はじめに
この記事の目的
本記事は「Web制作」と「Webデザイン」の違いをやさしく伝えることを目的としています。両者の業務範囲や求められるスキル、求人や将来性の違いを丁寧に解説し、仕事選びや学習の参考にしていただけるようにします。
対象となる方
・これからWebの仕事を始めたい方
・職種を変更しようと考えている方
・依頼先の選び方に迷っている個人・中小企業の方
本記事の読み方
全8章で構成し、順に読めば基礎から実務、選び方まで整理できます。まずは第1章で全体像をつかみ、続く章で具体的な違いや注意点を確認してください。
期待できること
この記事を読むと、Web制作とWebデザインの役割が明確になり、自分に合った学び方や仕事の選び方が見えてくるはずです。
Web制作とWebデザインの定義と違い
定義
- Web制作:サイトを企画から公開・運用まで完成させる一連の流れを指します。企画立案、要件整理、情報設計、デザイン、コーディング、システム開発、サーバ設定、公開後の運用や改善まで含みます。
- Webデザイン:サイトの見た目や使い勝手を設計する業務に特化します。見た目(ビジュアル)だけでなく、操作のしやすさや情報の伝わりやすさも重視します。
含まれる作業(具体例)
- Web制作の作業例:企画書作成、サイトマップ作成、要件定義、デザイナーとエンジニアの調整、コーディング、CMS導入、サーバ設定、SEO対策、公開後の更新・解析。
- Webデザインの作業例:ワイヤーフレーム作成(画面構成の設計)、デザインカンプ(見た目の完成イメージ)、ロゴやアイコン作成、配色やタイポグラフィの決定、ユーザビリティやアクセシビリティ配慮(例:文字色のコントラストや代替テキスト)。
役割の違い(誰が何をするか)
- Web制作担当者はプロジェクト全体を見ます。クライアントとの調整や進行管理、技術的要件の確認、公開後の運用計画まで担当することが多いです。
- Webデザイナーは画面に落とし込む専門家です。情報をどう見せるか、ユーザーが迷わず操作できるかを考えてデザインします。
実務での境界とよくある誤解
- 小規模案件では同じ人が両方を担当することが多いです。そのため区別が曖昧に感じられます。
- “デザインだけ”は見た目だけでなく、使い勝手も含む点に注意してください。デザイナーは見た目を作る際に動線や操作性も設計します。
業務範囲の違い
概要
Web制作は、サイトを形にして公開・運用するまでの工程を広くカバーします。企画・設計・制作・公開・運用まで一貫して関わることが多く、クライアント対応やスケジュール管理も含まれます。Webデザインは、サイトの見た目や使いやすさを設計する業務に重きがあります。デザインのみを担当する場合と、デザインからコーディングまで行う場合があります。
Web制作の主な業務範囲
- 企画・要件定義: 目的やターゲットを決め、サイト構成を作ります。
- ディレクション: スケジュール管理や外注調整、クライアントとの折衝を行います。
- 実装・開発: HTML/CSS/JavaScript、CMS導入、サーバー設定などを行います。
- 公開・運用: ドメイン・ホスティング設定、バックアップ、分析(アクセス解析)や保守対応まで含みます。
Webデザインの主な業務範囲
- 要件に合わせたビジュアル設計: レイアウト、配色、タイポグラフィ、アイコンなどを決めます。
- ワイヤーフレーム・モックアップ作成: ページの設計図や完成イメージを用意します。
- プロトタイピングとユーザビリティ検証: 操作感を確認します。
- コーディングを行う場合: HTML/CSSを使って実際の見た目を作ることもあります。
重なる部分と分担の例
- 小規模案件では、一人の担当者が企画から公開まで行うことがあります。
- 大規模案件では、ディレクター、デザイナー、エンジニアに明確に役割を分けます。
成果物の具体例
- Web制作: サイト構成書、CMS構築、公開されたサイト、運用マニュアル
