はじめに
ブログの記事をどう書けばいいかわからない、というような疑問をもっていませんか？本ドキュメントは、AWSにおける「物理サーバ」の役割や仕組み、利用方法を分かりやすく解説することを目的としています。
なぜこのドキュメントが必要か
クラウドと聞くと「仮想サーバ」が思い浮かぶことが多いです。AWSでも多くは仮想環境ですが、物理サーバが関わる場面は残ります。本書では、物理サーバがどのように使われるか、どんな利点と注意点があるかを具体例を交えて説明します。
読者対象
- クラウド運用を始めたばかりの方
- システム設計で選択肢を検討している方
- オンプレミスとの違いを知りたい方
本ドキュメントの構成
第2章以降で、AWSと物理サーバの関係、物理サーバの定義、仮想サーバとの違い、利用方法、関連サービス、運用ポイントを順に解説します。章ごとに実例や注意点を載せますので、実務でそのまま使える知識が得られるはずです。
まずは全体像をつかんで、次章以降で詳しく見ていきましょう。
AWSと物理サーバの関係
概要
AWSは自社のデータセンターにある物理サーバを仮想化し、利用者に仮想サーバ（EC2インスタンス）として提供します。利用者は直接ハードウェアを操作せず、選んだCPUやメモリ、ディスクなどのリソースを使ってサーバを動かします。
物理サーバと仮想化の仕組み
AWSは物理サーバ上にハイパーバイザーなどの技術を使い、複数の仮想サーバを安全に分離して稼働させます。これにより一台の機械を多くのユーザーで効率よく共有できます。たとえば、一つのビルを複数の部屋に分けて別々の人に貸すイメージです。
例外：専有サーバとベアメタル
通常は共有ですが、専有サーバ（Dedicated Host）やベアメタルインスタンスのように物理リソースをより直接に使える仕組みもあります。これらはライセンスやコンプライアンス、特定の性能要件がある場合に利用されます。
いつ物理サーバを意識するか
多くの場合は仮想サーバだけで十分です。とはいえ、ハードウェア固有の要件やライセンス、最大性能を求めるときは専有やベアメタルを検討します。日常運用では、インスタンスタイプやストレージの選択が重要です。
物理サーバとは何か
定義
物理サーバは、CPU・メモリ・ストレージなどのハードウェアをひとつの筐体で備えた実体のあるコンピューターです。仮想化されておらず、サーバ上の全リソースを直接使える点が特徴です。
主な特徴と具体例
- リソースの専有：1台を丸ごと使えます。たとえば大規模データベースや高負荷のゲームサーバーで性能をフルに引き出せます。
- 高い性能と安定性：仮想レイヤーのオーバーヘッドがないため、遅延や性能変動が少ないです。金融取引やリアルタイム処理に向きます。
- 直接的なハードウェア管理：RAID構成や専用GPUの搭載、ファームウェアの細かい設定などを行えます。機械学習の学習用GPUを固定で使いたい場合に便利です。
- コスト：初期導入や保守、スペース・電力の費用が高くなりやすい点に注意してください。
どんな場面で使うか
専有性能が必要なシステム、ハードウェアに依存する workloads、コンプライアンスで物理的分離が求められる場合などに向きます。小規模なウェブサイトなどでは過剰になることが多いです。
仮想サーバとの違い
概要
AWSでよく使われる仮想サーバ（例：EC2インスタンス）は、1台の物理サーバをソフトウェアでいくつかに分けて使います。分ける役割をするソフトは「ハイパーバイザー」と呼ばれ、各利用者には独立した仮想マシンが渡されます。
リソースの扱い
物理サーバはCPUやメモリ、ディスクを丸ごと専有して使います。仮想サーバは同じ物理機のリソースを複数で共有し、必要に応じて割り当てを変えます。たとえば、短時間で台数を増やすオートスケールは仮想の得意分野です。
性能と安定性
物理サーバは他の利用者の影響を受けにくく、安定した高い性能が出ます。一方、仮想サーバは共有のため、極端に高いI/Oや遅延が求められる処理では物理が向きます。
管理とコスト
仮想は初期費用が低く、OSやソフトのインストール、複製が簡単です。物理はハード管理や設置が必要で、初期費用と手間がかかりますが、長期的には専有によるメリットがあります。
使い分けの目安
短期間で変化するサービスや開発環境には仮想サーバが向きます。高負荷のデータベースや専用ハードが必要な処理は物理サーバが適しています。
AWSにおける物理サーバの利用方法
専有ホストと専有インスタンスの違い
AWSでは物理サーバを1ユーザーに割り当てる方法が2種類あります。専有インスタンスは仮想化レイヤーで他ユーザーと分離します。専有ホストは物理サーバ単位で占有し、どのインスタンスがどの物理コアに割り当てられるか確認できます。例えば、ライセンス管理やコンプライアンス要件が厳しい場合は専有ホストが向きます。
利用の手順（簡単な流れ）
- EC2でインスタンス作成画面に進み、テナンシー（専有か共有か）を選びます。
