はじめに
本ドキュメントの目的
本書は、Google Looker Studio(旧Googleデータポータル)でGA4の直帰率を表示・分析する方法をわかりやすく解説します。GA4で直帰率の定義が変わった点や、直帰率と離脱率の違い、Looker Studioでの計測値作成やレポート設計まで、実務で役立つ手順を中心に説明します。
誰に向けた内容か
・自分でWeb解析のレポートを作りたい方
・GA4に移行して指標の意味がわからなくなった方
・Looker Studioで直帰率を可視化したいマーケターや運用担当者
本章で学べること
本章は全体の案内です。以降の章で、定義の違い、直帰率と離脱率の比較、Looker Studioでのカスタム項目の作り方、具体的なレポート作成例と活用ポイントを順に解説します。実際の画面操作に沿って進めるので、手を動かしながら学べます。
前提条件(準備)
・GA4プロパティにアクセスできること
・Looker Studioでレポート作成の権限があること
テスト用の小さなビューやデータを用意すると、安心して試せます。
GA4における直帰率の定義と従来との違い
概要
GA4では直帰率を「エンゲージメントされていないセッションの割合」と定義します。従来のUAの「1ページだけ見て離脱したセッション」とは考え方が変わりました。
従来(UA)の直帰率
UAでは、セッション内でページビューが1回だけで終了した場合に直帰としました。滞在時間が計測できないケースでも直帰にカウントされます。単純で分かりやすい反面、短い滞在でも実際に読まれた可能性がある点は見落としやすいです。
GA4の直帰判定(具体的基準)
GA4では次のいずれかを満たすセッションは「エンゲージメントあり」と見なされ、直帰に入りません。
– 10秒以上の滞在があった
– コンバージョンが発生した
– 2ページ以上を閲覧した
つまり、本当に何もアクションがなかった場合だけ直帰とカウントします。
計算方法
GA4の直帰率は「100% - エンゲージメント率」で算出します。エンゲージメント率はエンゲージメントのあるセッション数÷全セッション数です。
実務上のポイント
GA4の直帰率は一般に低くなります。直帰率だけで比較すると誤解を招くため、エンゲージメント率や平均エンゲージメント時間、イベント数も一緒に確認してください。設定によって閾値を変えれば計測結果も変わるため、サイトの目的に合わせて指標を見直すと良いです。
直帰率と離脱率の違い
定義の違い
-
直帰率(バウンス率):セッション単位で見ます。訪問者が最初に開いたページだけを見て、何のアクションも起こさずにサイトを離れたセッションの割合です。計算は「直帰率 = 100 – エンゲージメント率」。エンゲージメント率は「エンゲージメントのあったセッション数 ÷ 全セッション数」です。
-
離脱率(エグジット率):ページ単位で見ます。あるページが表示された回数のうち、そのページでサイトを離れた回数の割合です。計算は「離脱率 = (そのページでの離脱数 ÷ そのページの表示回数)× 100」です。
具体例での違い
- 直帰の例:ユーザーがブログ記事Aに検索から来て、何も操作せずに離脱した場合。このセッションは直帰になります。
- 離脱の例:ユーザーがトップページ→商品ページ→購入ページと回遊し、購入ページでサイトを離れた場合。購入ページの離脱になりますが、このセッションは直帰ではありません。
分析で気をつける点
- 指標の単位が違うため、用途も変わります。ページ改善をしたいときは離脱率を見ます。サイト全体やランディングの改善は直帰率が参考になります。
- 直帰率が高くても必ず悪いとは限りません。たとえば、問い合わせ番号を確認してすぐに電話したケースは成果につながる場合があります。
- 複数ページでの離脱傾向を見ると導線の問題が見つかります。ページごとの離脱率を比較して原因を探しましょう。
Looker StudioでGA4の直帰率を表示する手順
概要
GA4のデータソースに直帰率がない場合、Looker Studioでカスタムフィールドを作成して表示します。ここでは初心者でも迷わないように、具体的な手順と注意点を示します。
手順(画面操作)
- Looker Studioで対象のレポートを開き、右側のデータパネルで使用中のデータソース名をクリックします。
- 「フィールドを追加」ボタンを押します。
- フィールド名に「直帰率」と入力します。