- Webデザイン: ワイヤー、デザインカンプ、スタイルガイド、操作プロトタイプ
以上を踏まえ、どこまで対応するかを事前に確認すると、担当範囲のズレを防げます。
必要なスキルと経験の違い
Web制作に必要なスキル
Web制作はサイトを動かす・公開するまでの技術が中心です。HTML/CSSでのマークアップ、JavaScriptでの動的処理、サーバー側の言語(PHPなど)やCMS(例:WordPress)の扱いが求められます。PhotoshopやIllustratorで画像を加工し、FigmaやXDで設計書を共有する力も必要です。さらにGitによるバージョン管理やサーバー設定、SEO・アクセシビリティの基本知識、クライアントと調整するコミュニケーション力やスケジュール管理も重要です。実務では問題解決力と冷静な優先順位付けが役立ちます。
Webデザインに必要なスキル
Webデザインは見た目と使いやすさを作る役割が中心です。Photoshop、Illustrator、XD、Figma、場合によってはCanvaなどのツール操作が主になります。UI/UXの考え方やユーザーの行動を想像して設計する力、ワイヤーフレームやプロトタイプ作成、説得力ある提案書作りが求められます。コーディングは必須ではないことが多いですが、HTML/CSSの基礎があるとデザイナーと制作側の橋渡しができます。
共通して求められる経験・姿勢
どちらも実務経験や成果を示すポートフォリオが重視されます。チームでのやり取り、クライアントワークでの調整経験、納期を守る習慣が評価されます。ユーザー視点を忘れず、改善サイクルを回す姿勢が大切です。
学習とキャリアの進め方(実践例)
最初は小さなサイトや模写制作で手を動かしてください。制作寄りを目指すならサーバーやCMSの案件を経験し、デザイン寄りならUI設計やプロトタイプ制作の実績を増やします。フリーランスならコミュニケーションと見積り経験を磨くと独立がスムーズです。
求人・案件・将来性の違い
求人の傾向
- Web制作: 求人が多く、企業や制作会社、フリーランス案件とも豊富です。サイトの設計から公開まで任せられる人材が重宝されます。具体例: コーポレートサイト、ECサイト、ランディングページの制作。
- Webデザイン: デザイン専門の募集が中心です。UIデザインやバナーデザインなどの案件が多い一方、デザインのみの求人は数が限られることがあります。
案件の種類と単価
- 制作業務は要件定義から実装まで幅広く、単価は比較的安定します。複数工程を担当できれば単価が上がります。
- デザイン案件は短期の依頼や部分的な発注が多く、単価は幅があります。コーディングや運用提案ができると評価が高くなります。
求められる人材像
- 制作: 技術と進行管理の両方が求められます。スキルの幅があるほど仕事を得やすいです。
- デザイン: 視覚表現力とユーザー理解が重要です。ただし、デザインだけでは仕事の幅が狭まることがあります。
将来性と安定性
- 全体的に制作領域の需要は高く、将来性は見込めます。テンプレートやノーコードの普及でデザインのみでは競争が増えるため、コーディングやマーケティング知識を持つと有利です。
キャリア形成のポイント
- デザイン志向の方は、ポートフォリオに実装例や運用改善の成果を入れてください。制作志向の方はプロジェクト管理やフルスタックに挑戦すると安定感が増します。
Webデザインとグラフィックデザインの違い
媒体の違い
Webデザインはインターネット上で表示されるデザインを指します。ブラウザやスマホ画面で見られるため、表示サイズや環境が変わります。グラフィックデザインは紙や看板、パンフレットなどの印刷物が中心です。媒体ごとに考えるべき点が変わります。
表現と制約
Webは動きやクリックといったインタラクションを使えます。アニメーションやホバーで情報を段階的に提示できます。紙は触れないので、一度に伝える視覚情報で完結させます。レスポンシブ対応や読み込み速度といった技術的制約がWebにはあります。
