はじめに
このドキュメントの目的
本ドキュメントは、初心者から中級者のWeb担当者やマーケター、事業者向けに、Webサイト解析の基礎から実践的な応用までをわかりやすく解説することを目的としています。サイト改善や集客、SEO対策に直結する知識を体系的に整理してお伝えします。
なぜWebサイト解析が必要か
Webサイト解析を行うと、ユーザーの行動やサイトの問題点が明確になります。データに基づいて改善を行えば、コンバージョンや滞在時間の向上、無駄な広告費の削減につながります。感覚や思い込みではなく、事実をもとに施策を進められる点が最大の利点です。
誰に向いているか
- 初めて解析を触るWeb担当者
- データを活かして集客や成約率を上げたいマーケター
- 自社サイトの改善に取り組む中小事業者
いずれの方にも、専門用語をなるべく避け、具体例を交えて説明します。
本書の構成と使い方
全6章で、基本手法、見るべき指標、代表的なツール、実践のポイントまで順を追って学べます。まずは第2章で解析の基本手法を確認し、指標やツールを実際の運用に結びつけてください。この記事を読めば、解析の全体像をつかみ、次の一手を見つけやすくなるはずです。
Webサイト解析の基本手法
定量分析（数値で見る）
アクセス数、ページビュー、直帰率、コンバージョン率など、数値データを使って現状を把握します。例えば「トップページの直帰率が高い」と分かれば、導線や表示内容に問題がある可能性を疑えます。アクセス解析ツールを使い、期間やデバイス別に比較すると傾向が見えやすいです。
定性分析（行動の背景を読む）
数値だけでは分からないユーザーの意図や不満を探ります。ヒートマップで注目される箇所を確認し、セッション録画で実際の操作を観察します。簡単なアンケートを出して「なぜ離脱したか」を尋ねると理由が分かる場合があります。
両者を組み合わせる流れ
- 目的設定：改善したい指標を決めます（例：コンバージョン率アップ）。
- 定量で候補抽出：数値から問題ページやユーザー層を絞ります。
- 定性で深掘り：録画やアンケートで原因を推測します。
- 仮説立案と検証：改善案をA/Bテストで確かめます。
実践上の注意点
データは期間やサンプル数に注意して解釈してください。短期間だと偏りが出ます。まずは小さな仮説を立てて、段階的に改善を進めると成果が出やすいです。
解析で見るべき重要指標
Webサイト解析で注目すべき主要指標を、具体例をまじえてわかりやすく解説します。これらを比較して課題や改善点を見つけましょう。
ユーザー数とセッション数
ユーザー数はサイトを訪れた人の数、セッション数は訪問の回数です。例：ユーザー1,000人でセッション2,000回なら、1人あたりの訪問回数が多いと判断できます。リピート率や滞在時間と合わせて見ます。
ページビュー（PV）
PVは閲覧されたページの合計数です。1ページあたりのPVが高いとコンテンツが読まれている可能性がありますが、目的のページに到達しているかも確認します。
直帰率
直帰率は最初のページだけ見て離脱した割合です。例えばランディングページの直帰率が高ければ、導線や訴求が合っていない可能性があります。ボタン位置や見出しを改善して様子を見ます。
コンバージョン率（CVR）
CVRは目標達成（購入や問い合わせなど）の割合です。全体CVRのほか、流入別やデバイス別に比較すると改善ポイントが見つかります。
流入経路
オーガニック検索、広告、SNS、メールなどのチャネルごとにユーザーの質が変わります。広告は流入が早くてもCVRが低いことがあるため、費用対効果を比べます。
ランディングページ
どのページで訪問が始まるかを確認します。LPごとの直帰率やCVRを比較し、改善すべきページを特定します。
検索キーワード
ユーザーの検索意図を示します。ブランド名中心なら認知層、一般キーワードなら興味・購買意向が高い可能性があります。コンテンツを意図に合わせて最適化します。
主なWebサイト解析ツール
概要
Webサイト解析は大きく「アクセス解析ツール」と「キーワード分析ツール」に分かれます。目的に合わせて使い分けると効率よく改善できます。
アクセス解析ツール
- Google Analytics（GA4）: ページごとの閲覧数、流入経路、ユーザー属性やコンバージョンを測れます。無料で導入しやすいです。
- Google Search Console: 検索キーワードや表示回数、クリック率（CTR）、インデックスの問題を確認できます。SEO対策の基本です。
