はじめに
概要
本記事は、Webサイト設計書のテンプレートに関する徹底ガイドです。設計書の種類や構成要素、無料で使えるテンプレートの紹介、実務で役立つ記載例や作成のポイントを分かりやすく整理しています。初心者から制作現場の担当者まで幅広く役立つ内容を目指します。
誰に向けて書いたか
・個人や小規模事業でサイトを作る方
・Web制作会社やフリーランスで設計書を整えたい方
・ディレクターや企画担当でドキュメントの作り方を学びたい方
本記事で得られること
・設計書の目的と種類が理解できます
・基本設計・詳細設計・コンテンツ設計の書き方が分かります
・実務でそのまま使えるテンプレートや記入例を見つけられます
読み方のコツ
各章はテンプレートごとに分かれています。まず目的に合う章を読み、必要に応じてテンプレートをダウンロードして書き始めてください。具体例を多めに示しているので、実務にすぐ活かせます。
Webサイト設計書とは?その目的と役割
設計書の定義
Webサイト設計書は、制作に必要な情報や仕様を文書化したものです。目的や構成、機能、運用に関する共通の「取扱説明書」として機能します。
主な目的
- 関係者の認識をそろえる(例:ページ構成や導線)
- 要件を明確にする(例:ログイン機能は必須か)
- 進行と品質を管理する(スケジュールや受け入れ基準)
どんな役割があるか
- 発注者:期待する機能や目的を確認できます。
- プロジェクトマネージャー:進行管理と調整がしやすくなります。
- デザイナー・エンジニア:実装範囲や制約を把握できます。
- ライター・QA:コンテンツやテストの基準を得られます。
作成のタイミングと更新
企画段階で要点を作り、基本設計→詳細設計で肉付けします。変更が出たら都度更新してバージョン管理します。
実例(簡単)
ECサイトなら、商品ページ・カート・決済の仕様を明確に記載します。これにより、実装ミスや認識違いを減らせます。
注意点
専門用語は最小限にし、例を交えて分かりやすく書くことが大切です。
Webサイト設計書の主な種類
基本設計書
目的と範囲を整理する文書です。システム全体の構成、主要機能、想定ユーザー、画面一覧、サイトマップ、技術要件やスケジュールを記載します。例:トップページ・会員機能・決済の扱いなど。プロジェクト開始時に作成し、関係者の共通理解を作ります。
詳細設計書/Webデザイン指示書
各ページごとの具体仕様をまとめます。レイアウト、要素の配置、動作(ボタンの挙動、フォームのバリデーション)、レスポンシブ対応、画像やフォント指定を含みます。デザイナーやフロントエンドに渡す際に重要です。
企画書・提案書
制作の目的、ターゲット、狙いたい効果(KPI)、競合や参考サイト、概算費用、スケジュール、制作体制を示します。クライアントや社内承認を得るために使います。
コンテンツ設計書(SEO設計書)
検索を意識したページ設計や記事構成をまとめます。主要キーワード、ページごとの狙い、見出し構成、meta設計、内部リンク方針、コンテンツ優先度を記載します。SEO担当やライターと共有します。
用途に合わせてこれらを組み合わせると、効率よく制作できます。
基本設計書テンプレートの構成要素と記載例
表紙
案件名、作成日、バージョン、作成者を明記します。例:「ECサイト基本設計書/2025-01-15/v1.0/株式会社A」
目次
章とページ番号を入れ、レビューしやすくします。
システム概要
目的、対象ユーザー、期待効果を簡潔に書きます。例:商品購入の流れを最適化して離脱率を下げる。
アーキテクチャ図
サービス全体の構成図を用意します。簡単な図でサーバ、DB、外部APIの関係を示します。
機能仕様
機能ごとに項目(目的、入力・出力、振る舞い)を明確にします。例:「会員登録:メール、パスワードを受け取り、確認メールを送信」
ER図
主要テーブルとリレーションを示します。重要なカラムと制約を注記します。
ビジネスロジック
業務ルールや計算式を具体例で示します。例:ポイント付与の条件と算出方法。
ユーザーインターフェース
画面一覧、画面遷移図、主要画面のモック(説明)を記載します。必須項目とバリデーションを明示します。
セキュリティ要件