- 計算式に「1 – エンゲージメント率」と入力します。エンゲージメント率の名前はデータソースによって”engagementRate”など異なることがあるため、候補から選んでください。
- タイプは「数値(割合)」または表示形式で「%」を選びます。エンゲージメント率が0〜1の値で提供される場合はそのままで、100倍で表示したい場合は”(1 – engagementRate) * 100″とします。
- 保存して、グラフや表の指標に追加します。
表示のコツ
- 指標の単位(0〜1か0〜100か)を必ず確認してください。
- 日付レンジやフィルタを設定して、ページ別・流入別など比較すると有益です。
- 名前は「直帰率(GA4)」などで明確にしておくと混乱が減ります。
トラブル対処
- 数値が想定より大きい/小さい場合は、表示倍率(×100)や参照フィールド名を確認します。
- エンゲージメント率が存在しないデータソースは、GA4のメトリクスが正しく接続されているか確認してください。
直帰率のレポート作成と活用ポイント
レポート作成の基本
Looker Studioで作成する際は「ランディングページ(ページURL)」を主軸にし、指標として直帰率(GA4の定義に基づく)とエンゲージメント率、流入数を並べます。直帰率は単独で見るより、訪問数と合わせて判断してください。
分析の切り口(ページ・流入元・セグメント)
- ページごと:上位トラフィックかつ直帰率が高いページを優先します。
- 流入チャネルごと:オーガニック、広告、SNSなど別に比較します。
- セグメント:新規/リピーター、モバイル/PC、地域別で絞ると原因把握が早まります。
高い直帰率の原因と改善案
よくある原因は「コンテンツのミスマッチ」「CTAや導線の不在」「ページ表示速度の遅さ」「モバイルでの見づらさ」です。改善案は見出し・冒頭文を分かりやすくする、明確な行動を促すボタンを設置する、画像最適化やコードの軽量化で速度を上げることです。
優先順位付けとKPIへの落とし込み
影響が大きいのは「高トラフィック×高直帰率」の組み合わせです。優先度をA/B/Cに分け、Aは即改善しABテストで効果測定、Bは改善案を実装して観察、Cは低優先度として保持します。KPIは直帰率の減少だけでなくエンゲージメント率やコンバージョンも併せて設定しましょう。
運用上の注意点
サンプル数が少ない場合の変動に注意してください。短期の変化はノイズの可能性があります。改善後は複数指標で効果を確認し、定期的にレポートを見直して仮説→検証を繰り返してください。
実務的なヒント
日次で急変があればアラートを設定し、重要ページはA/Bテストで仮説検証を行いましょう。GA4の定義を踏まえ、「本当に何もしなかったユーザー」に着目すると、改善の的が絞りやすくなります。
まとめ:GA4とLooker Studioでの直帰率の押さえどころ
要点
GA4の直帰率は「エンゲージメントされなかったセッションの割合」です。従来の“1ページだけ見て離脱”とは定義が異なり、より厳密にユーザーの関与を評価します。
計算式(シンプル)
直帰率 =(セッション数 − エンゲージメントセッション数) ÷ セッション数 × 100
エンゲージメントセッションは「滞在時間10秒以上」「コンバージョンを発生」「2回以上の画面/ページ表示」のいずれかを満たします。
Looker Studioでの扱い方(実務メモ)
- カスタムフィールド例:Bounce Rate = (Sessions – Engaged sessions) / Sessions
- または1 – Engagement Rateで算出可能です。
- 指標はランディングページ、チャネル、デバイス別などでブレイクダウンして可視化してください。
解釈のポイント
- 高い直帰率が必ず悪いとは限りません。例えば問い合わせ先や連絡先を探して来たユーザーは1ページで満足することがあります。
- ページの目的(情報提供・購買・導線)ごとに目標値を決めると判断しやすくなります。
活用のコツ
- セグメント(新規vs既存、参照元)で比較する
- ランディングページ単位で改善優先度をつける
- 速度改善、導線の明確化、CTA強化で直帰を下げる施策を試す
- 直帰率だけでなくエンゲージメント率・離脱率・コンバージョンも併せて見る
GA4の直帰率を正しく理解し、Looker Studioでわかりやすく可視化すれば、改善施策の精度が高まります。まずは定義を確認し、目的別の目標を決めるところから始めましょう。