はじめに
「クラウドって聞くけれど、EC2って何?」と感じていませんか?本記事では、AWSが提供する仮想サーバーサービス、Amazon EC2の全体像をやさしく解説します。技術の専門家でなくても、概要をつかめるように書きました。
本記事の目的
EC2が何をするものか、AWS全体との違い、料金の種類、基本操作や管理方法、導入の利点まで幅広く紹介します。実務で使う前の基礎知識を身につけたい方に向けています。
対象読者
クラウド入門者、システム担当者、これからEC2導入を検討するマネージャー。IT用語に不安があっても読み進められるよう、専門語は最小限にし具体例で補います。
読み方のコツ
まず第2章でEC2の役割をつかみ、第6章で実際の操作を確認してください。章ごとに独立して読むこともできます。実践したい方は、手順を見ながら一緒に操作すると理解が深まります。
Amazon EC2とは
Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)とは、インターネット上で必要なときに仮想サーバーを立ち上げられるサービスです。物理サーバーを買って設置する手間が不要で、数分でサーバー環境を用意できます。
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仕組みのイメージ:自分専用のパソコン(サーバー)をクラウド上に作るようなものです。OSやCPU、メモリ、ディスク容量を選び、必要なソフトを入れて使います。
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よくある使い方:
- WebサイトやAPIの公開
- 社内向け業務アプリのホスティング
- 開発・検証環境の一時構築
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大量処理(バッチ)やデータ分析
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主な要素の説明:
・AMI:事前に用意されたOSや設定のひな型(例:UbuntuやWindowsのイメージ)
・インスタンスタイプ:CPUやメモリ構成の種類(軽量・高性能など)
・セキュリティグループ:外部からの接続を制御するファイアウォール設定
必要なときだけ起動して利用料を支払う仕組みなので、初めてのサーバー構築やスモールスタートにも向いています。
Amazon EC2の主な特徴
すぐにサーバーを立てられる
必要なときに数分で仮想サーバー(インスタンス)を起動できます。例えば実験や短期間のキャンペーンで、手早く環境を用意したいときに便利です。
スペック変更が簡単
CPUやメモリのサイズを用途に合わせて選べます。トラフィックが増えたら上位のスペックに切り替え、負荷が下がれば小さな構成に戻すといった運用が可能です。
ストレージの即時拡張
ディスク容量を増やすときも短時間で対応できます。データが増えた際にシステム停止を最小限にして拡張できます。
オンデマンドでコスト最適化
使うときだけ起動し、不要なときは停止・削除できます。短期的な利用や試作環境でコストを抑えやすいです。
どこからでもアクセスできる
インターネット経由で接続できるため、リモートワークや海外拠点との共同開発に向きます。SSHやリモートデスクトップで操作できます。
各特徴は組み合わせて使えます。たとえばアクセス増に合わせてスペックを上げ、終了後に削除してコストを抑えるといった柔軟な運用ができます。
AWS全体とEC2の違い
1) 全体像の違い
AWSはクラウド上の「総合ショッピングモール」のようなサービス群です。ストレージ(例:S3)、データベース(例:RDS)、ネットワーク、認証など、用途に応じて多彩なサービスを提供します。一方、EC2はその中の一つで、仮想サーバー(インスタンス)を貸し出す「店舗」に相当します。
2) 役割の違い(具体例で理解)
・ウェブサイトを動かすなら:EC2で自分のサーバーを用意して運用できます。簡単なブログならEC2で十分です。
・画像を保存するなら:S3を使うと運用が楽です。EC2上に保存すると運用負担が増えます。
・データベースはRDSなどの管理型サービスを使えば、自分でバックアップやパッチ適用を行う手間が減ります。
3) 運用と責任範囲の違い
EC2はOSやミドルウェアの設定・更新を自分で行います。柔軟性は高い反面、管理が必要です。逆に管理型サービスは運用負担をAWSに任せられますが、カスタマイズの自由度は制限されます。