- 必要なインスタンスタイプを選びます。これは物理リソースの構成（CPUやメモリ）を決めます。
- 専有ホストを使う場合はホストの配置と割り当てを行います。
- 起動後は通常のインスタンスと同様に設定やモニタリングを行います。
使いどころと注意点
- セキュリティやコンプライアンスで物理分離が必要なケースに有用です。
- コストは共有環境より高くなることが多いので、利用量と目的を見て判断してください。
- ハードウェアの故障対応や物理保守はAWSが行います。ユーザーは仮想化された環境の設定・運用に集中できます。
具体例
PCI対応の決済システムをクラウドで動かす場合、専有ホストにデータベースを置き、アプリは共有インスタンスでスケールする設計が考えられます。これにより重要データだけ物理的に分離できます。
物理サーバに関連するAWSサービス
概要
物理サーバを意識する場面で関係する代表的なサービスを、用途ごとにわかりやすく解説します。用途に合わせて使い分けると運用が楽になります。
Amazon EC2 Dedicated Hosts / Dedicated Instances
物理サーバ単位でインスタンスを割り当てる仕組みです。専有ホストを使うと、特定の物理サーバ上で自分だけの仮想マシンを動かせます。例としては、ライセンス条件やコンプライアンスで物理単位の隔離が求められる場合に有効です。
AWS Import/Export（物理ストレージからのデータ転送）
大容量データをネットワーク経由で送るのが現実的でない時に、物理ディスクやストレージアプライアンスを使ってデータを移します。たとえば、映像やアーカイブデータをテラバイト単位で移行するときに便利です。
Amazon S3（分散・冗長化されたオブジェクトストレージ）
S3は物理サーバを意識せずに大量のデータを安全に保存できます。データは自動で冗長化され、複数の物理デバイスや施設に分散されます。バックアップやアーカイブ、配信に向いています。
選び方の目安
- 物理単位の隔離やライセンスが必要：EC2 Dedicated Hosts
- 大容量データを持ち込む必要がある：AWS Import/Export
- 物理を気にせず冗長化・共有したい：Amazon S3
用途に応じてこれらを組み合わせると、物理サーバに関する課題を柔軟に解決できます。
物理サーバの運用で押さえておくべきポイント
1) 可用性と冗長化の設計
AWSではAZやロードバランサーで自動的に冗長化できますが、オンプレは自社で設計・実装します。重要なのは単一障害点（SPOF）を見つけて冗長構成にすることです。簡単な例として電源やネットワーク経路を二重化する方法があります。
2) 障害対応と監視
監視は早期発見の要です。CPU・ディスク・ネットワークといった基本指標に加え、アプリのヘルスチェックを設定します。障害時の手順（runbook）を作り、誰が何をするかを明確にしておきます。自動復旧が難しい場合は手順の訓練が重要です。
3) バックアップと復旧（RTO/RPO）
バックアップの頻度と保管場所を決め、定期的に復元テストを行います。復旧目標時間（RTO）と復旧目標時点（RPO）を現実的に設定してください。
4) キャパシティ管理とスケーリング
ピーク時の負荷を見越した余裕を持たせます。短期的には予備サーバやクラスタ化、長期的には増設計画を用意します。クラウドと併用するハイブリッド運用も選択肢です。
5) メンテナンスとライフサイクル管理
ファームウェアやOSの適用、ハード交換のスケジュールを決め、メンテナンスウィンドウを周知します。交換用パーツやサポート契約も確保しましょう。
6) セキュリティと物理管理
データセンターの入退室管理、ラックの物理施錠、ネットワーク分離を徹底します。ログとアクセス履歴を残して監査に備えます。
7) ドキュメント化と定期的な見直し
構成図、作業手順、連絡先を整備し定期的に更新します。障害対応訓練やDR演習を行い、改善点を反映してください。
これらを実践すると、オンプレでも可用性と運用品質を高められます。
まとめ
本記事では、AWSと物理サーバの関係や利用方法、運用のポイントを解説しました。結論として、AWSは多くの場合、物理サーバを仮想化して提供しますが、専有サーバや専有ホスト（ベアメタル）など、物理リソースを直接使える選択肢も用意しています。仮想サーバは柔軟で拡張しやすく、日常的な運用負担を減らします。一方で、専用ハードウェアやライセンス対応、低レイテンシを重視する場合は物理サーバが適しています。例えば、特定のCPU機能が必須のデータベースや、ソフトウェアライセンスが物理専有を求めるケースです。
導入時は、要件に応じて仮想と物理を使い分けることを勧めます。小さく始めて負荷やコストを見ながら拡張し、監視やバックアップ、インフラ自動化を取り入れて運用負担を下げてください。AWSのサービスを活用すれば、スケーラビリティや冗長性を高めつつ、物理サーバの利点も活かせます。最終的には、目的と制約を明確にして、最適な組み合わせを選ぶことが重要です。