- Hotjar／Microsoft Clarity: ヒートマップやセッション録画で、ユーザーの動きを視覚的に把握できます。UI改善に役立ちます。
- Matomo: 自社サーバーで運用したい場合や、プライバシーを重視するサイト向けです。
キーワード分析ツール
- GetKeyword／ラッコキーワード: 無料で関連語やサジェストを調べられます。キーワード候補集めに便利です。
- ahrefs／SEMrush: 有料ですが、検索ボリューム、競合分析、被リンク調査まで幅広く対応します。競合が多い領域の戦略作りに適しています。
- Ubersuggest: 低コストでキーワードと簡易競合分析を行えます。
選び方のポイント
- 目的：トラフィック把握、SEO強化、UI改善など目的を明確にします。
- 予算と規模：無料で十分か、有料で深掘りするかを判断します。
- 使いやすさと連携：既存のCMSや広告ツールとの連携性も確認してください。
導入時の注意
正しいタグ設置と目標（コンバージョン）設定を行い、必要に応じて複数ツールを組み合わせてください。ツールごとに得意分野が異なります。
実践のポイントと改善方法
目的と指標を明確にする
まずサイトの目的をはっきりさせ、主要な指標（KPI）を決めます。例：商品購入、問い合わせ、会員登録。KPIに加え、流入数や滞在時間などの補助指標も設定してください。
定期的に数値を比較する
週次・月次で数値を比較し、変化やトレンドを把握します。期間を揃えて比較し、季節変動やキャンペーン影響を見落とさないようにします。
流入経路と検索キーワードを活用する
どの経路から来ているかを確認し、各経路ごとに改善点を考えます。検索ワードでニーズを読み取り、タイトルや導入文をユーザー意図に合わせて修正することが有効です。
定量と定性を組み合わせる
アクセス解析だけでなく、ヒートマップやセッション録画、簡単なユーザーアンケートを組み合わせると原因が見えやすくなります。数値で異常を発見し、定性データで理由を確認してください。
仮説検証のサイクルを回す
観察→仮説→実装→計測→判断の流れで小さな実験を繰り返します。A/Bテストや段階的な変更で、どの施策が効果的かを確かめます。
優先順位の付け方
影響度と工数で優先順位を付けます。短時間で効果が期待できる「クイックウィン」を先に行い、長期的な改善は計画的に進めます。
変更後のモニタリングと共有
施策後は必ずモニタリングして結果を記録し、関係者に報告します。効果が見られない場合は元に戻す判断も重要です。
注意点
一度に多くを変えず、原因を特定しやすい形で検証してください。プライバシー保護と同意取得も忘れずに行ってください。
よく使われる解析指標・項目一覧
コンバージョン関連
- CV数（コンバージョン数）: 実際に成果になった回数です。例: 購入や問い合わせの数。改善策はフォーム簡素化やCTAの見直しです。
- CVR（コンバージョン率）: 訪問者に対するCVの割合。低ければ導線や訴求を見直します。
- CPA（獲得単価）: 広告費をCVで割った値。費用対効果の評価に使います。
サイト全体のアクセス状況
- ユーザー／セッション／PV: 規模感を把握できます。急落や急増は原因を確認します。
- 直帰率／平均セッション時間: コンテンツの興味度を示します。直帰が高ければ導線や導入文を改善します。
流入経路
- オーガニック、リスティング、SNS、参照（リファラル）、メール: どこから来ているかを見ます。チャネルごとに施策を変えると効果的です。
ランディングページ
- ランディング別の訪問数・CVR・離脱率を確認します。成果の良いページは類似コンテンツで強化します。
検索キーワード・SEO
- 検索での表示回数、クリック率（CTR）、平均掲載順位: 埋もれているキーワードはタイトルやスニペットを改善します。
ページ速度・技術指標
- 読み込み時間、Core Web Vitals: 表示遅延は離脱につながります。画像圧縮や遅延読み込みで改善します。
ユーザー属性・デバイス
- 地域、年齢、性別、デバイス（スマホ/PC）: セグメントごとにコンテンツや広告を最適化します。
イベント・カスタム指標
- ボタンクリック、動画再生、フォーム送信などを計測し、導線の弱点を見つけます。
これらの指標を定期的にチェックし、優先順位をつけて改善を回すことが成功の近道です。
