はじめに
この記事を手に取ってくださってありがとうございます。クラウドでのストレージ、特にAWSにおける「ボリューム」について知りたい方向けに、わかりやすく丁寧に解説します。
この記事の目的
AWSのストレージ概念の一つである「ボリューム(主にEBS)」の定義、用途、特徴、設定方法、運用上の注意点を整理します。EC2やECS、さらにDocker環境での利用例も取り上げ、実務で役立つポイントを伝えます。
対象読者
- クラウド初心者でストレージの基礎を学びたい方
- EC2やコンテナ環境で永続ストレージを扱う必要がある方
- コストやバックアップ運用を見直したいエンジニア
本記事で得られること
- ボリュームの基本イメージがつかめます
- 具体的な設定や使いどころがわかります
- 運用で気をつけるポイントやコスト管理の考え方が分かります
続く章では、まず「ボリュームとは何か」から順を追って解説します。実例を交えながら丁寧に説明しますので、安心して読み進めてください。
AWSの「ボリューム」とは何か
概要
AWSでいう「ボリューム」は、クラウド上の仮想ハードディスクのようなものです。特にAmazon EBS(Elastic Block Store)が代表例で、EC2インスタンスに接続してディスク領域として使います。OSからは通常の物理ディスクと同じように見えます。
具体例で理解する
例えば、Windows ServerのEC2に30GBのEBSをアタッチすると、Windows上では30GBの追加ドライブが見えます。アプリやデータベースはこのドライブに書き込みます。ローカルの物理ディスクをクラウドに置き換えたイメージです。
永続性と独立性
ボリュームはインスタンスから分離して管理できます。インスタンスを停止してもデータが残るタイプと、インスタンス終了で削除されるタイプがあります。必要に応じて別のインスタンスにアタッチしてデータを移せます。
使いどころ
データベースやログ保存、アプリの永続ストレージとしてよく使います。高速な読み書きが必要な用途に向きます。
注意点(簡潔に)
容量や性能の選び方、スナップショットによるバックアップ、暗号化設定などを事前に検討してください。サイズ変更や性能調整は後から可能ですが、計画的に設定すると運用が楽になります。
Amazon EBSボリュームの用途と特徴
用途
Amazon EBS(Elastic Block Store)は、EC2に接続して使う外付けのディスクのようなストレージです。OSやアプリケーションのディスクとして使えますし、データベースの永続ストレージ、ログ保存、ファイル共有のバックエンドなどにも向きます。たとえば、Webサーバーのルートボリュームや、MySQLなどのデータディレクトリに使うイメージです。
主な特徴
- ブロックストレージ型:ファイル単位ではなくブロック単位で読み書きします。これによりデータベースなど細かいI/Oを必要とする用途で高い性能を発揮します。
- 永続性:EC2を停止してもボリュームは残り、再接続してデータにアクセスできます。
- 種類と性能の選択:性能重視、汎用、スループット重視、コスト優先など複数のタイプを選べます。用途に応じて最適化できます。
- 複数アタッチ:1台のEC2に複数のEBSを接続して、用途ごとに分けて管理できます(例:OS用、データ用、ログ用)。
- スナップショット:任意の時点でスナップショットを作成し、バックアップやボリューム複製に使えます。スナップショットは差分保存で効率的です。
- 暗号化とアクセス制御:保存データを暗号化したり、IAMでアクセスを制限できます。
利用シーンの具体例
- 小規模Webアプリ:汎用タイプのEBSをOSとアプリに割り当てて運用します。
- データベース:I/O性能を重視したタイプを選び、専用ボリュームにデータを置きます。
- バックアップ:定期スナップショットで復旧ポイントを残します。
注意点
EBSは同一の可用ゾーン(AZ)内でEC2に接続します。別のゾーンへ移動するにはスナップショットから新しいボリュームを作成する必要があります。また、性能はボリュームタイプとサイズ、I/O設定に依存しますので使用状況に合わせて調整してください。
EBSボリュームの設定方法
コンソールでの手順
EC2インスタンス起動時に「Add storage(ストレージの追加)」でボリュームを指定します。サイズ、ボリュームタイプ(gp3、io2など)、暗号化の有無を選びます。起動後はEC2ダッシュボードの「ボリューム」から追加やスナップショットが可能です。
AWS CLIでの基本操作(例)
- ボリューム作成: aws ec2 create-volume –size 20 –availability-zone ap-northeast-1a –volume-type gp3
- アタッチ: aws ec2 attach-volume –volume-id vol-xxxx –instance-id i-xxxx –device /dev/sdf
- サイズ変更: aws ec2 modify-volume –volume-id vol-xxxx –size 30
インスタンス側ではフォーマットとマウントを行います(例: sudo mkfs -t ext4 /dev/xvdf → sudo mount /dev/xvdf /mnt/ebs)。
APIでの自動化