4) 連携のイメージ
EC2はEBS(ブロックストレージ)、S3、ロードバランサー、Auto Scalingなどと組み合わせて使います。用途に合わせてEC2を核にするか、他の管理型サービスを使うか選ぶとよいです。
Amazon EC2の料金体系
概要
Amazon EC2は基本的に「使った分だけ払う」従量課金制です。短時間だけ試す場合や不定期な利用には向いています。一方で継続的に使う場合は割安になる選択肢もあります。
主な課金モデル
- オンデマンドインスタンス
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利用した時間(分・時間)に応じて支払います。初めての検証や利用が不安定なサービスに適します。例:週末だけ稼働する開発環境。
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リザーブドインスタンス
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1年・3年など期間を予約して割安に使えます。常時稼働する本番環境や長期プロジェクトに向きます。前払いオプションでさらに安くなる場合があります。
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スポットインスタンス
- 未使用の余剰リソースを割安で利用します。価格は変動し、AWS側で回収される可能性があるため、停止や中断に耐えられるバッチ処理や解析処理に適しています。
料金が変わる要因(具体例で説明)
- インスタンスタイプ:小さいCPU・メモリのものは安く、CPUやメモリを多く使うタイプは高くなります。例えば、簡単なウェブサーバーと大規模データ処理で差が出ます。
- リージョン:設置場所(リージョン)によって単価が変わります。国内リージョンと海外リージョンで差が出ることがあります。
- ストレージ容量:ディスク容量や性能(速さ)で料金が増えます。大量の保存が必要ならストレージ費用を確認してください。
- OSやライセンス:Windowsなどライセンスが必要なOSは追加料金が発生する場合があります。
コストを抑えるためのポイント
- 利用パターンに合わせて課金モデルを選ぶ(短期はオンデマンド、長期はリザーブド、柔軟なバッチはスポット)。
- 必要以上に大きなインスタンスを使わない。定期的に見直して適切なタイプに変更する。
- ストレージやリージョン選びも料金に影響するため、用途に合わせて最適化する。
以上の点を押さえると、無駄な費用を減らして効率的にEC2を利用できます。
Amazon EC2の使い方(基本操作)
簡単な流れ
Amazon EC2を使い始めるには、次の流れで操作します。初心者でも画面の案内に沿えば数分で完了します。
- AWSマネジメントコンソールにログイン
- AWSアカウントでログインします。アカウントがない場合は作成してください。
- EC2ダッシュボードで「インスタンスの作成」
- コンソールのEC2メニューから新しいインスタンスを立ち上げます。
- OS(AMI)やインスタンスタイプ、ストレージ、ネットワークを選択
- AMI例:Amazon Linux 2、Ubuntu
- インスタンスタイプ例:t2.micro(試験用や軽い負荷向け)
- ストレージは必要な容量を指定します。あとで拡張可能です。
- キーペアとセキュリティグループの設定
- キーペア(.pem)を作成してダウンロードします。SSH接続で必要です。
- セキュリティグループはファイアウォール設定です。SSH(22)やRDP(3389)、HTTP(80)など必要なポートだけ許可します。
- 起動・接続
- 数分でインスタンスが起動します。LinuxならSSH、WindowsならRDPで接続して利用開始します。
運用中の基本操作
- スペック変更:インスタンスを停止してインスタンスタイプを変更できます。ダウンタイムが発生します。
- ストレージ拡張:EBSボリュームは増やせます。OS側でパーティション拡張が必要になる場合があります。
- スナップショット:ディスクのバックアップを自動や手動で取得できます。復元や複製に便利です。
実用的な注意点
- キーペアは安全に保管してください。紛失するとSSH接続できなくなります。
- セキュリティグループは最小権限で設定します。不要なポートは閉じましょう。