認証、認可、暗号化、脆弱性対策などを列挙します。例:パスワードはハッシュ化保存。
インフラストラクチャ
サーバ構成、冗長化、バックアップ方針、運用監視を記載します。
外部インターフェース
外部APIの仕様、通信方式、エラーハンドリングを明記します。
テスト要件
単体・結合・総合テストの観点、受け入れ基準、テストデータ例を示します。
変更管理
バージョン管理、変更申請の手順、影響範囲のチェックリストを設けます。
各項目は簡潔かつ具体的に記載し、案件ごとにカスタマイズしてください。
Webデザイン指示書・詳細設計書テンプレート例と記入ガイド
概要
Webデザイン指示書と詳細設計書では、目的やターゲット、ページ構成を明確にしてチームで共有します。ここでは使いやすいテンプレート例と、記入時のポイントを具体的に示します。
必須項目(テンプレート例)
- プロジェクト名、制作目的、達成したいゴール(KPI)
- ターゲット(年齢層・ペルソナ)、公開予定日、担当者
- サイトマップ/ページ一覧、優先度、納品物・納期
ページごとの記載例
- ページ名・URL想定、目的(例:資料請求を増やす)、主要コンテンツ
- ワイヤーフレーム(画像添付)と注釈:レイアウト、要素の配置、CTA位置
- 参考デザイン:色・フォント・雰囲気の例を添付
機能仕様の書き方
- 各機能の目的、利用フロー(例:問い合わせフォームの動作)
- 入力項目・必須・バリデーション、エラーメッセージ例
- 外部連携(API・メール配信)、権限・ログイン仕様
デザイン指示のコツ
- カラーパレットとフォントは具体指定(HEX・フォント名)
- 画像・アイコンはファイル名と解像度を明記
- レスポンシブ時の挙動(スマホでの優先表示)を記載
記入時のポイント
- 目的とターゲットを最初に書き、すべての指示が合致するか確認してください
- ワイヤーや参考画像には注釈を入れて意図を伝えると制作がスムーズです
- 変更履歴欄を用意し、バージョン管理を行ってください
チェックリスト(納品前)
- 目的・KPI明記/ワイヤー添付/機能仕様の網羅/デザイン資産の添付
- ブラウザ・デバイスの対応記載/変更履歴の更新
企画書・提案書テンプレートとダウンロード先
はじめに
企画書・提案書は、関係者に企画の価値を伝えるための設計図のようなものです。ここでは、企画書に入れるべき項目と、手早く使える無料テンプレートの入手先を紹介します。
企画書に必ず含める項目
- 目的・背景:なぜこのサイトを作るのか、期待する効果を簡潔に書きます。具体例を一つ入れると伝わりやすいです。
- ターゲットユーザー:年齢、職業、課題などのペルソナ例を示します。実際の利用シーンを想像できるようにします。
- サイトのゴール・KPI:目標(例:月間UU、問い合わせ数)と測定方法を明示します。数値目標を入れると効果検証がしやすくなります。
- 参考デザイン・競合サイト:スクリーンショットやURLを並べ、良い点・改善点を簡潔にまとめます。
- ページ構成:簡単なサイトマップや主要ページの役割を書きます。
- デザインイメージ:カラーやトーン、使いたい写真イメージを提示します。ワイヤーやモックの有無も記載します。
- スケジュール・予算:主要マイルストーンと概算費用を示します。リスクと対応策も忘れずに。
- 成果物・保守体制:納品物とその後の運用方法、保守費用の案内を入れます。
無料テンプレートの入手先(使い方のポイント付き)
- SlideShare:公開プレゼンが多数あります。プレゼン形式で提案を見せたいときに便利です。
- alle:Web向けテンプレートがあり、実務に近い構成を取れます。ダウンロード前に内容を確認してください。
- bizocean:ビジネス文書テンプレが豊富です。目的に合わせて簡単に編集できます。
- Canva:デザイン性の高いスライドをブラウザで作成・編集できます。チーム共有も簡単です。
- Google スライド:オンラインで共同編集でき、納品用にPDF化しやすいです。
テンプレート活用のコツ
- まず目的とKPIを明確にしてからテンプレを当てはめること。
- スクリーンショットや図を多めにして視覚的に伝えること。