SDKやCloudFormationでcreateVolume/attachVolumeを呼び出して自動化できます。CloudFormationならテンプレートでボリュームとアタッチを宣言できます。
ECSでのボリューム指定例(EC2ランチタイプ)
ECSタスク定義ではホスト上のパスを指定してコンテナへマウントします。EBSは先にEC2にアタッチしておき、ホストのパスをマウントポイントに使います。簡単なJSON例:
{
“containerDefinitions”: [
{ “name”: “app”, “image”: “myimage”, “mountPoints”: [{“sourceVolume”: “ebs-data”, “containerPath”: “/data”}] }
],
“volumes”: [ {“name”: “ebs-data”, “host”: {“sourcePath”: “/mnt/ebs”}} ]
}
注意: FargateではEBSを直接アタッチできません。自動的にアタッチする場合は起動時のUser Dataや自動化スクリプトでデバイスをアタッチ・マウントする運用が必要です。
運用時のチェックポイント
- AZ(アベイラビリティゾーン)がインスタンスと一致しているか確認してください。
- スナップショットでバックアップを定期化してください。
- サイズやパフォーマンス要件に合わせてボリュームタイプを選んでください。
Docker・ECS環境におけるボリューム
概要
ECSではタスク定義でボリュームを指定し、コンテナ間のデータ共有や永続化を実現します。代表的な種類は「ホスト(インスタンスのファイル系)」「Dockerボリューム」「ネットワークストレージ(例: EFS)」です。用途に合わせて選びます。
設定の基本(volumes と mountPoints)
タスク定義のvolumesにボリューム名と設定を記述し、各コンテナのmountPointsでマウント先パスを指定します。たとえば、同一タスク内のWebとWorkerが/var/dataを共有するなら、volumesにdataを定義し、両コンテナでmountPointsに/path:/var/dataを指定します。
ホストボリュームと永続性
ホストボリュームはコンテナを実行するEC2インスタンスのディスクを使います。インスタンスを維持すればデータは残りますが、インスタンスが入れ替わるとデータは失われることがあります。EBSをインスタンスに接続していれば永続化できますが、同時アクセスには制約があります。
FargateとEFSの活用
Fargateではホストボリュームへのアクセスが制限されます。持続的かつ複数コンテナで共有するならEFSを使う方が簡単です。EFSはネットワーク経由で複数タスクから同時にアクセスできます。
ドライバーと細かい制御
dockerVolumeConfigurationやドライバーオプションで権限やドライバを指定できます。ログやキャッシュはコンテナローカルに置き、重要データはEFSや外部DBで管理する運用が現実的です。
AWSボリュームの運用上の注意点
物理ボリュームと論理ドライブの違い
EBSボリュームはクラウド上のブロックデバイスで、Windowsのドライブ文字(C:やD:)と自動で対応しません。ボリュームをEC2にアタッチしたら、OS側でパーティションやフォーマット、ドライブ文字の割り当てを行います。例として、新しいボリュームを追加したらディスクの初期化とボリューム作成を忘れないでください。
コスト管理(容量と不要ボリューム)
料金は容量と種類で変わります。必要最小限のサイズを選び、使わなくなったボリュームはすぐに削除してください。スナップショットも保存すると課金されます。定期的に不要なスナップショットを削除するか、ライフサイクルポリシーで自動化すると効果的です。
バックアップと冗長化
スナップショットでバックアップを取り、別リージョンへコピーすると障害時の復旧が早くなります。冗長性が必要な場合は、データを複数のインスタンスに分散するか、アプリケーション側でレプリケーションを設定してください。
運用上のその他ポイント
性能要件(IOPS)を確認し、適切なボリュームタイプを選んでください。暗号化が必要なら作成時に有効化し、スナップショットやバックアップの運用ルールを文書化しておくと安全です。定期的な監視と見直しでコストと可用性を両立できます。
検索ボリュームとの違い
概要
同じ「ボリューム」という言葉でも、意味はまったく異なります。AWSのボリュームはストレージ(ディスク)を指し、検索ボリュームはキーワードの検索回数を指します。混同すると誤解が生じます。
具体例で説明
- AWSのボリューム:EC2に接続するEBSボリュームはデータ保存用のディスクです。例えばデータベースのデータを入れる領域を指します。
- 検索ボリューム:あるキーワードが月にどれだけ検索されるかを示します。例えば「レシピ+トマト」が月に1万回検索される、という指標です。
なぜ混同するか
用語が同じため、文脈が不足すると誤解しやすくなります。特にチーム内で役割が分かれている場合、用語の前に前置詞を付けないと混乱します。
実務での注意点
- 呼称をはっきりさせる:「EBSボリューム」「検索ボリューム(検索回数)」など。
- ドキュメントやチケットで前後の文脈を書く。
- 会話で不明なときは質問して確認する。
どちらも重要ですが、用途も測る物も異なるため、まず用語の前に何を指すかを明示すると安心です。