- 使わないインスタンスは停止または終了して費用を抑えます。
これらの操作を覚えれば、EC2での基本的なサーバ運用を始められます。
EC2リソースの検索・管理
概要
AWSのResource Explorer(リソースエクスプローラー)を使うと、EC2インスタンスや関連リソースをキーワードやタグで横断的に検索・管理できます。コンソール画面の検索バーに「EC2」やインスタンスID、タグキーを入れるだけで、該当リソースが一覧表示されます。
使い方(基本)
- AWSコンソールの上部にある検索バーでキーワードを入力します(例:「EC2」「i-0a1b2c3d」)。
- 結果はリソースごとにグループ表示されます。インスタンス、ボリューム、セキュリティグループなどが横断的に見つかります。
- 左側や上部のフィルタでタグ、リージョン、リソースIDで絞り込みます。
フィルタの活用例
- タグ「Project:Alpha」で検索して、そのプロジェクトに関わる全リソースを確認。
- ステータスで「stopped」を絞り、停止中のインスタンスを一覧化。
出力と保存
検索結果はCSVでエクスポートできます。よく使う検索はクエリとして保存し、後で呼び出して共有できます。運用チームや報告資料に便利です。
管理上の注意
Resource Explorerはアカウントやリージョンの設定に依存します。事前にインデックス作成や権限(閲覧権限)が必要な場合があるため、運用前に設定を確認してください。例えば大量のリソースがある環境ではインデックス作成に時間がかかることがあります。
必要な操作を具体的に示したい場合は、どの環境(コンソール操作・CLI・組織横断)で知りたいか教えてください。
Amazon EC2導入のメリット
以下では、Amazon EC2を導入することで得られる主なメリットを、具体例を交えてわかりやすく説明します。
初期投資不要で即時導入可能
物理サーバーを購入したり設置したりする必要がありません。アカウントを作成して数分で仮想サーバーを起動できます。たとえば、新サービスを短期間で立ち上げたい場合、初期コストを抑えてすぐに始められます。
使った分だけ支払い、コスト最適化が可能
基本は従量課金で、使った分だけ支払います。長期間の利用が見込める場合は割引が受けられる「リザーブド(予約)」、一時的な処理や停止しても良い作業には非常に安価な「スポット」など、用途に応じて費用を下げられます。例えば、夜間のバッチ処理はスポットを使って安く済ませる、といった運用が可能です。
成長に合わせた柔軟なスケール
トラフィック増加時にサーバーを追加する水平スケールや、より大きなマシンに切り替える垂直スケールが簡単です。オートスケーリングを設定すれば、アクセス急増時に自動でリソースを増やし、閑散時に減らして無駄を省けます。例としてセール時のECサイトで有効です。
冗長化されたインフラで高可用性を確保
AWSは複数の物理拠点(リージョン・アベイラビリティゾーン)でサービスを提供します。サーバーやデータを別のゾーンに分けることで、障害発生時もサービスを継続しやすくなります。バックアップやスナップショットで復旧も容易です。
運用の効率化と迅速な検証
テンプレート化や自動化ツールを使えば、環境構築や再現が簡単です。新機能の検証やテスト環境を短時間で用意でき、運用負担を軽くします。
グローバル展開がしやすい
世界中のリージョンを利用して、ユーザーに近い拠点で低遅延にサービスを提供できます。海外展開を考える際の敷居が低くなります。
まとめ:Amazon EC2はクラウド活用の基盤
EC2の核心
Amazon EC2は、必要なときにサーバーを立てて止められる柔軟な基盤です。性能や台数をすぐに変えられるため、成長するサービスや変動する負荷に対応できます。料金は使った分だけ払う仕組みで、無駄を減らせます。
どんな場面で役立つか(具体例)
- ウェブサイト:アクセスが増えた時に瞬時に台数を増やして対応できます。
- バッチ処理:夜間だけ多くの計算を行う場合、必要な時にだけリソースを使えます。
- テスト環境:複数の環境を短期間で作って検証できます。
導入の第一歩とポイント
まずは無料枠や小さな構成で試してください。用途に合ったインスタンス(性能の選び方)と自動化(起動・停止、監視)を設定すると管理が楽になります。コスト削減は定期的な見直しで効果が出ます。
EC2はクラウド活用の出発点として分かりやすく有用です。まず手を動かして試すことをおすすめします。