと組み合わせて通知や自動対応が可能です。
カスタム通知と自動対処の例
例:重要なインスタンスに影響が出たらSNSで通知し、Lambdaで指定の回復処理を実行する、といったワークフローを作れます。
利用時のポイント
通知は影響範囲やサービスでフィルターして設定するとノイズを減らせます。API連携で定型作業を自動化すると運用負荷が下がります。
メール通知の設定方法
概要
AWS Health Dashboardでは、障害や運用イベント発生時にメールで通知を受け取れます。重要なイベントを見逃さないため、通知先や条件をあらかじめ設定しておきます。
前提
- AWSアカウントと適切な権限があること(通知設定を変更できるIAM権限)。
- メール受信用にSNS(Simple Notification Service)を使う例が一般的です。
設定手順(簡潔)
- マネジメントコンソールで Health Dashboard を開き、通知設定へ移動します。
- 監視対象を選択(リージョン、サービス例:EC2やRDS、イベントの種類)。
- 通知先を指定:既存のSNSトピックを選ぶか、新規作成してメールアドレスを登録します。登録したメールには確認リンクが届くので承認してください。
- 必要に応じて、EventBridge(旧CloudWatch Events)でルールを作り、LambdaやSNS、SMSと連携します。例えば自動対応のLambdaを起動できます。
- テスト通知を送って受信を確認します。
運用のポイント
- 重要度(影響範囲や緊急度)でフィルタを作ると誤通知を減らせます。
- 複数の受信者やグループを設定し、オンコール担当にも届くようにします。
- 通知の内容や対応手順を運用ドキュメントに明記しておくと実務で役立ちます。
料金
AWS Health Dashboard自体は基本的に無料で利用できます。AWSのアカウントを持っていれば、サービスのステータスや自分のリソースに影響するイベントを確認できます。ただし、ダッシュボードと連携して使う他のAWSサービスには別途料金が発生する点にご注意ください。
発生し得る費用の例
- CloudWatch:メトリクスやログの保存、アラーム数に応じた課金が発生します。大量のログを長期間保持するとコストが増えます。
- SNS / メール・SMS:メール通知は安価ですが、SMSやモバイルプッシュは別料金です。
- Lambda:関数の実行時間とメモリ割当によって課金されます。頻繁なトリガーはコスト増の原因になります。
- EventBridge / API 呼び出し:イベントのルーティングやAPI利用による課金が発生する場合があります。
コストを抑えるポイント
- 通知は重大なイベントに絞る。テスト通知を減らす。
- ログの保存期間を短く設定し、必要な部分だけ保存する。
- SMSの代わりにメールやチャット連携を使う。
- Lambdaはメモリと実行時間を最適化する。
- 導入前にAWSの料金計算ツールで見積もりを取る。請求アラートを設定して監視する。
導入前にどの機能を使うかを明確にし、見積もりとモニタリングを行えば予期せぬ費用を抑えられます。
活用事例・メリット
1. リアルタイム監視で迅速な対応
AWS Health Dashboardはサービス障害情報をすばやく把握できます。たとえば、EC2やRDSに影響が出た際、運用チームが即座にSlackやメールで通知を受け取り、手順を開始できます。結果としてダウンタイムを短縮します。
2. メンテナンス計画の最適化
メンテナンス予定や過去の障害履歴を参照して、メンテナンス時間やデプロイのタイミングを調整できます。例えば、過去の停止が少ない時間帯に定期メンテを行うと、影響を減らせます。
3. 自動化による運用負荷の軽減
API連携で通知やリカバリを自動化できます。障害発生時にLambdaを起動してフェイルオーバーを実行したり、チケットを自動発行したりすることで人的ミスを減らせます。
4. 開発・運用への波及メリット
障害傾向を開発チームと共有すれば、設計改善やテスト強化につながります。SLA遵守や顧客対応の品質向上にも寄与します。
5. 導入時のポイント
通知ルールを絞り、重要度に応じた連絡経路を用意してください。誤通知を減らすことで、本当に必要な対応に集中できます。
使い方
はじめに
AWSアカウントでマネジメントコンソールにログインし、Health Dashboardを開きます。ここではアカウントに影響するイベント(Personal Health)と全体のサービス状況(Service Health)を確認できます。
コンソールでの基本操作
- ログイン後、検索バーで「Health」と入力してダッシュボードを開きます。
- サービス、リージョン、期間でフィルタを設定します。重要なイベントを絞り込めます。
- イベントを選ぶと、影響範囲や推奨される対処が表示されます。影響を受けるリソースのARNなども確認してください。
通知と自動化
- 定期的に確認する代わりに、EventBridge(旧CloudWatch Events)ルールを作成してイベントを検知します。
- ルールでSNS、Lambda、SQSなどに通知を送れば、メール配信や自動対応が可能です。
API連携
- プログラムから取得する場合はAWS Health APIを利用します。アカウントのサポートプランによって利用可否が異なるため、事前に確認してください。
実践例
- リージョン障害を検知したら、EventBridge→Lambdaで自動的に別リージョンへフェイルオーバーを試みる。軽微なイベントはSNSで担当者へ通知する、といった運用が可能です。
注意点
- Health情報へのアクセスには適切なIAMポリシーが必要です。
- 重要なイベントに備えて通知経路と担当者の対応フローを事前に決めておくことをおすすめします。
まとめ
AWS Health Dashboardは、AWSのサービス状態と自分のリソースへの影響を一元的に把握できる有用なツールです。障害やメンテナンス情報を早期に受け取れるため、復旧や影響最小化の対応を迅速に行えます。
主なポイント
- 全体状況とアカウント別の影響を同時に確認できます。
- メールやAPI連携で通知を自動化し、運用の負担を減らせます。
- イベントを受けて自動処理を組めば、対応時間を短縮できます。
導入時の簡単な手順(おすすめ)
- Personal Health Dashboardを有効化して基本情報を確認します。
- 通知(メールやSNS)を設定して、重要なイベントを見逃さないようにします。
- EventBridgeやCloudWatchと連携し、必要な自動化(スクリプト実行やチケット発行)を組みます。
- 運用手順(ランブック)を整備し、定期的に動作確認を行います。
最後に
AWS Health Dashboardは、障害対応のスピードと運用の信頼性を高めるための強力な支援ツールです。まずは通知と基本設定から始め、徐々に自動化や運用ルールを整えていくことをおすすめします。