- ライセンスとカスタマイズの可否を確認してから使用してください。
コンテンツ設計書(SEO設計書)テンプレート
概要
SEOや記事制作で成果を出すには、検索意図を起点にした設計書が便利です。ここでは実務で使える項目をわかりやすく整理します。
テンプレート項目(記載例付き)
- キーワード選定
- メインKW/関連KW/検索ボリューム(例:ダイエット/糖質制限/5千)
- 読者ターゲット(ペルソナ)
- 年齢、性別、悩み、利用シーン(例:30代女性、短期間で体重を落としたい)
- 検索意図・記事のゴール
- 情報収集型/比較型/購入促進型、想定するCTA(例:無料レシピDL)
- 競合・上位サイト分析
- 上位3〜5件の見出し構成、強み・弱み、カバーすべき差分
- 記事構成案
- タイトル(案)、H1、H2見出しリスト、各見出しの要点、推奨文字数
- 必須要素・チェックリスト
- 要点の早期提示、具体例、根拠(出典)、図表や画像、内部リンク、meta記述、alt
運用ポイント
社内共有用や外注指示書として使えます。見本記事やトーン、納期・レビュー項目を添えて渡すと品質が安定します。
設計書作成の注意点とNG例
設計書は関係者の共通理解を作るためのツールです。目的やターゲットが曖昧だと要件漏れや認識違いが起きやすくなります。ここでは注意点と具体的なNG例、改善策を分かりやすく説明します。
注意点
- 目的とKPIを明確にする:例)「問い合わせ数を月20%増やす」。定量目標があると判断が早くなります。
- 読み手を想定する:開発者、デザイナー、クライアントそれぞれに必要な情報を分けて記載します。
- 範囲を限定する:最初から全てを盛らず、フェーズごとに優先度を付けます。
- 情報を整理する:要件は箇条書きや表でまとめ、長文説明は別ファイルにします。
- 更新ルールを決める:バージョン、更新者、更新日を明記して古い情報を減らします。
NG例と改善策
- NG:目的が「サイトを良くする」だけ
改善:具体的な指標(CV数、滞在時間)を設定し、関係者で合意を取ります。 - NG:すべての詳細を1ファイルに詰め込む
改善:概要ページ+詳細ページに分け、担当者別に参照しやすくします。 - NG:更新が滞り実装と差異が出る
改善:更新フローとレビュー担当を決め、重要変更は承認必須にします。
テンプレートカスタマイズのポイント
- 案件の特性(EC、コーポレート、サービス)に合わせて項目を取捨選択します。
- 技術制約や運用ルール、参照するデザインガイドを明記します。
- 担当と期限、優先度を入れて実務で使いやすくします。
作成時のチェックリスト
- 目的・KPIは明確か
- ターゲットは定義済みか
- 主要機能と優先度は書かれているか
- 画面一覧やワイヤーを用意しているか
- 技術制約・運用ルールを明記しているか
- 更新ルールと責任者を決めているか
これらを意識すると、設計書が実務で活きるドキュメントになります。
まとめ:用途に合ったテンプレートを活用しよう
Webサイト設計書のテンプレートは、案件の規模や目的、制作フローに合わせて使い分けることが大切です。ここでは実務で使いやすいポイントを分かりやすくまとめます。
用途に応じたテンプレートの選び方
- 小規模(ランディングページなど):ページ構成、CTA、最低限のデザイン指示があれば十分です。例:ワイヤー+コンテンツ指示のみ。
- 中〜大規模(コーポレート、EC):機能一覧、画面遷移、詳細設計、テスト項目まで必要です。例:ユーザー権限や注文フローを明記。
無料テンプレートの活用とカスタマイズ
無料テンプレートは出発点として有効です。自社の役割分担や開発環境に合わせて、必須項目(目的、対象、納期、担当)を必ず追加してください。文言は具体例を入れて分かりやすくします。
運用・共有で品質を保つ
バージョン管理、レビューのタイミング、承認フローを決めておくと齟齬を減らせます。チェックリスト(必須機能、SEO、アクセシビリティ)を用意して、引き継ぎ時に使いましょう。
テンプレートは万能ではありません。プロジェクトに合わせて調整し、チームで共有・改善していくことで、品質向上と工数削減につながります。まずは小さく始めて、使いながら整えてください。