色と解像度
WebはRGB、画面解像度に依存します。印刷はCMYKと高解像度が求められ、色味が変わる点に注意が必要です。実物の色確認(色校正)がよく行われます。
制作の流れとファイル形式
Webはモックアップ→コーディング→テストという流れが多く、画像はPNG/JPEG/SVGで扱います。印刷はデザイン完成後に入稿データ(PDFやai)を作り、印刷所の指定に合わせます。
求められるスキル
WebはHTML/CSSの理解やUI/UX配慮、基本的な軽量化の知識が役立ちます。グラフィックは組版や紙面構成、印刷知識が重要です。どちらもデザインの基礎は共通ですが、用途に合わせた技術を身につける必要があります。
具体的な違い(例)
・サイトのファーストビューはスクロールや動きで印象を作ります。\n・ポスターは一目で伝えるレイアウトと色で勝負します。
読者や使われ方を想像して、どちらの手法が目的に合うかを選ぶと良いです。
外注・職種選びのポイント
概要
目的や予算、制作範囲によって、適切な依頼先は変わります。全体を任せたいならWeb制作会社、見た目やブランドを重視するならWebデザイナー、個別の機能や開発はフロント/バックエンドの制作者に依頼するのが一般的です。
依頼先ごとの特徴
- Web制作会社: 企画から公開、保守まで一括で対応します。複数の担当者がいるため工程が分かれ、スケジュール管理がしやすいです。大規模や社内調整が必要な案件向きです。
- Webデザイナー: デザインやブランド表現に強みがあります。見た目やユーザー体験を重視する場合に適しています。コーディングまで含むかは確認が必要です。
- フリーランス制作者: 比較的低コストで柔軟に対応します。小〜中規模の案件や短納期の修正に向きます。個人差があるため実績とコミュニケーション力をよく確認してください。
選ぶときのチェックポイント
- 目的と優先順位を明確にする(集客、ブランド、運用のしやすさなど)。
- 予算と納期を伝えて現実的な見積りをもらう。
- 実績(似た業種の事例)とポートフォリオを確認する。
- 担当範囲と納品物を契約書で明確にする(デザインデータ、コーディング、保守の有無、著作権)。
- 更新方法と保守体制を確認する(CMS導入の有無や費用)。
発注時の具体的な依頼例
- 「商品の紹介と問い合わせを増やしたい。2か月で公開、CMSで更新したい」→ 制作会社またはCMSに詳しい制作者へ。
- 「ブランドイメージを一新して見た目を重視したい」→ Webデザイナーへ。デザインカンプ提出の有無を確認してください。
依頼先ごとの得意分野を見極め、目的・予算・運用を基準に選ぶと成功確率が高まります。
まとめ:どちらを選ぶべきか?
以下は、目的別に「Web制作」と「Webデザイン」のどちらを選ぶかをわかりやすく整理したものです。
方針の簡単な目安
- サイト全体の設計、開発、公開後の運用まで任せたい場合は「Web制作」を選びます。例:ECサイトの立ち上げ、システム連携が必要なサイト。
- サイトの見た目やブランドイメージ、ユーザーに与える印象を高めたい場合は「Webデザイン」を選びます。例:コーポレートサイトのリニューアル、キャンペーンページのビジュアル改善。
決めるときに見るポイント
- 目的:集客・販売重視なら制作、見た目重視ならデザイン。
- 予算と期間:短期間で安く済ませたいときは制作会社にテンプレート対応を依頼する方法もあります。
- 維持管理:運用まで任せたいなら制作を中心に、デザインは外注や内部担当と分担します。
おすすめの選び方
- 小規模でとにかく公開したい:制作(テンプレート+必要開発)
- 企業の印象を高めたい:デザイン重視(ビジュアル強化)
- 両方重要なら:制作チームとデザイナーを協働させると効果的です。
どちらもWeb制作には欠かせない役割です。目的を明確にして、適切に選択・分担してください。